獣篇Ⅲ
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21 噂をすれば…?
まず、平子に伝言を済ませる。
_「今日の夜、話があるから指定のところへ来い、場所はこの間のところだ。時刻は…戌の下刻(午後10時頃)だァ。」
と、言っておいた。晋助の衣装も用意しておく。着替えも済ませ、一番隊長にトランシーバーから出動連絡をし、集合を船の甲板にした。
***
甲板に集まったあと、私たちはまず目標地へ向かった。容姿のおかげで、易々と内部に侵入できた。
_「只今戻りました。」
_「そうかぇ。では今から四天王会議を開く。故にそちらに護衛を頼めるかぇ?」
_「承知しました。」
_「あと、主に彼に先導をお願いしようかと。そちらはあまりこの土地になれておらぬだろうから、こやつに付いていくと良いぞ。」
_「ありがたき幸せに存じます。では、宜しくお願いします。」
と、彼に付いていくことにした。
***
会議の場所にスタンバイする。
直接華蛇を護衛するアイツに盗聴器を仕掛けておいたので、中での会話は丸聞こえだ。
司会進行の声がする。だが、超ビビッてるようだ。あの面子じゃあ、あり得るかもな。www
_「ゴミは消えなァ…」
_「大変だァッ!」
_「何だってんだぃ?こんなところ呼び出してぇ、ゴミの分別なら破った覚えないよォ?」
_「破ってるじゃないの。なんであたしたち美女二人に腐臭漂うゴミババアが混ざってるわけぇ?」
_「お前に言われたくないんだよ。」
_「フフフ)相変わらずそうで何よりじゃ。忙しいところ呼び出してすまんのぅ。だがちと待て。役者が一人足りぬ。」
次郎長だろ?大方。
_「次郎長かい?無駄だよ。ここ2、3年、表に姿見せたことないだから。」
_「どうせなら四天王全員で話がしたかったんじゃが。そちたちに集まってもらったのは他でもない、今この街が近年ないほど緊張状態であることは、そちたちも存じていよう?捨て置けば間違いなく戦争が起こる。そのような事態は、誰もが望んでないであろう?」
_「よく言うわねぇ~。一番派手にやってたのはアンタと次郎長のとこじゃないのよ。以前はこの街の賭場場を次郎長一家が取り仕切っていた。そこにアンタがカジノなんぞ勝手に建ててェ。」
_「それはそちも同じじゃろうてぇ、西郷。噂に聞いておるぞぇ?そちが攘夷浪士、落武者どもを囲っている、と。」
_「はぁ!?」
_「妙な格好をしているとはいえ、いずれも屈強な力をもった兵隊。そやつらの力を以てオカマ帝国を築きつつある、と。」
_「なに勝手なこと言ってんのよッ!あたしは行く場所を失った連中に居場所を…」
_「あぁ、次郎長一家の再三にわたる見か締め要求をはねのけ、もめているのは事実であろう?」
_「そしてお登勢?」
_「あたしゃそんなくだらない争いに興味はないし、参加した覚えもないよ?」
_「興味はなくとも、そちは昔からこの町の顔役。住民たちと密接な関係で繋がり、色々と相談に乗り、世話を焼く、と聞く。そのための駒が万事屋なる怪しげなものたち。だれのシマであろうとお構いなし。好き放題暴れまわっているらしいではないかぇ?」
_「知らなかったよ、あたしにそんな便利な手駒がいたなんて。ついでにこの街が、誰それのシマだ何だ、と勝手に区分けされてることもね。」
_「この町は誰のもんでもありやしない。あたしもあいつも、この町で筋通して勝手に生きてきてる。ただ、それだけさね。」
_「だがそれでは気に食わぬものもおる。そもそも我らはいつぞやから四天王などと呼ばれ、互いに牽制し合う仲になっておったか。全ては、他の勢力の台頭を気に食わぬ、ならず者の王がいた、ということか始まりではなかったか?我らは敵対する必要などない。我らの敵は、次郎長ではないかぇ?」
_「なるほどォ~。三人仲良く手を組んで、邪魔物の次郎長を消そう、ってかィ?」
_「アンタ…」
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