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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Epica14最後の大隊~Letzte Bataillon~

†††Sideイリス†††

今日もまた、なんの変哲も無い警邏任務だって思ってた。でも蓋を開けてみれば、仮面持ち3人との交戦っていう危険極まりないものだった。でも、みんなが頑張ってくれたおかげで、その戦果は局時代じゃ成し得られなかったものになった。

「――了解。これより被疑者2名を、教会本部へ連行します」

教会騎士団のトラバント団長への報告を終えてモニターを解除しつつ、ルシルとアイリによって凍結封印されてる仮面持ちと、ルミナとセレスによってこれまた凍結封印されてる仮面持ちを見る。ティーダ・ランスターと思しき砲手は、残念ながら逃してしまった。クラリスとトリシュの話によると、新手の敵(視認できなかったみたいだけど、まず別の仮面持ち)からの狙撃で、確保を妨害されたみたい。

(ティーダ一尉以外の狙撃使いって、ルシルの追ってるフィヨルツェン(エグリゴリ)くらいよね・・・)

ティアナには悪いけど、ティーダ一尉を奪還(でいいのかな?)はまた今度だ。とにかく、仮面持ちを2人も確保できたのは上々の戦果だ。4人の交戦時の感想から、プライソン戦役にて“聖王のゆりかご”を奇襲した2人の仮面持ちと判断した。

「ふぅ・・・お疲れ様、みんな」

「まぁこんなものでしょ、楽勝楽勝。屋内戦で馬鹿でかい斧なんて振り回そうとするから、私の拳を受けるのよ」

雷の仮面持ちをボッコボコにしたルミナ。翁の仮面も粉砕され、目出し帽も脱がされていてその素顔を露にしてる。想像していたよりフツ~な青年で、モブキャラっぽい。村人Aとか通行人Bとか、印象に残らないって感じ。

「ルミナはこう言ってるけど、実際かなり強かったけど? ルミナだって、コイツの放電に苦労してたし」

「・・・楽勝は言い過ぎたかもしれないけど、それでも快勝とは言えるものだったはず」

セレスに氷漬けにされた彼を運んできたルミナの防護服は所々が焼け破れてたし、ルミナ自身もかなり疲れを見せてた。ルミナをあれほどまでに追い詰められる奴なんて、そうはいない。やっぱこの男、名のある魔導犯罪者なんじゃ・・・。

「ルシルもルシルで、ズタボロだし・・・」

「屋内戦で、しかも設備に被害を出さないように気を遣ってたら、思いのほかダメージを受けてしまった」

「最後はちょっとキレて、ルシルもガンガン壊しながら仮面持ちを追い詰めたよね」

「右に左にと肩に穴を開けられたら、さすがの俺もムッとはする」

そんなルシルとアイリが捕まえた仮面持ちの素顔拝見は本部に戻ってからだ。今わたし達は、仮面持ち2人を護送するための車両待ち中。アンジェが取りに行ってくれてる輸送車もそろそろ来るはず。

「サポートスタッフが欲しい・・・」

トリシュが建物の壁にもたれかかりながら愚痴ると、わたし含めて全員が「同感」って頷いた。全員が戦闘組っていうわたしの隊オランジェ・ロドデンドロン。事務仕事は、教会騎士団に勤めてれば慣れるから問題ないけど、こういう車の運転など裏方が仕事が結構メンドい。

(特騎隊でわいわいやってた頃がもはや懐かしいレベルだよ・・・)

そんな特騎隊も現在は無期限活動停止ということで、ティファを始めとしたメンバーは、レティ人事課長の力添えで今は新しい配属先で頑張ってる。特騎隊のみんなには本当に申し訳なく思ってる。出来るだけ早く騎士団独立の真相を暴いて、母様と団長に独立の解除をしてもらわないと。でないとわたしもルシルも局に戻れないよ。

「お待たせしました!」

「ありがとう、アンジェ」

アンジェが輸送車に乗って戻ってきてくれたけど、護送車がまだ到着しない。だから複合ビル前、通行止めになってガラガラな9thアベニューで待機してるんだけど、「やはり視線が痛いですね」ってアンジェがげんなりした。このエリアCを担当する030陸士隊、その捜査班からはまぁ冷たい視線が。

――管理局法から脱退したのだったら、遠慮なく結界を張ればよかっただろうに・・・――

――まったく。壊すだけ壊しおって・・・――

――仮面持ちを2人も逮捕できた事は褒められるがな~――

ついさっき、老齢の捜査官たちがわたし達に掛けた言葉だ。でも言われて、あぁそうだった、って思っちゃったのも事実。次から都市部での戦闘時は、遠慮なく結界を展開させてもらおう。

――暴れるだけ暴れて、後の片付けは我われ局に任せてご帰宅か――

――さすがは戦闘特化のベルカ騎士。お片付けは出来ないと見える――

――次にこの区に来る際には、菓子折りの1つでも持ってきてもらいたいものだ――

んで、030陸士隊の面々から悪態を吐かれながら待つこと1時間。本部からやって来てくれた護送車に、氷漬けにされた仮面持ち2人を積み込む。そんな中、「奪い返しに来ませんね」って、周囲警戒中のアンジェが漏らした。

「ええ。今回確保できた仮面持ちは明らかに特別。奪還に来ると踏んでいたけど・・・」

アンジェに同意したトリシュ。わたしもそう考えて、待機中に喋りつつも仮面持ち2人から一切目を離さなかったし、“キルシュブリューテ”の柄からも手を離さなかった。でも待てど暮らせど奪還の気配がない。

「来ないのなら来ないで、その方が楽が出来るから良い」

「来たら来たで、奪還しに来た連中を返り討ちにしてまとめて逮捕すれば良い」

ルシルと一緒に積み込みをしてたクラリスとルミナがそう言いながら戻ってきて、遅れて戻ってきたルシルが「積み込み完了だ、シャル」って報告してくれた。というわけで、ここで出来る事はすべて完了。

「ルミナ、セレス、アイリ。3人は護送車に搭乗して、仮面持ち2人を監視。ルシル、悪いけど護送車の屋根の上で周囲警戒」

「はい? 管理局法からは脱退しているが、交通法は無視して良い訳じゃないぞ?」

「判ってるけど、ここで奪還されたらそれこそ最悪なレベル。奪還阻止は徹底しないといけない。反論は?」

「・・・無い。了解だ」

わたしとトリシュとアンジェとクラリスは輸送車へと搭乗。ルシル達はわたしの指示通りに護送車へと搭乗した。んで教会本部へと直帰する。本部までの間、細心の注意を払っていたけど、「結局、襲撃はなしだった」ってことで安堵する。

「ご苦労、オランジェ・ロドデンドロン」

「ここから先は、私が移送するから」

本部に到着すると、団長とプラダマンテが出迎えてくれた。わざわざ団長までもが出て来てたのがちょっと驚き。2人を護送車の元へと案内して、固く閉じられた護送室のドアを開ける。

「空間固定・・・完了」

――ラウムゲフェングニス――

プラダマンテが氷漬けにされてる仮面持ち2人に向かって右手を翳す。すると氷塊が折りたたまれるように小さくなって、完全に視界から消失した。誰も手を出せない空間の檻へと隔離する、スキルを用いた捕縛術式だ。ああなったら、いくら転移スキルでも奪還は出来ない。

「終わった・・・」

これで一息吐けるね。団長も「報告書は今日中に提出してくれれば良い。ご苦労だった」って、労ってくれた。去って行く2人を見送り終えた後は、「各騎、別命あるまで待機~」とみんなに指示を出す。

「シャワー、シャワーっと♪」

「私もお供します、ルミナ」

「待って、私も行く!」

ルミナとアンジェとトリシュは、詰め所内にあるシャワールームを目指して駆け出して・・・

「お腹空いた。食堂、食堂」

「私も~」

クラリスとセレスは大聖堂内にある食堂へ駆け出した。まったく、外出時に私服へと着替えてるんだから、大聖堂に騎士団の一員として入るんだったら、まずは団服に着替え直すのが筋ってものでしょうが。注意する前にクラリスとセレスの後姿はもう見えず。

「はぁ。・・・とりあえず、団服に着替えるためにルミナ達と同じ、シャワーで汗を流すのが先かな」

見えなくなったルミナ達の背中を追うように詰め所へと視線を向けたところで、「イリス~♪」ってわたしの名前を呼びながら駆け寄ってくるのは「母様・・・」だった。騎士団独立以来、どうもわたしは母様に余所余所しくなってしまってる。

「お帰り、イリス~! それにルシル君とアイリちゃんも! リナルドから話は聞いたわ。仮面持ちを2人を確保したって! お手柄じゃない!」

最初にわたしをハグした母様は、次にルシル、最後にアイリと続けた。わたしは「取調べについては何か?」って尋ねると、「な~んか他人行儀よね。お母さん、何かした?」って答えることなく、そう聞き返してきた。

「別に、なんでも・・・」

「・・・。ルシルく~ん。娘が今さら反抗期に入ったみたいなの~」

ルシルにしなだれ掛かりながら、甘ったるい声でそんなことを言い出す母様に、わたしは「もう! いい歳したオバサンが何やってんの!」って怒りながら引き剥がしに掛かった。

「オバ・・・!? オバサン!? 今、この娘は私をオバサンと言った!?」

「ええ、言った、言いましたとも! 母様は、父様とラブラブしてればいいの! ルシルとはわたしがラブラブするので!」

母様から取り戻したルシルの頭を、今度はわたしの胸に抱き寄せると「あらあら♪」って母様は微笑ましそうに笑った。わたしの知る母様の笑顔なのに、やっぱり独立の件で完全には信じられない・・・。

「母様・・・」

「ん? な~に、イリス?」

どうして独立なんかしたの?っていう、これまでに何度もした質問をまた口にしようとした自分を制する。

――これがひいてはミッドチルダの未来の為なのよ。今はそれだけを解ってほしいの――

返ってくるのは、ミッドの為、っていう言葉だけ。深く問い質してもそれ以外の答えは返ってこない。だからもう聞かないようにしようって諦めたんだから。だから「なんでもない」って言い放ちながら踵を返す。

「イリス・・・!」

「いろいろ疲れたから、シャワーを浴びて休憩に入るから。もちろんルシルやアイリも一緒。行くよ、2人とも」

「あ、ああ・・・」「うん」

ルシルとアイリが律儀に母様に「失礼します」って一礼して、そして母様も「これからも娘をお願いね」って、ルシル達に頭を下げてるのが判った。解ってほしい、じゃなくて、ちゃんと理由を教えてくれたら、わたしだってこんな態度を取らないでいいのに・・・。

「シャル、気持ちは判るけど・・・」

アイリが僅かに非難の色を付けてそう漏らした。でも「どこの家庭でも普通にある、母子の関係だよ」ってわたしも反論。反抗期の子供は、もっと酷い態度や言葉を両親にぶつける。ちょっと冷たい態度を取った程度、どうってことないよ。
それからシャワールームで汗を流して、私服から騎士団服へと着替えたわたしとアイリは、同じようにシャワーを浴びて私服から神父服へと着替えたルシルと合流して、食堂へと向かった。そこでは皿を何枚と空けたクラリスと、「どんだけ入るの、いつもながら?」って呆れてるセレスが居た。

「あ、イリス、ルシル、アイリ。お疲れ~」

「先に頂いてるよ」

セレスがわたし達に手を振ると、クラリスもショートケーキの乗ったお皿を掲げて見せた。わたしとルシルとアイリも、それぞれチーズ、チョコ、ストロベリーのケーキを注文して、クラリス達の側の席に着く。

「そういえば・・・ねえ、シャル。アイリが保護した、あの馬鹿野郎ってどうなったの?」

アイリにそう聞かれたわたしは、「そうそう。それの報告を忘れてた」って、フォークから一旦手を離した。んで、わたし達の着くテーブルと、セレスとクラリスの着くテーブルの上にモニターを展開させる。

「(ていうか、ルミナ達は今どこに居るわけ?)まず、アイリが保護した男は局に任せた。こっちは仮面持ちを確保できただけで十分な成果だからね。ビルに被害を出したその謝罪の意味をこめて、ね。で、アイツの正体だけど・・・」

モニターに表示させたのは、ここ最近管理世界で起きてる魔導師連続襲撃事件の記事。フリー、局、犯罪者、属する場所は違えど魔導師が質量兵器で殺害されてる事件が、確認されてるだけで38件。

「んで、使われた質量兵器って言うのが、ビルでルシルを撃った物だったの」

記事の写真から、男から携帯端末から手に入れた質量兵器の画像へと切り替える。ルシルが「デザートイーグルにアウターバレル仕様か。良いな」って楽しそうに頷いたからアイリが「一応コレで撃たれたんだからね? 解ってる?」ってジト目でルシルを睨んだ。

「しかし、ただの質量兵器・・・って面倒くさいな。コレ、ただの拳銃じゃないんだろ? 正直、防護服を容易く貫通して、俺の肩に風穴を開けられた時は焦ったぞ。怯えと混乱のおかげで肩だったが、冷静だった場合は頭を撃たれて即死も有り得た」

「あー、さすがに頭を撃たれたらルシルでも無理か~」

「クラリス、君は俺を何だと思ってるんだ?」

「・・・ゾンビ?」

「おい」

「クラリスの言いたい事も解るかな。だって回復力が桁違いに高いもん」

「あくまで俺は、治癒術式を使ってるからだぞ。自己治癒力は・・・まぁ、普通の人に比べれば高い・・・か」

「ゾンビ、ゾンビ~♪」

「子供か!!」

ルシルとクラリスの言い合いに「はいはい、続けるよ~」って制止を掛けて、話を本題へと戻す。男とその仲間の組織が、犯罪組織に売り捌いていたらしい。被害者の大半は犯罪組織にそれぞれ雇われてたフリーの魔導師で、組織間の抗争での死亡が最多だ。

「局に身柄を渡す前に軽く事情聴取したけど、あの男は下っ端で、この拳銃をどこから仕入れているのかは不明。でもその威力は、ルシルが実体験したとおりSSクラス魔導師の防護服すら貫通できる危険なものね。回収した拳銃類は本局の技術部に回すって聞いたから、これからもっと詳しい話が出てくると思う」

「そうか。捜査はこのまま局持ちになるだろうが、騎士団(オレたち)も細心の注意を払って今後の任務に当たろう」

そう締めたルシルに「うん!」ってわたし達は頷き返した。それからケーキを食べ終えて、お茶をお代わりしながら談笑してると、「ちょっと、ニュース、ニュース!」ってルミナ達が慌しく食堂に入ってきた。

「どうしたの、そんなに慌てて・・・」

「今、仮面持ちの連中が電波ジャックしていて!」

「とりあえず観れば判ります!」

アンジェが大き目のモニターをわたし達の前に展開する。そこには1人の仮面持ちが映し出された。仮面というか、悪魔然としたヤギの被り物を頭に被っていて、服装も学ラン・マントじゃなくて軍服らしいもので、片側だけのマント――ペリースを左肩に掛けてる。右隣にも同じ軍服だけど、ペリースを掛けてない男の、太陽の仮面持ちが1人。左隣には一対の翼が円を作った仮面の女性が1人。

『――改めて宣言しよう。我われ最後の大隊(レッツト・バタリオン)は、管理世界に存在する犯罪者を根絶やしにするため、今日この日、管理・管理外世界の全犯罪者に宣戦布告する』

変声の魔法か機械か、どちらにしろ声を変えているから年齢的なことは判らない。ただ男性って言うのは、その体つきで判別できる。しっかし、犯罪者が犯罪者を根絶やしにする、なんて馬鹿な発言も中々ないよね。

『が、その前に、管理局と教会騎士団にも宣言しておこうと思う。我々の邪魔はするな。局はただでさえ人員不足だったことに加え、主力として多かった騎士の大半が無期限休職という形で、教会騎士団へと戻った。さらに言えば組織内の不祥事で、もはやいつ沈むとも知れぬ泥舟』

酷い言われ様だ。でもその発端を生み出した騎士団の一員として、教皇である母様の娘の1人として、申し訳なく思ってる。特にチーム海鳴のみんなには・・・。

『管理局法によって、犯罪者への必要以上の攻撃も許されていない。騎士団も、管理局法から脱退したとはいえ、騎士道に則り相手が犯罪者であっても非道な真似は出来ないだろう。だからこそ! 我々が貴君らに代わり、悪として犯罪者に死の鉄槌を下す。我われ最後の大隊が! 文字通り最後の犯罪者となろう!』

仮面持ちのリーダーらしき男――山羊頭(仮)がそう宣言すると、カメラがグッと後ろに引いた。そしてモニターに映った映像に、「な・・・!?」ってわたし達は絶句した。仮面持ちがずらっと整列してるんだけど、その人数が半端ない。

「私やルシルが捕まえた翁と天狗の仮面持ちだけで、ざっと100人はいるんだけど・・・!」

「他には、怪人、狐、恵比寿、十字架、逆五角形、上向き矢印、逆五芒星、太陽、円形などなど・・・。500人は明らかに超えてる・・・!」

ルミナとトリシュが戦慄する中、「確かに大した数じゃないか。だが、あの中で本物の強者はどれほどだ?」ってルシルが漏らした。これまでに何回か仮面持ちとは戦ってるけど、余裕で倒せる奴もいれば、今回みたくルシルやルミナですら苦労する仮面持ちもいる。あの中には前者はどれくらい居てくれるだろう。

『恐怖せよ、犯罪者。悪には悪で、暴力には暴力で、罪には罪で、我ら犯罪者は、貴様ら犯罪者を共食いする。ではごきげんよう、時空管理局ならびに聖王教会騎士団の諸君』

山羊頭が踵を返して、そのまま暗転したところで、『そうそう。騎士団の諸君。本日君らが捕らえた我が隊員だが、彼らの忠誠心には頭が下がる』って、暗い画面の中から山羊頭がそう言った。直後、ドォーン!って爆発音が本部内のどこかで、しかも2連続で起こった。

「今のどこから!?」

「襲撃なの!?」

「確認しに行くぞ!」

他の騎士やシスター達も行動を開始。わたし達も「行こう!」っていうことで、食堂を飛び出したわたし達は黒鉛の上がる「収容施設・・・!」へと駆け出す。

「ねえ、今の爆発ってやっぱり・・・!」

「ああ! 忠誠心と言っていた! おそらく・・・」

「自爆・・・!」

第52管理世界アンバーでの軌道エレベータ占拠事件を思い返す。今回捕らえた槍の騎士と同じ、エレベータでルシルと交戦していた騎士は、捕まると覚悟するや否や自爆した。ということは、最後の大隊のメンバーはアンドロイドかサイボーグってことになるはずなんだけど・・・。

(ティーダ一尉はどうなんだろ・・・? クイント准尉みたいにサイボーグに改造されてる? それともメガーヌさんみたく、人のまま何か埋め込まれてる・・・?)

とにかく、黒煙どころか火まで上がり始めた収容施設へ向かってひたすら駆けた。

・―・―・―・―・―・

「どいつだよ、屋内でならルシリオン・セインテストを狩れるって言ったのは? もろに反撃されて、危うく本物の天狗である俺が捕まるところだったぞ」

「おいおい。こっちは元とはいえ、最強の拳闘騎士だったマルスヴァローグだぞ? ギリギリ視覚外で、サブの翁と交替できたから良かったものの・・・」

そう文句を垂らしているのは、天狗の仮面を付けた男。対するのは翁の仮面を付けた男。共にルシリオンやアルテルミナスと激闘を繰り広げていた者だ。その発言から、負けると判断すると転移スキルを用いて、捕まっても問題ない同じ仮面持ちと入れ替わったようだ。

「SSクラスの元管理局員を殺害した仮面持ちを、教会騎士団が撃破した。なんてマッチポンプを狙っておきながら返り討ちだからな。融合騎とシスターの転移スキルが無かったら、俺たちが捕まっていた」

「まぁ捕まっても問題なかったろ? 何せ――」

2人がスッと被っていた仮面を外す。1人は青い短髪に若干垂れた茶色い双眸。1人は茶色の短髪に糸目。今でこそ学ランを着ているが、その2人は間違いなく銀薔薇騎士隊の槍騎士ブレオベリスと斧騎士グリフレットだった。

「「大隊の幹部は教会騎士団の一員だから!」」

大きな笑い声を上げ、自らに課せられた任務の失敗を笑い飛ばした。そこに「なにやら楽しそうですね」と女性が声を掛けてきた。2人はビシッと佇まいを直して、「お疲れ様です! フィヨルツェン殿!」と敬礼した。そう、“堕天使エグリゴリ”の1体、フィヨルツェンだ。両翼の仮面を後頭部へ回している。そのデザインの仮面を持っているのは彼女ただ1人であるため、最高幹部の地位だ。

「それで、何か面白い話でもあったのですか? わたくしも混ぜてください」

顔は微笑んでいるが、薄く開いた目は一切笑ってはいなかった。それで2人は、自分たちが不謹慎な言動をしていたのだと自覚し、「申し訳ありません! くだらぬ愚見です!」と勢いよく頭を下げて謝罪した。

「そうですか。・・・団長より、幹部はホールに集合するよう指令が下りました。早々に移動してください」

「「了解であります!」」

フィヨルツェンから承った指示に従うべく、2人は急いで集合場所であるホールへと駆け出した。それを見送った彼女の背後から、「いよいよね」と別の女性の声がした。フィヨルツェンは振り返ることなく、「ええ。長かった・・・」と万感の思いを乗せてそう返した。

「シュヴァリエルですら倒せてしまったお父様です。今回の一騒動の果て、わたくしをきちんと裁いてくれるでしょう」

「フィヨルツェン。あなたとこうして言葉を交わすのも、これで最後になると思う」

「そうですね。その次は、あなたとなるでしょう、リアンシェルト」

フィヨルツェンに声を掛けたのは、最後の大隊の本拠地であるココに居るのがおかしいと言える、時空管理局本局に勤める“エグリゴリ”の1体、リアンシェルトだ。リアンシェルトは「そうだね・・・」と頷き返した。

「・・・では、これにておさらばです、リアンシェルト。お先に逝かせていただきます」

「さようなら、フィヨルツェン。よい最期の闘いを」

フィヨルツェンとリアンシェルトは共に別れを告げ、そうして2体はそれぞれの路へと歩み始めた。
 
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