獣篇Ⅲ
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8 男は美人に対して、つい甘い顔をする。
しばらくすると、着いたとの連絡があった。連絡を取って、私のいる船をくっつけることになった。
ドッキングが完了して、ドアから彼らが入ってくる。
武市が作戦を説明した。私が晋助と一緒に会談し、万斉、また子が直属の護衛、そして武市が外で見張りをするそうだ。私はまた神威と会わねばならない。
作戦通り、私たちは神威の待機する部屋に向かった。ドア係の男たちが恭しく頭を下げ、私たちが来たことを告げた。
_「鬼兵隊の高杉殿と零杏殿がいらっしやいました。」
中から、お入りください、と声がする。ドア係がドアを開けて、私たちを中に通した。
席について、会談が始まる。晋助の横に万斉、私の横にまた子がついた。
_「さて、それでは会談を始めると致しましょう。ではまず団長から。」
そうだネ、と言ってお付きの者に資料を渡すように言って、もらった資料を私たちに配った。女性が一人、写っている。大層な美人だ。だが、見るからに彼女は天人のようだ。
_「今配った紙に印刷してあるこの女を捕まえてほしいんだヨ。なんにしろこの女はオレたち春雨の資金を持ち逃げして地球に逃げ込んでるらしくてネ。地球人のシンスケたちならオレたちよりも地球について知ってるだろうから、調べてきて欲しいんだナ。お願いしてもいいカナ?」
いつもの張り付きの笑みである。
晋助が口を開いた。
_「…あァ。調べて捕まえてくりゃァいいのかァ?」
_「ウン、というよりかは、居場所を教えてくれるだけでいいんだ。あとはオレたちで何とかするからサ。」
でね、零杏。と神威が私に呼びかける。
_「この後話したいことがあるんだけど、いいカナ?」
なんだろう、まさかさっきのことがバレたのか?
_「…ええ。いいですよ。」
_「オレもいさせてもらうぜェ?構わねェか?」
_「ウン。もちろんいいヨ。」
場所を変えて、話をすることになった。その部屋には私と晋助、そして神威の三人だけである。また子たちは、万が一の事態に備えて外で待機している。
_「さっき、シンスケたちにお願いした例の件、誘き出すのを主に零杏にお願いしたいんだよネ。」
煙管を咥えて、私は尋ねる。
_「なぜ、私に?」
_「なぜって、零杏は化けるのが上手だからサ。」
紫煙を吐き出しながら応える。
_「それはどういう意味?私は確かに化けるのは上手いけど、天人になるほどの技は持ってないわ。」
いや、やろうと思えば実際できるけどさね。
すると神威はまたまた~言って、言葉を続けた。
_「上手いからこそお願いしたいんだヨ。出来るだろ?零杏なら。」
_「上手く化けられる自信はないけど、要はあの女を捕まえて、アンタたちのところに連れていけばいい、って訳でしょ?」
_「…まぁネ。でも、捕まえるって言うよりは、居場所を教えてもらう、って感じの方がいいナ、オレのしては。」
_「でもね、神威。そういう仕事は遠足の原理と同じように、連れてくるまでが仕事よ?わかる?」
_「分からないナ、オレには。」
と、満面の笑みで答える。
_「そう。じゃあ、今回で分かってもらうわ。遠足は、家から出て、家に着くまでが遠足なのよ。だから我々は、華蛇を見つけて連行してくるまでが仕事になるの。だから、依頼内容に彼女を連れてくる、という項目を入れてくれない限り私たちはその依頼を受けることはできないわ。」
ごめんなさいね、と煙管を咥える。
神威はしばらく考え込むと、ようやく口を開いた。
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