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第四章
「まずは」
「ううん、そうなんだ」
「はい、キャサリン嬢への告白を続けられて下さい」
「諦めたら駄目なんだ」
「そうすれば今は駄目でもです」
「やがてはだね」
「努力は報われます」
そうなるというのだ。
「ご安心下さい」
「成功している者は必ず努力をしている」
リチャードは友人達が帰りもうすっかり飲み終えられ食べ終えられた空のティーセットを見つつこうも言った。
「そうだね」
「恋愛も然りです」
「実らせるには努力が必要である」
「六月は五月の雨があってこそです」
オリバーはイギリスの諺も出した。
「ありますね」
「そうだね、五月の仕込みがあってね」
水というそれがだ。
「六月がある」
「人も然りですね」
「努力という仕込みがあってね」
「実りがありますね」
「だから僕の恋愛もだね」
「励まれることです」
こう主に言うのだった。
「宜しいですね」
「わかったよ、じゃあ僕自身も人間として磨いていって」
「そしてキャサリン嬢に対しても」
「紳士としてです」
このことは守らないといけないというのだ、実際に彼は紳士でありたいと思い常にそうした行いを心掛けている。
「アタックされていくことです」
「僕の恋路を応援してくれていると思っていいのかな」
「どうぞ」
そう思っていいという返事だった。
「そちらも」
「言うね、ではね」
「はい、それではですね」
「僕は励むよ」
実際にという返事だった。
「自分を磨くこと、この家の主としての行い、経営者としてもね」
「そしてですね」
「紳士である様にして」
自分を磨くことと被っているがキャサリンとのことも考えてそのうえであえてこのことも言ったのである。
「そうしてキャサリン嬢にもアタックし続けて」
「そしてですね」
「君が言う意味がわからないけれど」
今は無理だというその意味がだ。
「それでもね」
「はい、今は五月です」
「雨を降らせる時期だね」
「存分に降らせて下さい」
こうリチャードにアドバイスをするオリバーだった、そして実際にリチャードはキャサリンに告白やプレゼントを続けた。
キャサリンは見事な黒髪を後ろで上げて奇麗にまとめている、ぱっちりとした大きな紫の瞳はケルト系でも稀なもので実に神秘的だ。その神秘的な瞳に相応しく妖精を思わせる楚々とした顔立ちであり肌は白い。背は一六〇程で露出の少ない昔ながらの黒を基調として白をあしらったメイド服をモデルの様に着こなしている。
その彼女にだ、いつも告白をするが。
「申し訳ありませんが」
こう言われるのだった。
「旦那様のそのお言葉はお受けする訳にはいきません」
「またそう言うのかい?」
「はい」
そうだというのだ。
「今は」
「やれやれだね、もうこれで百二十一回目なんだけれどね」
告白もプレゼントもだ、どれも断られているのだ。
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