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外伝・少年少女の戦極時代

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デューク&ナックル編
  リトルスターマイン、再始動!


 ざわ。ざわ。

 クラスメートがさんざめく昼休みの教室。碧沙は、購買部に昼食のパンを買いに行ったトモを待つ間、スマートホンをタップし、タッチした。

 開いたウィンドウはもちろんビートライダーズの全体SNS。
 新着メッセージはゼロ。

 ――咲たちがネオ・バロンの調査結果を全体SNSにアップロードしてからも、ペコからの便りはない。読んだコメントによれば、比較的仲の良いチャッキーにさえ、ない。現在のペコとは完全なる没交渉だ。

(待つしかないじれったさには慣れてる。それより不安なのは、ペコさんが元気かどうか。連絡をとらないように脅されたり暴力をふるわれたりしてなきゃいいんだけど)

 前にこの考えをトモに打ち明けると、「ヘキサは心配性なのよ」と一刀両断された。もう薙刀は辞めたくせに、実に切れ味のよい断言だった。ちょっぴり根に持っていたりする。


「知ってる? 街の幽霊の噂」
「知ってる知ってる。“ザクロ売りの錠前ディーラー”でしょ」


 そのおしゃべりが耳に入った瞬間、碧沙の聴覚はダンス中並みに研ぎ澄まされた。


 ――()()()()とした男がいる。

 ――合言葉がある。「終末の時は来たれり」。「迷える我らを導きたまえ」。

 ――男は一種類だけロックシードを売る。あるいは、無償で渡す。

 ――鮮紅色のロックシード。ザクロ。人肉の味がするという果実。

 ――男から鮮紅色のロックシードを受け取った人間は、遅かれ早かれ()()()()()


「ごめん、ヘキサ。お待たせ。――どうしたの? 心ここにいない? ね~え~」

 碧沙はしばらく声を上げることができなかった。




 下校してマンションに帰った碧沙は、キッチンに並んで一緒に夕食を作っている光実に、昼休みに聞いた「噂」を打ち明けた。

「それ、僕も大学でゼミ仲間から聞いたことある」

 少し前まで、キッチンには碧沙しか立たなかった。料理しながら話すにしても、光実はダイニングのテーブルに座って話していた。それが、少し前まで再放送していたドラマに影響されたのか、こうして光実が一緒にキッチンに立つ機会が増えた。

 絶賛反抗期である碧沙としては実に気まずい環境だ。

 今日は「噂」の報告があったから光実と普通に会話できたが、普段は無言で料理に集中しているし、光実が話しかけても淡白な反応しかしない。

「実際、そういう噂話してから大学に来なくなった人もいないわけじゃないからね。怪談スポット探検のつもりで行って、本当に会っちゃったのかもね。幽霊に」

 もっともそれには、光実がたまにこういった黒い側面を表に出すという部分も一枚噛んでいるのだが。

「ほんとにそれが幽霊だったとしても、シドさんじゃないのは確か。あの人、意地でも幽霊になんかなるもんかって思うタイプだったからね――」
「――そうね」

 碧沙は菜箸を置いてコンロの火を切った。フライパンの余熱でじゅうじゅうと焼ける青椒肉絲は、空々しいほど香ばしい。

 ピロリン♪

 カウンターに置いてあったスマートホンが鳴った。新着メッセージだ。
 碧沙はエプロンを外して、スマートホンのアイコンをタッチした。

《ただいま。久しぶり》

「ザックさん……」
「え、ザック?」

 ――ザック。ダンスの本場ニューヨークへ渡った、元チームバロンのリーダーにして代表者。そして、アーマードライダーナックルの変身者。

《いま空港出た。これからネオ・バロンに行ってペコを連れて帰る。吉報、待っててくれよ》

 碧沙は慌てて、無自覚のままに光実の腕に取り縋った。

「光兄さん!」
「ちょ!? 鍋ひっくり返るって!」
「これ!」

 碧沙はスマートホンを光実に突き出した。
 光実は画面を覗き込み――小さく息を呑んだ。




 一方その頃の咲たちはというと――

「……やばーばばい」

 ダンススクールでの休憩時間。スマートホンをいじっていたナッツが、コアなお笑い芸人のネタを呟いた。
 ナッツがそういうネタに走る時は本気で「あちゃー」な事態だと、付き合いが長い咲は知っていた。

「――ナッツ。なにが起きたの」
「ザックさんがニューヨークから帰って来て、その足でネオ・バロン行っちゃったわ」
「マジでぇ!?」
「さらにトモから新着。ヘキサから連絡来たから、ミッチさんに迎えに来てもらって三人で追っかけるってさ」

 咲は学校指定のボストンバッグを開いて中身を確かめた。

 咲用にイニシャライズされた戦極ドライバー。ドラゴンフルーツ、それにパッションフルーツとヒマワリとダイズの錠前。ゲネシスコア。ピーチのエナジーロックシード。――必要な物は全て揃っている。

「行くか、咲?」

 モン太がうずうずした様子で尋ねてきた。モン太だけではない。チューやんもナッツも、顔にあるのは恐れではなく、イタズラ決行前のコドモのワクワク感。

 本当にどいつもこいつも、小学生だった頃からちっとも進歩しやしない。
 だから、室井咲は笑ってこう答えるのだ。

「あたりまえのこと聞かないで」

 ナッツもモン太もチューやんも、咲のものと同じボストンバッグに、床に散らかしていたジャージの上やら何やらを詰めて、立ち上がった。

 全員でドアへ向かった。休憩時間のタバコ一服を終えてレッスン室に戻って来た講師に、咲たちはすれ違いざま、

「「「仲間のピンチにつき早退します!」」」
「……します」

 と、嘘偽りなく申告した。

「ん。りょーかい。お疲れさん」
「おつかれさまでしたー!」 
 

 
後書き
そして作者も再始動! Fire my Engine!(←違

小説版鎧武を読了して時系列が公式に決まったことでorzなあんだるしあです。
しかしそこをあえての時系列前倒しで罷り通るのがあんだるしあ流である(`ФωФ')カッ
よって碧沙は貴虎・光実&咲とはぎこちないままです。

次回からはナックルのターンです。 
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