夢幻水滸伝
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第五十二話 東国からの使者その六
「私が松尾日毬、幸田吉三郎殿に仕える東国の星の一人だ」
「そやね」
「そして今回は東国からの使者として来た」
日毬は自らこのことを話した。
「我等の棟梁の意志を伝えにな」
「それでやね」
「単刀直入に言おう、我々は日本の統一を考えている」
「統一をってことは」
「我等は貴殿等に我が棟梁の傘下に入ることを要求する」
日毬は綾乃に毅然として告げた、まだサングラスをしているがその目は綾乃を見据えて放してはいない。
「それが嫌ならばだ」
「戦やね」
「その時は思う存分戦おう」
こう言うのだった、関西の星の者達は日毬の言葉を聞いても誰も激昂したり表情を変えたりはしなかった。それは東国がこう言っていることを予想していたしまた日毬の毅然とした態度ともの言いに見事と思っていたからだ。
「我々はな」
「そういうことやね」
「いいだろうか」
「うち等も統一を目指してるねん」
綾乃は対象的だった、毅然とした日毬とは。穏やかな微笑みをたたえている。がだ背筋は立っており座ったままの腰は引けていない。
「それやったらな」
「戦か」
「そうなるね」
綾乃の今の返事は一言だった。
「結果的に」
「そうだな、ではだ」
「江戸城で会うことになる?今度は」
「戦の場でだ」
そこでとだ、日毬は綾乃に返した。
「我々は再会することになる」
「そこでやね」
「雌雄を決しよう、ではだ」
「お話はこれで終わりで」
「私は帰ることになるが」
それがと言う日毬だった。
「見送りは不要だ、大路から都を出てだ」
「そしてなん」
「術で東国まで帰る」
そうするというのだ。
「だからだ」
「見送りは不要なん」
「そうだ、出迎えには感謝する」
今は自分達の席に入っている太宰と室生を見つつ述べた。
「しかし見送りはだ」
「ええの?うちが出るけど」
「とんでもないことを言う、棟梁自ら見送りなど」
「ええねんで、そんなん」
「気にせずともか」
「うちがそうしたいだけやから」
それ故にというのだ。
「別にええで」
「私は剣客だ、それこそだ」
「その気になったらやね」
「何時でも刃を抜ける」
鋭い声での言葉だった。
「それでもか」
「日毬ちゃんそういうことせんやろ」
あっさりとだ、綾乃は日毬に返した。
「絶対に」
「不意に切ることをか」
「暗殺とかな」
綾乃は具体的に言った、顔は今も穏やかな笑みだが日毬の凄まじいまでに強く鋭く大きい気配には気圧されていないのは今も同じだ。
「そういうことせんやろ、幸田君も」
「その様なことをせずともだ」
日毬は綾乃に毅然として答えた。
「戦場で倒せばいいだけのこと、ましてやだ」
「この世界で命奪ってもな」
「それは一時だけのこと」
所詮はとだ、日毬も言う。
「復活の術なり使うと何度でも蘇られる」
「それでは暗殺してもな」
「捕らえ人質に取り要求を突きつけることは出来る」
これはというのだ。
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