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蒼穹のカンヘル

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三十一枚目

ドアから見えたのは幼女の土下座だった。

扉から二メートル程の位置で綺麗な…

って土下座じゃねぇなこれ。

合手礼になってるし…

まぁ、本人達は土下座のつもりなのだろう。

三指着いてないだけマシか。

閑話休題。

「何故に土下座?」

「白音を助けてくれたから…」

「姉様を助けていただいたので…」

「あっそ。とりあえず顔上げてくれ。
こっちもやりにくい」

二人が顔をあげる。

「さぁて、じゃぁ今後の事を話し合おうか」

部屋に入り、猫耳二人の前にあぐらをかく。

「ヴァーリとリーアちゃんは適当な所に…」

座ってくれ、と言おうとしたら二人は床に座って羽をもふり始めた。

俺の両脇だ。

「はぁ…。グレイフィアさん、少し神器使いますけどいいですか?」

「害がなければ」

カンヘルを召喚する。

「ロスト」

部屋の中にあったソファーの上にグレイフィアさん以外を転移させた。

ちょうど三人がけのソファーが向かい合っていたので片方にk猫耳二人、反対に俺とヴァーリとリーアちゃん。

「にゃ!?」

「…?」

黒歌は驚き、白音はぽかんとしていた。

危ないのでカンヘルを消しておく。

「これから話すのは君達姉妹の処遇についてだ」

「処遇…ですか?」

「そう、処遇。要するに君達がこれからどうするかだ。
俺のペットになるか、リーアちゃんの眷属になるか、それともここで御別れか…」

「ペット?そういう趣味にゃのか?」

そんな訳あるか。

「ちがう。俺は正式なイーヴィル・ピースを持ってないんだ。
だからペットといったが、俺の部下だ。
お薦めは二番目だな。
グレモリー家は眷属を大切にする悪魔だからな」

「御別れってのはそういう事かにゃ?」

「そのままさ。俺達と縁を切り、何処かへ隠れすむってこと」

「やめとくにゃ。また追いかけまわされそうだからにゃ」

黒歌を指差す。

「なお、黒歌のイーヴィル・ピースは無力化できる…つまりお前は悪魔をやめられるが、どうする?」

「そんにゃことできるのか?」

「できる。カンヘルの祝福の力を、原初の創造の権能を持ってすればな」

カンヘルは、始まりの神器なのだ。

神が手ずからセルピヌスを封じた錫杖。

全ての神器の祖にして原初。

無論、他神教系神器や封印系神器は別だが、ほぼ全ての神器の力を行使できる。

もちろん、セフィロト・グラールの力も。

「悩むにゃぁ~…」

「さて、ここで取り敢えずイーヴィル・ピースを抜いておくというのはどうだ?」

それならば色々考えやすくなるだろう。

「わかったにゃ」

「まぁ、俺がイーヴィル・ピースを一揃い欲しいだけなんだがな。
黒歌、手をだしてくれ」

黒歌が伸ばした手を、握る。

「いけるな、セルピヌス」

『無論だ』

俺の意匠に関係なく、俺の手と黒歌が結晶に包まれた。

「姉様!?」

「案ずるな」

黒歌が結晶化していたのはほんの数秒。

すぐに結晶が砕け、無傷の黒歌が出てきた。

砕け散った結晶は黒歌の胸の前で収束し、翡翠のビショップと化した。

「これで、黒歌は悪魔ではなくなった。
さぁ、好きな道を選ぶといい」

すると黒歌は数瞬悩んだ素振りを見せた。

「私は少年の部下になるにゃ。
ただ、その代わり白音をグレモリー家で預かって欲しい」

なるほど。

「リーアちゃん、聞いてた?」

「聞いてるわよ。その子を家で預かればいいんでしょ」

もふる手を一切緩めず、リーアちゃんが答えた。

少し不安だな…

あぁ、それと…

「要するに、仮に俺がお前の前の主と同族だった場合の保険って事だろう?
ただ、言いたくはないが、もしグレモリー家が前の主と同族だったとしたらどうする?
俺はグレモリー家がそんな事をしないとわかっている。
だが、お前がそう決めた根拠を聞かせて欲しい」

黒歌を真っ直ぐ見つめる。

琥珀のような深みのあるその瞳もまた、俺を真っ直ぐ見つめている。

「瞳を見れば、わかるにゃ。
少年と、その赤髪と、白龍皇の目は、真っ直ぐで純粋…悪意を持たない者の目にゃ」

「それだけか?」

「十分すぎる理由だと思ってるにゃ」

「そう言うのなら、お前を俺の部下にしよう。
白音はなにかあるか?」

白音の方を見ると、ピクンと体を振るわせた。

ちょっと怖がらせてしまったようだ。

「……時々。時々でいいですから、姉様に会わせてください」

「わかった。時々と言わず、毎日でもいい。
家族は大切にするべきだ。
それと、君が悪魔となってリー…リアス・グレモリーに仕えるか、それとも別の形を取るかは、リアス・グレモリーとよく相談するんだ。
いいね?」

「は、はい!」

「これで話は以上かな。あ、リーアちゃん。
今日だけでも黒歌と白音を同じ所に泊めてあげたいんだけど」

あいも変わらず羽をもふってるリーアちゃん。

「白音を泊めた部屋に泊めてあげるといいわ」

「じゃ、そういう事だ黒歌。あした迎えに来るぜ」

席を立つと、リーアちゃんが不機嫌そうにこっちを見つめていた。

「もう帰るのかしら」

「用事は済んだしいつまでも居たら迷惑でしょ?」

「リーアお姉ちゃん」

「ええ、客室は開いてるわ」

は?

するとヴァーリが通話魔法を展開した。

「もしもしバラキエルさん?
はいヴァーリです。はい…はい…
今日グレモリー家に泊まっていいですか?
…………………はい。篝もです。
……はい。明日には。
わかりました。それでは」

通話魔法を切ったヴァーリがピースサインをした。

「いぇい!」

「しゃーない…今日は御世話になるよリーアちゃん」 
 

 
後書き
中間テスト初日の登校中のバスの中から投稿! 
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