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野槌

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第三章

「この辺りの公園に入って」
「そしてその公園の中で、ですね」
「調査を開始しましょう」
「それでは」
「はい、それでは」
 こう話してだ。三人で駅の近くにある公園に入った。そうしてその公園の中に入った時は夕方であったが。
 すぐに木々の下にある草原でガサガサという音がした、それでだった。
 友香はすぐにだ、涼子と小百合に言った。
「音がしましたね」
「はい、まさかと思いますが」
「あの音の主が」
 二人も友香に真剣な顔で応えた。
「若しツチノコなら」
「都市部にツチノコがいた」
「本当にそうだとしたら」
「大発見だから」
「すぐに草原の方に行きましょう」
 友香は二人にこうも提案した。
「そうしましょう」
「いえ、友香ちゃんちょっと待って」
 小百合は友香に親しい感じで言ってきた。
「迂闊に近付いたら」
「危ないっていうのね」
 友香も小百合に親しい感じで応えた。
「だからなのね」
「ええ、ツチノコは毒があるとも言われているから」
 このことは実際にだ、無毒であるという説もあってこの辺りは実ははっきりしないものがあったりする。
「だからね」
「あまりなのね」
「迂闊に茂みの方に入らないで」
「それじゃあ」 
「先程の音は結構大きかったので」
 涼子はその音から推察して言った。
「猫よりも大きい、中型の犬位ですね」
「確かに。それ位の音でしたね」
「そうでしたね」
 二人は涼子のその言葉にその通りだと頷いた。
「それでは余計にですね」
「近寄らない方がいいですね」
「そう思います、ここは茂みの外から慎重にです」
 まだ夕方といっても夕方になったばかりなので視界もはっきりしている、涼子は二人にこのことからも話した。
「調べていきましょう」
「わかりました」
「それではそうしましょう」
 友香も小百合も頷いてだった、それぞれスマホを出してそれで音の主を動画で撮影することにした、それで三人は散開して茂みの外から調べたが。
 三人はそこでだ、何とだった。
 それぞれ動画に自分達が見たものを撮影した、その撮影したものをだ。
 集まって見せ合ったがどれも同じだった、それで三人で言い合った。
「青黒い鱗の身体で目鼻がなくて口だけの顔」
「そして蛇の様な身体」
「これはツチノコではないですね」
 また別の存在だとわかった、その何かは茂みの中にいたがやがて木の上に登っていきそこから公園の外に跳んで別の場所に行った。そこからは三人は見失ったが。
 動画に撮影された異形の姿にだ、三人は首を傾げさせた。確かに何かがいたがそれは明らかにツチノコではなかったのだから。
 それで三人は暫く連絡を取り合い動画に映ったものは何かと調べ合ったが。
 友香がだ、何度目かの会合の時に二人に言った。場所は三人がそれぞれ会いやすい梅田のある喫茶店の中だ。
「あれは野槌みたいです」
「野槌!?」
「はい、山にいる妖怪とのことです」 
 友香はこう二人に話した。
「本来は。姿はああしたもので」
「山にいる妖怪が大阪の街中にいるなんて」
 涼子は信じられないといった顔で述べた。
「あの」
「はい、有り得ないですよね」
「それが何故」
「そのことは私にもわかりませんが」
「それでもですか」
「はいあの姿はです」
「野槌という妖怪のもので」 
 涼子は友香に信じられないといった顔のまま述べた。 
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