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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第百五十一話 宗教と妖怪その十三

「そうでしたね」
「うむ、しかし」
「しかし?」
「五十四年は江夏さんだな」
「何といってもですね」
「あの人は元々阪神だった」
 今もご自身は阪神に気持ちがあるらしい、やはりこのチームにいるとあの熱狂的な応援を受けるのがたまらないらしい。
「しかし阪神ではだ」
「優勝はですね」
「経験していない」
「それで広島で、ですね」
「最高の舞台を経験した」 
 その江夏の二十一球に他ならない。
「人の運命はわからないな」
「確かにそうですね」
「そして好きな相手もだ」
 井上さんは僕の目をじっと見て言ってきた。
「わからないものだ」
「そうですね、本当に」
 どうして僕を見てきたかわからなかったけれど僕も応えた。
「このことは」
「近鉄ファンだったということもな」
「昔はかなり弱かったですよね」
 僕はその近鉄の話もした。
「それもかなり」
「八条リーグの大阪バファローズと違ってな」
「あちらのバファローズは昔からそこそこ強かったですけれど」
 八条リーグで何度か日本一にもなっている、八条グループの中にある日本のもう一つのプロリーグだ。
「あちらのバファローズはですね」
「最初はパールズといってな」
「真珠ですよね」
「伊勢の真珠だ」
 近鉄沿線にある伊勢で獲れるそれだ。
「それがチームの名前だった」
「何かそれが」
「違和感があるか」
「はい、牛ってイメージですから」
 近鉄といえばだ。
「どうしても」
「それが変わった」
「バファローズにですね」
「しかしそれからも結構長い間弱かった」
 パールスからバファローズになってもだ。
「あのチームはな」
「それでやっとですね」
「その二連覇だ」
 五十四年、五十五年のだ。
「そこまで長かった」
「それで横溝先生もですね」
「その二連覇を御覧になってだ」
「世を去られたんですね」
「そうだ、藤子先生は三度観られた」
 近鉄の優勝、それをだ。
「そして藤田まことさんは四度だった」
「あの俳優の」
「あの人も近鉄ファンだったのだ」
「阪神ファンだと思ってました」
「お嫌いではなかった様だがな」
 阪神の方もだ、東京生まれだったけれどその生涯の殆どそして生活の拠点を大阪に置いていただけにだ。
「しかし第一に好きなチームはだ」
「近鉄だったんですね」
「あの人もな」
「そうだったんですね」
「そしてだ」
「藤田さんは四度ですか」
「ご覧になられた」
 最後の優勝、それもだ。
「幸いにな」
「そうですか、ただ」
「それでもか」
「井上さん近鉄のことをよくご存知ですね」
「君もだな」
「僕は一族の叔父さんにファンの人がいまして」
 しかもその人が僕にいつもよくしてくれてた。 
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