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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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堕天使と悪魔

 
前書き
久しぶりに時間を取れたので短い間隔での更新。次も早めに更新できるように頑張ります!! 

 
シリルside

「もう!!ウェンディどこ行ったのぉ!!」

セシリーに持ち上げられながら探しているのは俺の恋人のウェンディ・マーベル。ディマリアと戦っていた俺を置いてどこかに行ってしまった彼女とシャルルを上空から探しているのだ。

「シャルルあんなに慌てて何があったのかな~?」
「知らないよ!!俺見てないもん!!」

ディマリアは魔封石が手元にあったのでそれで拘束して近くを通りかかったビッグスローさんに渡して来たんだけど、ウェンディが慌てるシャルルにどこに連れられていったのかが気になった俺も急いで彼女たちを探しているわけで・・・

「ん?」

しばらくウェンディの姿をキョロキョロしながら探していると、二人の人物が目に入る。それを見た瞬間、今自分がやっていた行動が頭から消し飛んだ。

「セシリー!!一回降りて!!」
「え~!?なんで~!?」
「あれ見て!!」

嫌そうな顔をしているセシリーに見つけた人物たちを指さして見るように促す。俺の視線の先にいるのは、グッタリと倒れているギルダーツさんとそれを涙ながらに揺すってるカナさんの姿。

「え!?ギルダーツさんが負けたの~!?」
「わかんないけど・・・とにかく降りるよ」
「了解~!!」

治癒魔法が使える俺ならもしかしたらまだ助けられるかもしれない。そう思い二人の元へと急降下していった。


















第三者side

地面から上がる煙。それが当たるはずだったエクシードは目を開き、唖然と立ち尽くしている。

「外した?」
「なぜ?」

何が起きたのかわからないのはカグラもミネルバも一緒だった。中でも一番驚いているのは、それを放った青年。

「ぐっ!!」

訳がわからないと言った表情だったティオスは突然頭を押さえて苦しみ出す。その痛みがあまりにもひどいのか、彼は片膝をついてしまった。

「これは・・・永遠の悪夢(エタニティ・ナイトメア)の効果か?」

ティオスは先のグラシアンとの戦いで放たれた魔法の影響が未だに体に残っていたのではないかと考えているらしい。だが、果たしてそれが正しい結論なのかは誰にもわからない。

「師匠!!それがあなたの本心なんですよ!!」
「なんだと?」

その時サクラはラウルに駆け寄りながらティオスへと問い掛ける。

「あなたは私たちを殺そうとしていた!!でもできないんです!!それは私たちが仲間だからであります!!」

妖精の尻尾(フェアリーテイル)に出会ったことでフィオーレの魔導士たちは仲間意識が非常に強い。それは悪魔へと変貌を遂げた彼にも言えることであると、サクラはわかっていたのだ。

「今ならまだ間に合います!!こんな戦いは終わりにしましょう!!」

懸命に叫ぶサクラ。ティオスはその声かけに笑みを浮かべ、スッと立ち上がった。

「サクラ・・・」
「師匠!!」

手招きされたサクラは嬉しそうに駆け寄っていった。大好きな師に再び仲間の大切さを教えることができたと心から信じていた。

「本当、素直で助かるよ」

飛び付こうとしたサクラ。ティオスはそれを受け止めようと―――

「するわけないじゃん」

両手を広げたかと思ったが、その腹部に水を纏った拳を突き立てた。

「ゴホッ!!」

予期せぬ衝撃に吐き出しそうになるサクラ。彼女は倒れそうになりながら、青年の顔を見上げる。

「よかったな、師匠の魔法に倒させてもらって・・・」
「あなた・・・シリル先輩じゃない?」

絶望に満ちた顔つきのサクラの首もとにチョップを入れるティオス。地面に叩き付けられた彼女はそのまま気を失った。

「半分正解。いや、もうちょい低いか?」

クスッと笑ってみせるティオスの姿を見てカグラとミネルバは憤りを露にしていた。

「貴様・・・どこまで墜ちれば気が済むのだ」
「仲間の信頼を利用するなど最低だ!!」

改心したフリをしてサクラを引き寄せ、油断した彼女に危害を加える。かつての彼を知る二人からすればそれはあまりにも卑劣な行為だった。

「ねぇ・・・今のどういうこと?」

そんな中、ラウルはあることが引っ掛かっていた。それは倒れる前のサクラが言っていたある言葉。

「シリル先輩って・・・何?」
「「!?」」

彼の言葉でカグラもミネルバもようやく気が付いた。サクラはずっとティオスを師匠と呼んでいた。だが、彼女の師匠は当時蛇姫の鱗(ラミアスケイル)に所属していたシリルであり、レオンではない。それなのになぜかサクラはずっとティオスを師匠と呼び続けていたのだ。

「レオンはレオンでしょ!?どういうことなの!?」

意味がわからず問い掛けることしかできないラウル。それにティオスは楽しそうに答えた。

「さぁ?ただ、一つだけ言えることは・・・」

三人の視界から消え去るティオス。彼が姿を現したのは、ラウルの真後ろ。

「俺はもうお前たちの知る俺ではないということだ」

ラウルを黒い氷で凍結させる。すると再び瞬間移動した彼はカグラとミネルバの目の前に現れた。

「速・・・」
「いかん!!これは・・・」

油断があったわけではない。警戒はしていたつもりだった。それなのに、ティオスの動きはあまりにも速く・・・

「もう眠れ、カグラ、ミネルバ」

二人が避けるよりも先にその土手っ腹に穴を空けた。

「すまん・・・スティング・・・」
「姉さん・・・」

意識を失い地面へと落ちた二人。動けなくなった四人に背を向けたティオスはどこかへと歩いていこうとする。

「安心しなよ。すぐにその二人も・・・

















君たちの元に送ってあげるから」

凶悪犯のような笑みを浮かべてその場を後にしたティオス。止まらない悪魔の行進に思われた・・・しかし、彼は決して完璧な悪魔ではなかった。

「ううっ・・・」

一人の少女と一匹のエクシード・・・彼女たちにトドメを刺すことをしなかったのだから。


















その頃妖精の尻尾(フェアリーテイル)のギルドではある異変が起こっていた。

「私が魔力を分離させるのにこんなに時間がかかるのは初めてよ」

メイビスの持つ魔力と肉体とを引き剥がすための魔法を行っているアイリーン。その後ろから、皇帝に相応しい服に身を包んだゼレフが現れた。

「アイリーン」
「陛下・・・まだ何か御用が?集中したいのですけれど」

魔力の分離は繊細な作業とも言える。故にアイリーンは他者から邪魔されるのを非常に嫌がっているのだが・・・

「一旦手を止めてくれ」
「!!」

予想だにしなかった発言に思わず彼女は振り向いた。

「僕の話を聞くんだ」
「何事ですか?」
「メイビスと最後の会話がしたい。二人で」
「この期に及んで何をふぬけたことを・・・」

アイリーンは苛立ってしまった。自分たちの頂点に立つ男のあまりに女々しさに。

「三分でいい。時間をくれないか」
「陛下・・・しかし」

彼の希望を叶えてあげたいとも思ってしまうアイリーンだが、それでは魔力分離にさらなる時間を有してしまうことになる。どうすればいいのか迷っていると、突然走り込んでくる青年の姿が見えた。

「アイリーン!!それは僕じゃない!!」
「!!陛下!?」

嫌な予感がしたため戻ってきたゼレフ。彼が現れたことにより、それまでアイリーンと会話をしていたゼレフが消えた。

「まさか・・・」

メイビスの体へ触れるアイリーン。しかし、それを手がすり抜け、流れ出る水のように消えてしまった。

「幻・・・!?」
「メイビスの得意とする魔法だ」
「いつの間に・・・!?」
「インベルがやられたのか・・・」

メイビスがいなくなっていたことに全く気が付かなかったアイリーン。彼女は怒りで顔つきが変わっていた。

「この私が・・・騙されたというのか・・・」
「今すぐ追うんだ。でも、キズつけたりしてはいけない」
「ええ」

騙されたことによりこれまで以上の集中力を発揮し始めたアイリーン。一方のメイビスは仲間たちと合流しようとしていた際、瞬間移動(ダイレクトライン)で現れたメストに救出され、仲間たちの元へと急いでいた。

















荒れ狂う戦場から離れたその地。そこでは金髪の少女と青色の猫が豹変した仲間の姿に戦慄していた。

「ナツ・・・どうしちゃったの?」

全身からあふれでる禍々しい魔力。その青年の目はいつもの優しげなそれとは違う。人間のそれとは思えないほどの目付きへと変貌していた。

「END・・・ゼレフ書最強の悪魔・・・なるほどね」

ナツの拳を受けたヨザイネは混乱していたがそれもようやく収まった。彼女は立ち上がると、暴走状態にあるナツを見据える。

E(エーテリアス)N(ナツ)D(ドラグニル)・・・この子が陛下の()ってわけね」
「あんた・・・何言ってるの?」

次から次へと出てくる事実。だが、それを知らなかったルーシィは状況を飲み込めなかった・・・いや、それをすることを自らが拒んでいたのかもしれない。

「知らなかったのね。陛下と火竜(サラマンダー)は兄弟なのよ。つまりあの子の叔父になるってわけね」
「あの子?」

それを聞いてすぐにピンッと来た。マカロフが言っていたゼレフの子・・・神の子の異名を持つティオスのことを。しかし、彼女たちはティオスがレオンに瓜二つの青年であることを知らないため、そう勘違いしてしまったのだ。

「でも残念ね。陛下は待っていたのよ。あなたが自分を殺してくれることを。でも・・・」

白き翼を広げ瞳を閉じる。ヨザイネの魔力が周囲の気温をみるみる下げていった。

「さ・・・寒い・・・」
「凍えそう・・・」

体を震わせているルーシィとハッピー。それに対しナツは我を見失っているせいで何も感じられないのか、微動だにしない。

「古の魔物を殺めた力よ。再びこの地に舞い降りよ!!」

その言葉と共にヨザイネの目が開かれると、周囲が瞬く間に凍りついた。それはまるで恐竜を滅ぼしたとされる氷河期を思い出させるほどに一瞬で。

「さぁ、炎の悪魔さん。あなたの力はどれほどなのかしら」

じっと凍りつけにされたナツを見ていたヨザイネ。すると、彼を中心に炎が上がっていき、ヨザイネの魔法により凍らされた大地が一瞬で元通りになった。

「ゼレフはどこだ・・・」
「面白い戦いができそうね」

















覚醒したナツがその真価を発揮しようとしていた頃、妖精の尻尾(フェアリーテイル)の本陣は押されていた。

「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」
「マスター!!」
「ワシのことはいい・・・進め!!」

長期戦のせいで苦しそうにしているマカロフ。彼にアルザックが声をかけるが心配をかけないためかそう言う。

「進めっつっても・・・」

しかし息が上がっているのは彼だけではなかった。戦っている魔導士全員が既にグロッキー。理由は次から次へと現れる敵兵。

「敵が全く減らねぇ・・・」
「キリがねぇよ!!」

100万のアルバレスの軍隊を前に明らかな戦力差を痛感させられる。だが、それでも諦めないのが妖精の尻尾(フェアリーテイル)なのである。

「案ずるな!!道は私が作る!!」
「エルザ!!」

鎧に身を包み進軍を後押しするエルザ。それを見ていたマカロフは自らの力の無さに悔しさを滲ませていた。

「すまん・・・」
「マスター、あまり無理をなさらず。必ず共にギルドに帰りましょう」
「当たり前じゃ、バカタレ」

親子のような絆が芽生えている二人は互いにそれぞれの気持ちを汲み取っていた。その時、周囲の仲間たちがにわかに騒ぎ出す。彼らが指さす先を見ると、そこには巨大な目が彼らを見つめていた。

『メイビス・・・どこに隠れても無駄よ。私の眼からは逃げられない』

騙されたことにより憤りを感じているアイリーンは自らの強大な魔力を駆使して戦場全てを見渡しメイビスを探していたのだ。その不気味な魔法のせいでフィオーレの魔導士たちは恐怖し、士気が下がり始めていた。

『私は逃げも隠れもしません』
「「「「「!!」」」」」

その時絶望している彼らの耳に届く声。それがどこから聞こえてくるのか見回していると、信じられないような光景が姿を見せた。

『あなたたちのいる場所は私たちのギルド。必ず奪い返してみせます。私の声を聞く全ての同志よ。共に戦え!!汝等の剣、妖精軍師が預かる!!』

戦場にいる全員が見ることができるほど巨大な幻影。それを見た魔導士たちは驚きと共に頼もしい言葉に歓喜した。

「戦場の士気を一気に上げるとは・・・」

アイリーンのセリフさえも計算にしての演出。これには敵は苛立ち、味方はどんどん敵兵を押し返していった。



















「下らないな。実に下らない」

その鼓舞を見て冷ややかな目をしている者が一人。彼は息絶えているビッグスローの上に腰掛け魔封石で拘束された上に多くの肌を露にしているディマリアを踏んづけていた。

「あの程度の鼓舞で盛り上がる軍隊・・・それで役目を果たしたと思っている大将・・・先陣を切って戦うどこぞの宇宙の帝王の方が遥かに有能だぜ」

そう言った彼は大きなあくびをしてみせると、立ち上がってディマリアを見下ろした。

「待ってくれ!!ティオス!!」

これから何をされるのかはすぐにわかった。今まで彼がしてきたように自分も殺されること・・・死に直面して初めてわかる恐怖に、彼女は震えていた。

「ビビるなよ。黒き天女よ」
「ふぇ?」

涙を目に浮かべながら彼が何を言っているのかわからずにいるディマリア。彼はディマリアの顎を持つと、顔を上げさせる。

「お前はわからなくていい。どうせ死ぬんだから」
「やめ―――」

そこで彼女の言葉は途切れた。ティオスの蹴りにより切り離された胴体。彼女はその痛みを感じることすらできず、息絶えてしまった。

「さてと・・・かき回し過ぎたせいでオーガストを倒す駒がいなくなっちまったな」

これまでの自分の行動を反省しつつ次なる作戦を考えるティオス。彼が出した結論・・・それは・・・

「ひとまず()()()()を出会わないようにしないとな」

額に指を当てどこかへとテレポートする。次なるターゲットは、果たして誰なのだろうか。

 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
戦場をかき回し続けるティオス。ENDを見ても余裕のヨザイネ。魔法なしでレオンを圧倒した天海とオリキャラたちが強すぎるアルバレス。リュシーも四天王仕留めたしね。
次はどうなるかな?楽しみにしていてください。 
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