外伝・少年少女の戦極時代
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デューク&ナックル編
黒い悟りの根元にて ①
色とりどりの紙吹雪が、黄金の果実を巡って熾烈に争う戦士たちに、平等に降り注ぐ。
祝福のフラワーシャワー。あるいは、葬送の華葩。
本来ならば後者であらねばならないそれは、前者として、男の片方の命を救った。
救われた男が、去った男を慕って咽び泣く少女に寄り添っている。
その顛末を見届けたある幽霊は、言うのだ。
「これは救いではない」
その一言のもとに、少女と男たちの苦悩も苦痛も切り捨てて、幽霊は去った。
…………
……
…
ブラックホーク・ストリート。
いわゆる飲み屋街の、跡地。インベス災害の時に大半の店舗が燃えてしまい、再建されぬままに放置された廃屋の立ち並ぶストリート。
不良グループ、またはシュラのネオ・バロンほどでないにせよビートライダーズのチームの出来損ないがたむろする、治安の悪さなら沢芽市内で十指に入る土地だ。
そのストリートを、貴虎は咲と連れ立って進んでいた。
スーツ姿の男と、セーラー服の幼い女子。土地柄を加味すれば、九割九分の市民が援助交際だと勘違いする組み合わせ。
だが、当人の片割れたる貴虎は、そのような下卑た視線、奇異の目など、全く、これっぽっちも、歯牙にかけてはいなかった。
貴虎が思うのは一つ。このストリートに潜伏している――狗道供界。
貴虎は供界を許せなかった。救済の時? セイヴァーシステム? やり口がまるっきり過去のユグドラシルと同じではないか。
少し前までユグドラシル側だった貴虎に、この憤りを抱く資格はないのかもしれない。
それでも、許せないと、強く思ったのだ。
本心を言えば、このストリートがシュラと供界のロックシード取引場所だと判明したその場で、貴虎はすぐにでも供界のもとに乗り込みたかった。しかし、ネオ・バロンによってばら撒かれたドライバーの回収、それに伴うユグドラシル残党の摘発もあり、すぐには動けなかったのだ。
足を止め、見上げる。
一切の灯りが途絶えたテナントビル。シュラによればここが供界の潜伏先とのことだ。
「――本当にいいんだな? 室井君」
「ええ。ビートライダーズを食い物にされる前に、代表であたしがぶっ潰す。あたしでいいってみんな言ってくれたからね」
「本当に幽霊かもしれないぞ」
ゲネシスドライバーの完成直前、貴虎は凌馬と共に供界を確かに一度討ち取った。それが、復活した。
ヘルヘイムにまつわることを散々経験してきたのだ。あんな存在がいるなら、幽霊くらいいても驚かない。
「幽霊だってんなら、成仏するまで爆破してやるまでよ」
この女子中学生はそこらの男よりずっと逞しい。
「行くぞ」
「ええ」
貴虎と咲はテナントビルの外付け階段を登り、ビルの屋上へ出た。
――果たして。一人の男が待っていた。
「あんたが狗道供界?」
「そうだ。室井咲。鳥ならずして空翔けるもの」
咲が飛翔形態のヒマワリアームズを持つことは限られた人間しか知らないことだ。
思い返せば、今日の今日まで供界の情報は一つたりとも掴めなかった。ザクロのロックシードやドライバーを量産してアウトローにばら撒くなど、見つけてくれと言われているも同然だったのに。
まるでこの男が俗世からは不干渉の位置にいるかのように――
「葛葉紘汰は世界を救えなかった。黄金の果実を手にしながら、葛葉紘汰は人類を見捨てた」
「……なんですって?」
「私のもたらす救済を受け入れよ。ヘルヘイムが去った今、私だけが人類を救える。人類は肉体の束縛から逃れ、くり返す戦いの輪廻から解放されるべきなのだ」
供界が取り出したのは、ゲネシスコアを装着した戦極ドライバー。
供界はドライバーを無造作に腹に装着すると、両手にロックシードを握った。ロックシードもまた過去に見たものと同じ。「L.S.MESSIAH」と刻印されたザクロと、ブラッドオレンジだ。
「変身」
《 ザクロアームズ 狂い咲き・サクリファイス 》
《 ブラッドオレンジアームズ 邪ノ道・オン・ステージ 》
クラックは開かず、供界の周囲に鮮紅色の鎧が出現し、供界の全身を覆った。昔と同じ、鮮紅のアーマードライダー、セイヴァーがそこに立っていた。
予想されて然るべき展開だった。
貴虎はすぐさま量産型ドライバーを装着した。
「室井君、準備は!?」
「もちばっち! 紘汰くんバカにした時点であたし的には和解の余地なし!」
咲は戦極ドライバーを装着して、ドラゴンフルーツの錠前を開錠することで答えとした。
貴虎もまたウォーターメロンの錠前を開錠した。
「「変身!!」」
《 カモン ドラゴンフルーツアームズ Bomb Voyage 》
《 ソイヤッ ウォーターメロンアームズ 乱れ玉・ババババン 》
ウォーターメロンの鎧が貴虎を斬月に、ドラゴンフルーツの甲冑が咲を月花に変えた。
斬月は無双セイバーを抜刀し、月花は両手に持てるだけのDFボムを持って、セイヴァーと対峙した。
後書き
供界との決着がつくのは小説版鎧武なので、そこに至らせずにしかし一つの決着はつけるというのが難しいです。
盛大に省いたと見せかけて、実はナックル・ジンバーマロンとブラックバロンを出すつもりはバリバリあったりします。
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