夢幻水滸伝
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第五十二話 東国からの使者その五
「閉じている場合もあるしだ」
「貴女の様にですね」
「サングラスをしている場合もある」
「左様ですね」
「だからだ、このことは気にしないでくれ」
太宰達にあらためて話した、己の目のことを。
「そしてそのことを承知してくれているのは嬉しい」
「左様ですか」
「うむ、ではな」
「今からです」
「姫巫女殿にだな」
「お会いして頂きます」
「その前にだが」
室生が日毬に話した。
「供の者達はそのままでいい」
「私と供に姫巫女殿の前に出てもか」
「構わないが」
それでもと言うのだった。
「刀は置いてもらう」
「刀を置く部屋においてだな」
「貴殿の神具である刀もだ」
そちらもというのだ。
「置いてもらう」
「わかった、刀を持って会うことはな」
「それは出来ない」
安全の為であるのは言うまでもない。
「承知してもらう」
「それはわかっている、では三振りの刀をな」
神具であるそれをとだ、日毬は答えて述べた。
「置いておく」
「三振り、和泉守とだな」
「浪泳ぎ兼光、倶利伽羅丸だ」
日毬は二振りの名前は自分から話した。
「その三振りだ」
「貴殿の神具は全て刀だな」
「そうだ、他の種類の神具は持っていない」
日毬は室生に強い声で答えた。
「私はな」
「まさに生粋の剣士か」
「剣客と呼んでくれてもいい」
この職業の呼び名でもというのだ。
「それでもな」
「そうか」
「剣士なら西洋風だな」
「確かにな、その呼び名では日本的ではない」
その通りだとだ、室生も頷いた。
「何処かな」
「だが剣客だと違うな」
「日本の趣がある」
「やはり私は日本人だからな」
それ故にとだ、日毬は言うのだった。
「剣客と呼ばれる方がいい」
「それでか」
「剣客と呼んでくれていい、むしろだ」
「剣客と呼ばれる方がいいな」
「その方がな」
「そうか、では生粋の剣客だな」
室生は日毬にあらためて話した。
「貴殿は」
「そうなるな、そしてだ」
「その生粋の剣客の貴殿が来た」
「東国の使者としてな、ではこれからだ」
「姫巫女殿にお会いするか」
「そうさせてもらう」
使者としてというのだ、こう話してだった。
日毬は二人に案内され綾乃の前に来た、綾乃は棟梁の座に正座をして座っていて彼女の前には関西の星達が左右に分かれて座っていて綾乃のすぐ傍、左右のそれぞれの首座に中里と芥川がいる。
太宰と室生は日毬と彼女の供の者達を連れて綾乃の前に進み彼等と共に座って一礼をしてから綾乃に述べた。
「東国からの使者松尾日毬殿とお供の方々をお連れしました」
「おおきにな」
綾乃は挨拶を述べた太宰に笑顔で応えた、そのうえで自分に礼儀正しい態度で一礼した綾乃に自分から声をかけた。
「松尾日毬ちゃんやね」
「そうだ」
その通りだとだ、日毬は答えた。
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