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とある3年4組の卑怯者

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151 金賞者

 
前書き
 アマチュア小学生スケート全国大会、男子の部から行われ、吉岡や佐野、住吉が滑る。現在では住吉が得点トップとなり、佐野は三位の状態となっていた!! 

 
 観客席では山田が退屈そうにしていた。
「ふあああ、たいくつだじょ~」
「我慢しろ。藤木の番は後ろなんだからよ」
 はまじが忠告した。しかし、山田はしばらくして寝てしまった。小杉も同様に寝てしまい、いびきをかいていた。
「しょうがないね、小杉君・・・」
 たかしが苦笑していた。
「ホント、しょうがないわねっ!」
 城ヶ崎は小杉に呆れていた。
 一方でまる子とたまえ、リリィは藤木の番が待ち遠しく感じていた。
「藤木の番、まだかな~」
「うん、楽しみだね」
 まる子は祈っているように動かないリリィに声を掛けた。
「リリィ、随分固くなってるねえ~」
「え?あ、うん、藤木君が心配で・・・」
「大丈夫だよ。アイツのスケートは誰にも負けないって」
「うん、そうよね・・・」

 観客席の別の場所では片山が藤木や瓜原の番を待ちながら鑑賞していた。
(ふむ、どの者もなかなかいい構成をしているが、藤木や瓜原の構成はもっといいものだろう。リハーサルの時よりもより良い結果を出し、そしてその二人は必ず世界大会へと行ける・・・。失敗さえなければ・・・)

 藤木は大串に声を掛けられた。
「よお~、そこのお前~」
「なんだ、大串君か・・・」
「お前は頑張って高い得点を出せるのかな~?でないと好きな人に嫌われちゃうかもよ~」
「君はうるさいな、そんな事ばっかり!!」
「顔が赤いよ~」
 その時、瓜原が話に割り込んだ。
「しかたあらへんよ藤木君、こいつは他人の心をかき乱さんとダメなくらい自分のスケート技術に自信がないんや」
「ああ、そうだったね。君は卑怯者だね」
 藤木は大串に自分の汚名を浴びせた。
「あ!?何だと!?」
「ちゃうなら、人の事より自分の事の心配せえや」
「そうだよ。自分の演技に自信がないのかい?」
「うるさい!見てろよ!!」
 大串はその場を去った。一旦休憩に入り、休憩が終わった後、大串の名が誘導係から呼ばれた。
『高知県宇佐小学校・大串啓太君・四国大会金賞』
 大串が滑り出す。まずはダブルトウループとダブルサルコウ。そして今度はトリプルアクセルを決めた。藤木は大串のトリプルアクセルの出来に唖然とするしかできなかった。そして大串はリハーサルで見せた足換えとキャメルスピンのコンボをあの時以上に美しく決めた。
「人に口出す割にはやるな、あいつ」
「うん、リハーサルの時以上に凄いよ・・・」
 そして大串はフライングシットスピン、そしてステップシークエンスを成功させた。そしてシングルループ、シングルサルコウ・・・。
(くそ、できなかった!!)
 大串は悔しがった。このループとサルコウは本当はトリプルで跳ぶつもりだった。これでは評価が下がってしまうだろう。大串は今度はトリプルルッツをすぐに跳ぶ予定だったが、少し間を置いて滑ってから跳んだ。そしてサーキュラーステップしてトリプルフリップを行った。そしてレイバックスピンで締めた。大串は悔しげな表情を見せた。
「悔しい顔しとるわな。何か失敗したんかな」
「うん、そうみたいだね」
「なら藤木君にちょっかい出した天罰やな」
 大串の得点が表示される。111.02。銀賞者である住吉や佐野の点数さえも下回った。大串は悔しさで泣いた。
(ふん、僕にちょっかい出さなきゃ失敗せず、もっと高い点数取れた筈だったろうに・・・)
 藤木は大串を軽蔑した。
 そして、九州大会、中国大会、関東大会、北海道大会の金賞者が現れた。しかし、それらの者の中に住吉の得点を超える者は現れなかった。そして瓜原の番が来た。
「瓜原かける君、リンクへお願いします」
「よし、わいの番やな」
 瓜原はリンクへ向かった。
『大阪府天王寺小学校・瓜原かける君・近畿大会金賞』
 瓜原の演技が始まった。いきなり見せたのはなんと四回転サルコウ。かなり高く跳んだ。そしてダブルサルコウにトリプルアクセル。どれもきれいに決まっている。
(瓜原君・・・。あのジャンプ、僕は流石に君にあっぱれだよ・・・)
 そして足換え̪シットピンを見せた。これはレベル4確定だろう。そしてステップシークエンスをして、トリプルトウループを決めた。そして二回目のトリプルアクセルを決める。しかし、着地失敗してしまった。
(まさか・・・)
 藤木は瓜原の実際の演技を見るのは初めてだが彼がジャンプを失敗するなんて信じられなかった。瓜原はすぐに起き上がり、フライングキャメルスピンを披露。そしてトリプルルッツとトリプルフリップを綺麗に決めた。そして大会一誰よりも高く跳んだ。そして締めの足換えコンビネーションスピン。決まった。アクセルの失敗を差し引いても瓜原の評価は高いだろう。藤木も、観客席から見ている片山も、そう感じていた。
(ふむ、瓜原の演技は素晴らしい。これまでの誰よりも・・・)
 片山は絶対に瓜原の得点を更新するだろうと確信していた。瓜原が引き上げた後、得点が発表された。藤木も、他の出場者も、女子用の控室のモニターから見ていた美葡や黄花ら女子達も、片山も、観客たちも驚いた。151.54。瓜原の得点はこれまでの最高得点をも大幅に更新した。住吉は悔しがっていた。
「なんであいつのはこう評価されすぎるんや!!おかしいやろ!!」
(瓜原君・・・。凄いよ・・・。でも僕は君よりも超えてみせるよ!!)
 藤木は誘導係から名前を呼ばれると、リンクへと連れていかれるのだった。 
 

 
後書き
次回:「表現(いままでのきもち)
 みどりは堀と共に笹山の見舞いに行く途中、堀に笹山とはどんな人物か尋ねる。一方、大会は藤木の番が来た。藤木はリハーサルで行った時と同じようにこれまでの気持ちをスケートの演技で表現しようとする。そしてその得点は・・・。

 一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!! 
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