外伝・少年少女の戦極時代
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斬月編・バロン編リメイク
あなたを傷つけたくなくて side碧沙
黒い車が工場地帯に走り込んできた。
車から降りて出たのは、黒服の男が二人と、例の執事。
「アルフレッド……っ」
「探しましたよ。お坊ちゃま」
アルフレッドは笑顔だが目が笑っていない。
「お父上がお坊ちゃまの死をご所望です」
「お父様、が?」
両の二の腕に悪寒が走った。
親が、子の、死を望むという事態が、碧沙のキャパシティを超えていた。
アルフレッドが一歩踏み出した時、碧沙は勇気を出してアルフレッドの腹に体当たりして、しがみついた。
「駆紋さん! シャプールさんを……!」
「邪魔をするな!!」
「い゛……っ」
碧沙はアルフレッドに髪を掴まれて引き剥がされ、突き飛ばされた。
(どう、しよう。この体、咲のなのよ? 立ち上がって、今度こそ咲の体に傷でも残っちゃったら。そう思うだけでこわくて立てない……!)
にぶい殴打の音がして、え、と碧沙は顔を上げた。
戒斗が、片腕に碧沙(体は咲)の肩を抱いて、もう片方の手に持った戦極ドライバーの裏面で、踏みつけようとした足を防いでいた。
「駆紋、さん」
戒斗はアルフレッドの足を弾き、逆に腹を蹴り飛ばした。
さらに、襲ってきた黒服二人も、戒斗は一人でいなして撃沈させてしまった。
「あなたがお坊ちゃまを助けても、得にはならないと思いますが?」
「俺は貴様が気に入らない。それで充分だ!」
「――あくまで邪魔をするというのなら」
アルフレッドが取り出したのは――ゲネシスドライバーと、炎の形をした果実を象ったエナジーロックシード。
(なん、で。だってそれ、そのロックシードは、咲の)
「許さんぞ!!」
《 ドラゴンフルーツエナジー 》
アルフレッドは開錠したドラゴンフルーツのエナジーロックシードをドライバーにセットした。
「変身」
《 ソーダ ドラゴンエナジーアームズ 》
クラックが宙に開き、落ちてきたのは、炎の形をした果実の鎧。鎧がアルフレッドの頭に落ち、彼を装甲する。
珊瑚色のマントを翻す黒いアーマードライダーは、ソニックアローで戒斗へ襲いかかった。
戒斗はソニックアローを避けてから、戦極ドライバーを装着してバナナの錠前を解錠した。
「変身!」
《 カモン バナナアームズ Knight of Spear 》
変身を完了したバロンは、再びソニックアローを振り被った黒いアーマードライダーと戦い始めた。
碧沙は、ホテルから逃げるどさくさでも忘れず持ってきたランドセルから、戦極ドライバーと種々のロックシードを取り出した。
――先ほど捕まった時は迷ったが、おそらく今のヘキサならば咲の戦極ドライバーで変身できる。変身して――しかしヘキサは、戦えない。純粋に闘争そのものがこわいということもある。だが、もっと何か、重要な。
(いつもわたしたちの分まで、インベスを、元は人間だったモノを殺してる咲に、これ以上“人間”を傷つけさせるなんて、いやよ)
なら、これらは宝の持ち腐れか? ――NOだ。
「駆紋さん――使って!」
碧沙は手持ちのロックシードの内、ドラゴンフルーツをバロンへ投げた。
――戦わないなら、この手に持てる力を、せめて今戦ってくれている戒斗へ託すくらいは。
バロンは飛びずさりながらドラゴンフルーツの錠前をキャッチし、開錠してバックルに嵌め込んだ。
《 カモン ドラゴンフルーツアームズ Bomb Voyage 》
かくてそこには、赤いライドウェアの上から赤いアームズを纏ったバロンがいた。
ドラゴンフルーツアームズに換装したバロンは、すばやく、いつかのインベスゲームのように片手に3つのDFボムを出し、黒いアーマードライダーの足下に投げつけた。
プチ手榴弾が爆ぜて白煙が上がった。
碧沙は立ち上がり、シャプールの腕を両手で引っ張った。
「逃げましょうっ」
「う、うんっ」
『行くぞ! 急げ!』
「はい!」
どうにか立ち上がったシャプールを、碧沙は全力で引っ張って、バロンに背中を守られながら走った。
後書き
歩調を合わせるって優しさだと思います。
本編では実現する暇がなかった、バロン・ドラゴンフルーツアームズ。
パッションフルーツとどっちにするか迷いました。
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