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ランス ~another story~ IF

作者:じーくw
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第5話 ホモ焼き鳥


 それは勇者ゲイマルクとコーラの2人とゾロの邂逅の約1時間後の事。


 
「ひーーーーーっっ!?」


 長田君が……エールたちが勇者ゲイマルクのいる洞窟へと到達した。

 つまり、無茶な選択をしたと言う事。云わば いきなりラストダンジョンへ足を踏み入れた初心者冒険者たち、と言う場面だ。
 
 
 

 そしてこれには訳がある。

 ここでエールたちのこれまでの冒険について語るとしよう。
 とある目的地へと目指す過程で エールは 自由都市にある村の老人に 盗賊団の退治の依頼を受けた。

 その盗賊団のボスは魔王ランスの子を名乗るランスJr.……もとい、ただの腕っぷしがそこそこある山賊 ドギ・マギ。

 一切の手加減もせずエールは これでもか! と言わん勢いで叩きのめした。
 
 その結果、攫われていた娘たちを救出。更に自称元ランスの付き人ロッキー・バンクを仲間にする事ができ、まさに出足好調な冒険成果だった。

 冒険初心者がいきなりそれなりの数を有する盗賊団を一網打尽にし、村の娘たちを助けたともなれば、エールも自信がついたりしても不思議ではないだろう。

 でも、いきなり翔竜山へ舵を切ったのはエールではなく長田君だったりする。

 
 長田君は、盗賊団との戦い。潜入の時に 一緒に戦い、軈て命欲しさに逃げて、そして 逆に盗賊団の人質になり、最後はエールに助けられ 感謝と謝罪をした。

 初めての仲間で、逃げちゃったけど最後は戻ってきてくれて、本当の友達になった。時折、長田君をからかう様な仕草はするものの エールは本当に楽しそうに話している、と年長者のロッキーは見て取れていた。ロッキーはドギ・マギに騙されて その護衛をしていたのだが、偽物とわかったので 山賊の壊滅と同時にそのまま脱退。 ランスに忠誠を誓っている様なものだから、エールに付いていくことは決めていたので そのまま一緒に行動を共にする様になった。

 と余談はこれまでにして、ここからが本題。

 最初は エールの母 クルック―のアドバイス通り 初めにリセット・カラー、そして ヒトミを仲間にする為に砂漠のシャングリラへと向かおうとしていた。山が1つ抉れた大怪獣クエルプランの道を初めて目撃して驚き、そしてモンスターを蹴散らし……と順調に進んでいたのだが、男の子モンスターの中でも特に大きなモンスター、デカントの群をあっけなく撃破するエールを見て、何を血迷ったのか。


『もうエールの強さって、世界最強なんじゃね? 激ツヨで激ヤバじゃね? 魔王ランスくらい余裕で行けんじゃね??』


 という訳でサクっと方向転換してしまったのだ。
 ロッキーも魔王については知らない訳はないから止めれば良いものの、エールはランスの子供だから酷い事はしないと思う……と止めず、そのままの流れで翔竜山へと向かう事になったのだ。



 そして、今は勇者ゲイマルクのいる洞窟へとたどり着き 長田君が悲鳴を上げた場面だ。



 洞窟へと入っていった長田君が ぴゅーーっと逃げ帰ってきた。

「どどど、どうしただすか! 長田君!」
「長田君大丈夫? 身体、割れてない?」
「だっはーー、身体は割れてねーよ! ってか、オレの事 何度も割るのはエールだけだろっ 今んとこっ!? って、そんんん、な事よりっっ! ば、化物! 化け物が中にいるーーっっ!!」

 長田君が指を指した先にいるのは…… あの動く死体事 勇者ゲイマルクだった。
























「予想的中、と言った所かな」
『嫌な予感ってよく当たってたからなぁ。……比較的に。昔っから』

 気配を殺し、そして姿も透明化魔法で完全に消して3人を見守るのはゾロ。
 本当に此処に来ている事を知り、呆れる事極まれりだが それ以上の感情がゾロの中で渦巻いていた。

「………」
『あの子の所へ行きたい。か?』
「っ……。ま、まぁ ああいうのを見たら やっぱり傍にいてやりたいというか……。そんな気持ちがあってな」
『面倒見が良いからな』
「これは絶対に主の性格の影響だろう。九割九分九厘、ほぼ間違いなく」

 仲間達と共に冒険をする姿を見て、彼らの手助けをしたい、と身体をウズウズさせてしまっているのはゾロ。基本的にソロ活動をしているのだが、色んな者達と接し、そして世界を見て回り、色んな経験をしてきた。その中で徐々に影響され、良い意味で変わってきたのだ。

『否定はしないさ。……でも、まだ早いと思う。あの子に会うのはまだ』
「……それも判っている。それに これはエールの冒険だ。ふふ。主の場合、会う事事態に躊躇してそうだがな? 立場を考えればわかるというものだ」
『っ……。べ、別に……。いや 違うな。合わす顔がないって思っているのかもしれない。幾らあの子が特別(・・)とは言え、クルック―も同意しているとは言え。……正直心苦しい』
「また本当の意味で再会はできる……。勿論他の者達も同様だ。そして出会った時に、償えば良い。私も付き合おう」
『……悪い』

 暗い気持ちをさっと払いあげ、エールたちを見守る。
 あの勇者は兎も角、従者コーラが彼らに妙なことをしないか……の確認の意味もあったりした。

 だが、結構真面目に脅したのが功を成したのか、時折引きつく顔を見せるものの 一瞥しただけで、コーラはゲイマルクと共に下がっていった。

『……コーラは相当怖がってたからなぁ。同情はしないが』
「ふむ。同感だ。何か企む表情だったが 一先ずは大丈夫だろう」
『わざわざ消される様な真似はしない、か。それが懸命ってものだな。では、これからはどうする?』
「一応、上の確認もしておくつもりだ。………アメージング城にまでは近づけない様にした、と言う言質の確認にな」


 この場は もう大丈夫だ、と判断した所で ゾロはこの場を後にした。



 
 暫く山中を歩き、中腹を超え もうじき魔王が住むアメージング城へとたどり着く途中まで来た所で ゾロは立ち止まる。

「この辺り……か。クルック―が用意したという門が出現するのは」

 何もないただ比較的幅の広い山道に目をやった。
 その脇には不自然な石碑があり、そこには何かを埋め込む穴が5つ程空いていた。

『此処に5つのオーブか。そして場所は夫々の国に1つずつ。まさに世界をめぐる大冒険か』
「王道の、な。その過程で沢山経験して、仲間を増やして。……世界を楽しむ。順当に行ってもらいたいものだ」
『行くさ。……あの子達なら間違いなく』

 石碑を横切り、更に奥へと進もうとしたその時だ。

「うぉぉいっ!! そこ、退いてくれーーーっ!!」

 丁度真上の空から声が聞こえてきたのは。
 何かが近づいてくる気配は確かに感じていた為、直撃する事は無かったが、姿を見て思わず距離を取ってしまうのは仕方がない。
 
 堕ちてきた人物は、そのまま大きな音を立てて頭からしこたま強打した。普通であれば即死してもおかしくない衝撃なのだが、生憎堕ちてきた人物は普通じゃない。魔人の使途だから。

「うぉぉー、いててて。くっそ、あの石くれやろうめ。あんな高さから落しやがってよぉ。流石に頭がくらくらするぜ」

 炎を操る使途 戯骸。 魔人ザビエルの使途である。
 ザビエル自体は消滅しているから、厳密には野良の使途と言えるだろう。

「悪いな、兄ちゃん。上手くかわしてくれて感謝する……ぜ?」
「…………」

 目が、合ってしまった。
 ゾロにとっても、その内にいる人物にとっても合いたくなかった。

 数ある使途の中でも、極めて厄介と言えるのがこの使途だから。力よりもその性格……性質にあった。

「うっっおおぉぉぉーーーー!! 来た来た来たぁぁぁぁ!!! とうとうきた! オレ様の時代!! まさか、まさかぁぁぁ、オレ様が惚れた2人目がこんなところにぃぃぃ!!」

 ずっきゅーーんっ!! と効果音を盛大に山に響かせながら、目をハートにさせて迫ってくる炎の使途。その燃え上がる情熱を胸に、ゾロの胸に飛び込んでくるが、勿論 それを許容した覚えはない。

「ベイベー――っ! あーーいたかったぜぇぇぇ!!」
「氷の矢」
「どあちゃあああーー!!」

 掌から打ち出されるのは氷系 初級魔法の氷の矢。炎を操る使途と言うだけあって、弱点は水・氷であるのは見ての通りだ。カウンター気味に氷の矢を受けて 吹き飛んでいく戯骸だったが、衝撃を後ろへと逃がして一回転し上手く着地。

「感動の再会に酷い事すんなよーー。オレの二番星っ! いやいや、今は一番星だ! 再会を祝してオレと一発やろうぜ!」
「知るか阿呆。……よるな来るな近づくな」

 因みに説明しておくが、この使途は現在男。死ねば炎と共に転生するフェニックスの能力を持つ極めて稀有な存在である戯骸は、その転生の力よりも最悪の属性を持つ。この男はホモなのだ。たまに女の体で転生してくる事もあり、どちらでもイケるらしいが、男状態での登場が凄く多いので、どっちも嫌なのは言うまでもない。因みにランスは女状態の戯骸と…………、とこれ以上は言わないでおこう。

「そう硬い事言うなよぅー。硬いのは股間だけにしとこうぜぇ~♪」
「情操教育に宜しくないな。氷の牢獄でも作ってまた閉じ込めておくか」
「うーーわーー、それ止めてくれっっ!  めっちゃ大変だったんだから!!」

 本気でビビって嫌がってる様だ。さっきまで隙あらば飛びかかってくる姿勢だったのだが 一気に大人しくなったから。

「はぁ……。戯骸。お前はランスを狙いに此処まで来た、と言うのか? 私は確か、死国に居住を構えてる、と以前訊いたのだが」
「とーぜんよ。オレぁ 今のランスを認めてねぇからな。ぜってー人間に戻す! って決めてるからよぉ!」
「それで、サテラかサイゼルか…… どちらかに突き落とされた、と。魔王になってもあの男はお前がトラウマらしいな」
「っはっはー、流石だぜ。突き落としたのはシーザーとイシスだ。サテラのヤツはよぉー、律儀にも今のランスの命令を守ってるんだよ。アイツが惚れてんのは別の男だってのによ。……なぁ? 罪な人だぜ」
「……私に言うな。何度も言っているだろう。人違いだ」

 ため息とともに、手をパタパタと振るゾロ。
 だが、煙たがるのはまだ早い。確認する事が出来た。

 それは コーラの時にも思ったが、マスクも帽子もない状態であっさり判明されてしまっている。その理由の調査だ。

「どうやら、お前にも私が判るらしいな。……この顔(・・・)はまだ世間には知られてない、と思っていたのだが」
「馬鹿にしないでくれよ? オレぁ アイツ(・・・)に似た男はぜってー忘れねぇ。ランスの事もぜってー忘れねぇ。いわば、愛の奇跡だ」
「気持ち悪い」
「っはっはっは! そう言うな。確かに顔は違うが、感じと言うか感覚と言うか……はっきりとは分かんねぇけど、なーんかわかんだよ。フィーリング的なヤツ?」

 言ってる事矛盾している気がするが、使途や魔人は人間と比べて感覚が鋭いのも事実だから、それで判明させたのかもしれない。今の内に知っておいてよかった情報だ。
 
「むぅ……」
「………」

 戯骸とゾロは 殆ど同時に後ろを振り返った。
 何かが来た気配を感じ取ったからだ。当然、それは見知った相手。戯骸にとっては先ほどまで戦っていた相手。魔人のガーディアン。シーザーとイシスの2人だ。

「戯骸、山カラ追イ出ス。サテラ様ノ命令ハ、絶対ダ」
「…………」

 すでに臨戦態勢になってる2人。
 懐かしささえ覚える光景だが 今は再会を懐かしむ……と言った感じではない様だ。と言うよりそんな事はしないが。

「戯骸。お前が連れてきたんだ。……責任を取れ」
「おう! 責任とって後ろの処女貰ってy「絶対零度」あんぎゃーーー!!」
 
 両手から放たれるのは 氷系最上級広範囲殲滅魔法。
 対軍使用と呼ばれる魔法の1つだが、ゾロは圧縮に圧縮、極めて圧縮し、周りに被害が及ばない様にぎゅーーっと詰め込むと、そのまま戯骸に向かってボールでも放る様に、撃った。極限まで圧縮された冷気の爆弾は戯骸に着弾すると、そのまま冷気爆発。氷漬け……にはならない様だが、威力を吸収しきれなかった様で、シーザーとイシスの方まで吹き飛んでいった。

「ナッ!!」
「!!」

 突然吹き飛んでくるのは、2人にとっても予想外だった様だ。それでも頑張ってキャッチしたのだが、魔法の威力が強くて、そのまま吹き飛び…… 翔竜山から がらがらがら~~ と落下していった。




「突然の攻撃はイシスとシーザーには悪いとも思うが 分類が人間である以上、私とは敵対関係だ」
『あぁ……。こればっかりは気の毒に思ってしまう。……勿論、ガーディアンの2人だけだがな。あのホモ鳥は知らん』
「ふふ。主よ。JAPANの悪夢が蘇ったか?」
『…………思い出したくないから言わないでくれ』

 
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