FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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変貌
前書き
なかなか時間が取れず毎回ギリギリでの更新。ストーリーは思い付いているだけに歯痒いです
親の体を支える娘。それを見下ろす老人は目は冷酷だった。
「私には親子の絆というものがわからない。興味もない。なぜ親は子を愛し、子は親を愛すのか」
杖で地面を突くオーガスト。すると大地が大きく震動する。
「何これ!?」
「まずい・・・こいつは・・・」
満身創痍にも関わらずギルダーツは何が起きるかわかるとカナを懸命に抱き締めた。
ドゴッ
地面がせり上がり四方から二人を囲む。その巨大な岩山はオーガストが再度杖を突くと、正方形へと切り刻まれて雪崩のように二人に襲い掛かってきた。
「カナ・・・何があってもお前だけは守ってやる」
「お父さん!!」
懸命に娘を抱き締め迫り来る雪崩に歯を食い縛る父。全ての岩山が崩れ落ちると、周囲に砂煙が立ち込めた。
「親子の絆・・・それで勝てるなら苦労はないな」
そう言い残しその場を後にするオーガスト。煙が晴れ、そこに残されたのは血まみれの父とそれに抱き締められる娘。
「ギルダーツ?ねぇ!!ギルダーツ!!」
自らを抱き締めたまま動けなくなっている父の体を引き剥がして必死に揺する。だが、彼の体に力は入っておらず、まるで人形のようだった。
「ギル・・・お父さん!!」
響き渡る声。それに対し父は答えることはなかった。
また一つの戦いに終止符が打たれた頃、絶対的な魔力を有するこの男は目の前の人物に驚愕していた。
(なぜ!?なぜミネルバがここにいる!?)
頭を押さえ目の前に現れた人物がここにいる理由を考えるティオス。だが、それが意味のない行為だとすぐに彼は気が付いた。
(天海を仕留めるために歴史を変えすぎたからか・・・確かにミネルバは想定外だったが・・・)
彼は桃色の髪をしている少女とオレンジ色の猫を同時に見据える。
(この二人は想定通り。多少のズレはあるものの、計画に変更はいらないようだ)
唇を舐め笑みを浮かべる。それに対しミネルバは構えるが、後ろにいるカグラは彼女の登場に驚いていた。
「なぜお前がここにいる?」
「妾も妖精の尻尾に向かっていた。その時にそなたを見つけたが・・・」
一度ミネルバの口が閉ざされる。しばらく何かを思考したかと思うと、彼女は再び口を開いた。
「カグラ・・・妾はそなたに謝らなければならない」
「??」
何のことを言っているのかわからずにいるカグラ。ミネルバはティオスに向き合いながら、さらに続ける。
「大魔闘演武で妾は非道な行動を取った。それを詫びるためにそなたに死んでもらうわけにはいかん」
そう言って彼女は敵に突進していく。それを聞いたカグラは唖然としながらも、クスリと笑ってそのあとに続いた。
「今さら気にしていない。もう人を恨むことはやめたんだ」
「それは・・・お節介だったかのぅ」
左右に別れてティオスへと迫る二人の女性。しかし、難敵が迫っているにも関わらずティオスの表情に焦りはない。
「この二人が組むことを、昔は想像できなかった」
剣を振るうカグラと魔力を宿した腕を振るうミネルバ。ティオスは冷静に一歩下がると、それを軽く回避する。
「大魔闘演武で分かり合うことができなかった二人・・・それを引き合わせたのは確かに妖精の尻尾であろう」
再度攻撃を試みるカグラとミネルバ。だが、その時を彼は待っていた。
「だが・・・」
水のような魔力を右腕に、風のような魔力を左腕へと集中させると、それをカグラとミネルバ、それぞれの腹部へと叩き付ける。
「「ガッ!!」」
「お前たちを引き離すのも、奴等なのかもしれないな」
宙に浮かぶ二人の体。ティオスはその二人を見据えて頬を膨らませる。
「氷神の・・・」
ブレスを放とうとした。その瞬間、彼の視界に入り込む猫に持たれている少女。
「ファイア!!」
ミネルバとカグラを守るように前に立ったサクラ。彼女は魔法陣を作り出し氷を打ち消すためにと炎を作り出す。
「怒号!!」
相性ではサクラが有利。しかし、彼はお構い無しにブレスを放つと、案の定炎を突き破り四人を氷のブレスが飲み込む。
「「「きゃああああああ!!」」」
「うわあああああああ!!」
放物線を描きながら地面に叩き付けられる四人。その体は凍っている箇所すらあり、彼女たちは痛みに悶絶している。
「なんて力だ・・・」
「この威力・・・師匠を越えてますよ・・・」
痛みに襲われながらも立ち上がり顔を上げる。その姿にティオスは拍手を送る。
「さすがマーメイドとセイバーの最強の魔導士だ。もっとも、それもこの国の中での話だが」
余裕を感じさせるティオスに苛立ちを募らせつつも、彼女たちはそれに反論をすることができない。なぜならそれだけのことを言えるほどの力が彼にはあるからだ。
「ねぇ・・・なんで・・・」
どうすればいいのかわからずにいたカグラたちの前に立ったラウル。彼は瞳を潤せながら友によく似た青年の顔を見上げる。
「どうしてこんなことになっちゃったの?レオン」
彼の目から雫が零れ落ちる。それを見た青年の表情は固くなった。
「俺はお前たちが知る俺ではない。変わったんだ、あの時に」
「あの時?」
いつのことを言っているのかわからないカグラたちはリアクションを取ることもできない。ティオスは目の前にいるラウルに指を向ける。
「それをお前たちが知る術はない。ここで死ぬのだから」
指先に集まる魔力。それはわずかな量でしかないのに、周囲の気温はみるみる下がっていく。
「ラウル!!下がって!!」
「やだ!!」
危険を察知したサクラが助けようと駆け寄る。だが、それよりも早く青年の指からレーザーが発射された。
「ラウル!!」
「逃げろ!!」
「よせ!!」
最悪の事態しか見えない。サクラたちは必死に叫び、ラウルは目を閉じ奥歯を噛み締める。しかし、彼には来るべき衝撃が来なかった。
「なっ・・・」
「外した?」
ラウルのわずか数センチ横を抜けて地面へと突き抜けたレーザー。それを放った本人でさえも、何が起きたのかわからず唖然としていた。
「きゃあ!!」
「うぎゃ!!」
「あぐ!!」
その頃巨大化したブランディッシュに連れ去られたナツたちは戦場から遠く離れた遺跡へと来ていた。
「何のつもりだ!!」
「ブランディッシュお願い!!あたし、あなたと戦いたくない」
この戦争の最中、一つの友情が芽生えていた。かつて母同士が友人だったルーシィとブランディッシュ。彼女たちは敵として出会いながら・・・
「私もよ」
小さくなったブランディッシュがそっぽを向きながら答える。彼女もまた、ルーシィに対して特別な感情を抱き始めていた。
「あなたたちには世話になったし、特別に見逃してあげる」
「見逃す?」
彼女が何を言いたいのかわからないハッピーは首をかしげる。ブランディッシュはその言葉の意味を語り出した。
「前にも言ったように私はアルバレスの人間。裏切るつもりはない。これから私はあなたたちの仲間を皆殺しにするわ。けど・・・あなたたちだけ見逃してあげるの」
「え?」
「お前、何言ってんだ・・・」
突然すぎて彼女が何を言いたいのか理解が追い付かないルーシィとナツ。ブランディッシュは寂しそうな表情を浮かべながらなおも続ける。
「この戦い・・・どう転んでも私たちが勝つわ。兵の数、練度、スプリガン16、ティオス、オーガスト、アイリーン。そして皇帝は今まさに妖精の心臓を手に入れようとしている。あなたたちにはわずかな勝ち目すらない」
「そんなのやってみなきゃわからねぇだろ」
「わかるわよ。あなたたちの仲間は全員死ぬ」
ブランディッシュの言葉を裏付けるように、現在の戦場はアルバレス優勢で進んでいた。妖精の尻尾最強と称されるギルダーツすらオーガストの前に沈められ、戦力が著しく低下している。
「死なせるもんかよ」
「あたしたちは今までいくつもの激戦を乗り越えてきたのよ!!」
しかし、そんなことなど知りもしないナツたちは強気だ。仲間たちが負けるはずがないと信じているからこそ、このような態度に出れる。
「あなたたちは16の本当の恐ろしさを知らない」
未だに実力が未知数の魔導士もいるアルバレス皇帝スプリガンの精鋭部隊。その半数近くがまだ残っている。
「お前らこそ、妖精の尻尾の恐ろしさを知らねぇんじゃねぇのか?」
ナツはそれでも引き下がることはしない。実際に16のメンバーに勝利を納めているものも数多くいるため、彼のこの言葉も間違いではない。
「カラコール島でのこと、思い出しなさい。その気になれば16はあなたたちを一瞬で殺せる」
「やってみろよ」
「ナツ!!」
なおも説得を試みるブランディッシュに対しナツは強気な姿勢を崩さない。
「俺たちは見逃してほしい訳じゃねぇ。俺たちの意志でここにいるんだ!!」
「めんどくさい・・・」
一歩も引くつもりのないナツを見てブランディッシュはボソリと呟いた。すると、突然ナツが胸を押さえて苦しみ出した。
「がはっ!!」
「ナツ!!」
「どうしたの!?急に・・・」
苦しみ悶えるナツはそのまま地面へと倒れ込んでしまった。
「何とか腫瘍を小さくしたのは私よ。それを元に戻したの」
「なんでそんなこと!!」
「なんで?そいつは私たちの脅威だからよ」
強い意志を持っている上に彼の実力が高いことも先のジェイコブとの戦いで把握済み。だからこそこのタイミングでナツの腫瘍を元に戻したのだ。
「あなたたちは敵」
「敵じゃない!!あたしたちは友達になれる!!」
「それはあなたと私の母の話。私たちは別の国で育ち、別々の目的を持って対峙している。確かにあなたにもう恨みはない。けど、このままじゃ私はどうしたらいいのかわからないのよ!!
めんどくさいから白黒つけたいの、ルーシィ」
そう言って上着を脱ぎ捨てるブランディッシュ。それを見たルーシィも、彼女の覚悟を感じ取り、真っ正面から対峙する。
「あたしが勝ったらナツを治すって約束してくれる?」
「違うわよ、ルーシィ。白黒って私とあなたが戦うことじゃないわ。私があなたを殺して決別するの。少し情に流された自分と。
あなたに勝ち目なんか少しもあるわけないじゃない」
そう言うブランディッシュの目はすっかり本気度が変わっているように見える。それはまさしく・・・
「真剣勝負をするフリが丸見えね、ランディ」
「「「!!」」」
突如後ろから聞こえてきた少女の声。全員がそちらを向くと、そこにいたのは長い髪の一部をお団子状に束ねている不思議な雰囲気の少女だった。
「ヨザイネ」
「フリってどういうこと!?」
突然現れた少女が一体何を言っているのかわからないルーシィは怒鳴るように問い掛ける。ヨザイネはそれに冷静に答えてみせる。
「ブランディッシュは本気で戦うつもりなんかないのよ。あなたたちとね」
「「!?」」
彼女の言葉に驚いてみせるルーシィとハッピー。ブランディッシュは表情を変えないまま彼女を横目で見ている。
「腫瘍を元に戻した?ランディなら内臓を大きくして突き破らせて殺せる。情に流された自分と決別したいなら戦う必要もない。
その子を小さくして踏み潰して終わり。あなたは気付いていたんでしょ?私が見ていたことに。だからわざと負けようとしていた」
「黙りなさい!!」
そう言って手の平を向けるブランディッシュ。しかし、魔法をぶつけられたであろうヨザイネには何も変化が起きない。
「やっぱりもうアルバレス帝国の一員として戦う気はないみたいね」
「そんな・・・なんで・・・」
ヨザイネを小さくして動きを封じようと考えていたブランディッシュ。それなのに、彼女は平然としており、困惑が目に見えている。
「そういえばあなたは私と戦ったことなかったものね。知らないのも無理はないわ」
そう言うとヨザイネの背中から巨大な翼が広げられる。それは彼女の異名である堕天使とは異なり、純白の天使のような羽根だった。
「私は堕天使。あなたたち人間の魔法など効かないのよ」
その瞬間ヨザイネの魔力が極限まで高められていくのを肌で感じた。それに同調するように青かった空が黒雲に覆われていく。
「天地を切り裂く神の怒りよ!!我らに反逆する者に罰を与えよ!!」
空を覆い尽くした黒雲から落とされる落雷。それはルーシィたちの目の前にいたブランディッシュに容赦なく落とされた。
「きゃああああああ!!」
響き渡る悲鳴。天の怒りに晒された彼女は黒こげになっており、膝から前のめりに崩れ落ちた。
「ブランディッシュ!!」
慌てたように彼女に駆け寄るルーシィ。それを見ていたハッピーは震え、微かに残った意識でその様子を確認していたナツが奥歯を噛み締めていた。
「ブランディッシュ!!しっかりして!!ブランディッシュ!!」
涙ながらに体を揺するルーシィ。しかし、それにブランディッシュがそれに答えることはもうない。
「お前・・・仲間じゃなかったのかよ・・・」
号泣するルーシィの後ろで立ち上がったナツ。腫瘍を元に戻されたことにより痛みがある彼はフラフラしながらヨザイネに向き直る。
「確かにランディは仲間だったわ。でもね、彼女は私たちを裏切った。これは私たちを守るために必要な行為なのよ」
自分たちを裏切った彼女はもはや脅威でしかない。それだけの魔力をブランディッシュは有しているのだから。
「それでも・・・仲間を傷付けることに躊躇いがねぇのかよ!!」
だが、仲間を大切に思っているナツにはその行為を許すことはできなかった。痛みに耐えながら懸命に突進を試みる火竜。
「あら?聞いてなかったの?私にあなたたち人間の魔法は効かない―――」
ヨザイネに魔法は効かないはずだった。ブランディッシュの魔法が効かなかったことからそれは証明されていた。それにも関わらず、ナツが放った火竜の鉄拳がヨザイネの顔に入ると、少女は地面を削りながら吹き飛ばされた。
「な・・・なんで・・・」
数十メートルに渡って吹き飛ばされたヨザイネは驚きを禁じ得なかった。
「私に攻撃を当てれる人間なんて存在しないのに・・・なんで・・・」
だが、その時彼女の目に入ったものを見てその理由がすぐにわかった。桜髪の青年の体からあふれでる禍々しい魔力。それは見るからに人間のそれではなかった。
「ナツ?」
「ねぇ・・・どうしちゃったの?ナツ・・・」
彼のあまりの変貌にルーシィたちも動揺を隠し得ない。だが、ヨザイネはすぐに彼の正体に気が付いた。
「まさか・・・END!?」
「え!?」
ENDへと変貌を遂げたナツ。彼が向かうのは破滅への道なのか。
後書き
いかがだったでしょうか。
ナツがENDへとなってしまいました。
目まぐるしく場面が変わっているせいで作者も混乱しつつあるここ最近。
次はナツvsヨザイネがメインになるかな?
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