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龍宮童子

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第五章

「ですが幸せをもたらしてくれるので」
「邪険にしたらいけないのね」
「若し追っ払ったりしたら幸福が逃げるそうです」
「座敷童と同じだな」
 道明はみちるの話を聞いてやはり東北にいると言われているこの妖怪を思い出した。
「それじゃあ」
「そっくりよね」
「男の子と女の子の違いがあってもな」
「それでその龍宮童子がお店に来てくれる様になったから」
「うちの売り上げも伸びたんだな」
「それで道明も大学に行ける様になったのよ」
 こう道明に話した。
「そうなったのよ」
「成程な」
「よかったわね」
「ああ。まさかそんな妖怪がうちに来てくれるなんてな」
「有り難いわよね」
「全くだよ」
 道明はみちるにしみじみとなっている口調で答えた。
「そうした妖怪もいるんだな」
「そうね」
「変にどうして来てるのとか聞かなくてよかったわ」
 鈴音は自分がそうしてきたことに今ほっとしていた。
「若し聞いていたら」
「妖怪が来なくなっていたかもですか」
「知れなかったわね」
「別に出て行けとか言ってないですよね」
「騒いだり暴れたりはしないから」
 だからだというのだ。
「特に」
「それじゃあ別にです」
「その龍宮童子もなの」
「出て行かないです」
「そうなのね」
「はい、ですがこれからも」
 みちるは鈴音だけでなく道明にも忠告する様に言った。
「接客は注意して」
「あの子については」
「幾ら汚くてもか」
「出て行けとは言わないことです」
 こう言うのだった。
「絶対に」
「そうだな、身なりでお客さんを判断するのもな」
 道明も店の人間として言った。
「よくないしな」
「ええ、だからね」
「これからもか」
「龍宮童子にアイスミルク出しましょう」
「そうしていくな、俺が店にいる時に来ても」
「そうしていきましょう」
 みちるは道明に笑顔で言った、そしてだった。
 鈴音が店にいる間の平日の昼ばかりに来る客だったが店としてその男の子に普通に接していた、そのせいか店の売り上げはいいままだった。
 それで道明は大学に行ける様になりみちるも同じ大学に行けた、しかもろくでなしの道明の父は見事潜伏していた広島で麻薬の密売人をしていたところ売りものの覚醒剤に手を出して重度の麻薬中毒になったうえで幻覚症状を起こし道で全裸で中毒症状で死んでいたという連絡が入った。道明達は疫病神も去りそのことにも喜んで日常を過ごしたのだった。幸せになったその日常を。


龍宮童子   完


                   2018・4・26 
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