NEIGHBOR EATER
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EATING 24
「あ、二宮………………さん」
「ぶっふぉぉ!?」
ランク戦で太刀川をイージスとSPT-28(マジカルマスケットライフル)とAPT-87-scc23(リボン)のコンボでハメ殺した後、二宮に会った。
「翼………楽しいか」
「え?面白くない二宮?」
事実隣の太刀川が腹が捩れる程笑っている。
「俺をネタ要員扱いするな」
「面白いから却下」
なおこのやり取りかなりやっている。
城戸司令すら笑わせた鉄板だ。
「に、にのみや…おまっ…www」
「太刀川ランク戦だ」
二宮が太刀川を引きずってランク戦ブースへ向かう。
「がんばってねー二宮………さん」
「ぶはっ!www!」
「主様、あまり二宮様をからかわれては可哀想ですわ」
唐突に後ろから声が聞こえた。
どうやら見られたらしい。
「いーのいーの。二宮を弄れるヤツはそんなにいないから俺が少しくらいやり過ぎても大丈夫」
「二宮先輩かぁ…まぁ、怖いよね…」
おや、ハルがそんな事を言うとは。
「二人みたいに小さい頃から圧倒的な力を持ってるならまだしも、あのプレッシャーは一般人にはキツいよ」
「逸般人が何言ってんの?」
「誰が逸般人なのか教えてほしいなぁ…」
「お前だよ強化外装骨格」
「姉さん以外に誰がいると言うの?」
「夜架ちゃぁ~ん!翼君が虐めるぅ~!」
「あ、はい、がんばってくださいませ」
「み、味方がいない…!?」
「迅なら防衛任務中だぞ」
「なぜ迅様の名前が?」
「知らないのか?ハルと迅が
女王と犬の関係って噂」
「事実無根だよ!?」
「まー、何時も何か企んでいそうな迅がハルの言いなりになってたらねぇ…」
「あら、私は翼君が姉さんと夜架さんの『御主人様』っていう噂を聞いたけど?」
「間違ってませんね」
「間違ってはないね」
「待てやこら」
「自分と同い年の少女に『主様』と呼ばせているのだから仕方ないでしょう?」
「まぁ…それは…」
夜架が、俺を『崇拝』しているのは、知っている。
だけどそれは、夜架の心の安定に不可欠な物で…
「よいではありませんか」
「まぁ…貴女がそれでいいならいいのだけど…」
side out
「さっきはああ言ったけど、あれでいいのかしら姉さん?」
「どうしようもない…ってところよ」
夜架と翼がランク戦をしている間、雪乃と陽乃は翼と夜架の話をしていた。
「夜架さんのあれは、依存よ」
「そこは『依存』ではなく『忠誠』と言うべきね…」
「どちらも同じよ」
「うーん…依存…忠誠…いえ、違うわね…
何て言ったらいいかな…うーん…『愛』?」
「姉さんの口から愛なんて言葉が出るなんて、明日は雪かしら」
「失礼ね」
「それで、姉さんは保護者としてどう思っているの?」
陽乃は少し考え込んだ。
「ねぇ、雪乃ちゃんには、あの二人ってどう見える?」
「どうって…夜架さんが翼君に依存しているとしか言いようが無いわ…」
「ええ、そう見えるでしょうね」
「まるで違うとでも言いたげね」
「近い言葉で言えば、『共依存』が近いかな。
互いに互いを心の拠り所としている。
夜架ちゃんは翼君へ己を捧げることで、安心感を得る。
翼君は頼られ、支えられる事で自己証明をしている」
「まるで親子ね…」
「でもあの二人は『親の愛』をしらない。
自己愛をしらない。だから、自分へ向ける愛を他人へ向けてしまう」
「それは私が聞いて良いことなのかしら?」
「貴女も清輝隊の一員なんだもの。
でも、あの二人は、とてつもなく臆病なの」
「臆病?」
「そうよ。あの二人は他人へ踏み込もうちしない。
失うのが怖いから。失敗する位なら、今の関係でいたいから。
あれだけ相手を愛しながら、あと一歩の所で踏み出せない。
『主従』という関係を楯にしてね」
そこで、ランク戦10本が終わった。
結果は7-3で翼の勝ちだった。
「じゃ、私は夜架ちゃんと代わって来るね」
「頑張って、姉さん」
夜架がブースから出て来て、陽乃と二言三言話して、雪乃の方へ歩いて来た。
「お疲れ様、夜架さん。素晴らしい剣捌きだったわ」
「ありがとうございます雪乃様」
「夜架さん。貴女、姉さんと翼君の関係をどう思うのかしら?」
「主様と陽乃様の関係でございますか?」
「ええ、私はチームに入って日が浅いから…
それに家では見られない姉さんを知りたいの。
それにあの姉さんが認めた男の事もね」
「左様ですか。お二方の関係は、上司と部下であり、姉と弟であり、母と子であり、恋人であり、他人でございます」
「続けて」
「私見ですが、初めは陽乃様は自分に無い力に憧れておりました。
ですが共に暮らす内、それだけではなく恋慕や庇護欲も芽生えた。
ですが互いに他者を心の底から信じる事が出来ぬ故、互いの気持ちを告げる事が出来ないでいます」
「貴女は姉さんと翼君が両想いだと思うのかしら?」
「はい。互いの想いに理由をつけ、目を反らしています」
「その理由を教えて欲しいのだけど、いいかしら?」
「主様は、陽乃様と雪乃様を助けたと聞いていますが、きっとその時の恩に漬け込んでいる、という負い目があるのでしょう。
逆に陽乃様は自分では神のごとき力を持つ主様に釣り合わないとお考えです」
「そう、姉さんがね…」
「従者として、主様の想いが成就して欲しいとは思っていますが、私が口を出せる事ではありませんので」
「そうね…ところで貴女は翼君の事をどう思っているの?」
「主様は、私の全てです。目の前で家族が殺されて立ち竦んでいた私を助けてくださいました。
主様はその時私を認識してすらいなかったでしょう。
ですが、私はあの時、空高く舞う主様の姿を忘れる事はありません」
「貴女も、彼に助けられたのね…」
「はい。雪乃様は主様をどうお考えで?」
「私は…私は彼に恋心を抱く事は無いわ。
私にとって彼は、それこそ神のような、手の届かない存在よ」
「左様ですか…」
その後は翼と陽乃とは関係の無い事を話していた。
そうして、十本が終わり、今度は夜架と翼が入れ代わる。
「足用トリガーなんて使っているのは貴方くらいよ翼君」
「面白いんだしいいじゃん。それにイージスは強いよ」
AT-3カスタムver5イージス。
現在の翼は全身のレイガストのスラスターでの曲芸じみたラッシュだ。
「それって貴方が好きなアニメの真似なのでしょう?」
「本当はもう少し欲しいんだけどね。
AGE-FXとか赤椿とか格好いいしね。
欲を言えばスパイダー無しでビットみたいにできればいいんだが…」
「ごめんなさい。何を言っているか理解できないわ」
「聞き流して良いぞ」
「そうさせてもらうわ」
モニターの中で、夜架と陽乃が斬り結ぶ。
しかし剣の才能で劣る陽乃は、即座に離脱し、バイパーを放つ。
しかし夜架がその全てを斬り落とした。
「あの二人の事、どう思っているのかしら?」
「夜架もハルも今のスタイルで問題ない。
今度から隊にランクが付くらしいが、まぁ、俺達なら中位から落ちる事も無いだろう」
「そういう事ではなくて。
貴方1日の大半をあの二人と一緒に過ごしているのでしょう?
恋愛的に何かないのかしら?貴方だってもうすぐ中学生、そういった事に興味はあるでしょう?」
すると翼が雪乃を見てクスリと笑った。
「雪乃もそういう話をするんだな…」
「貴方は私を何だと思っているのかしら」
翼はモニターの中の陽乃を指差し…
「アレの妹」
「ええ、そうね…確かにアレの妹よ」
雪乃がため息を吐きながら続けた。
「話を戻すわ。姉さんと夜架ちゃんをどう思っているの?
夜架ちゃんなんて貴方に全てを捧げる程の気概よ」
隣の翼は何かを言おうとして、口をつぐんだ。
「言っていいわよ。彼女には言わないから」
「…………俺でいいのかな」
「は?」
「夜架は俺を主と呼んでくれてるけど、夜架に主って呼ばれるほど、俺は立派な人間じゃぁない」
翼がトリオン体を解除した。
羽と光輪は隠していた。
そして、手の中に小さな光の珠を産み出した。
「この力は、顔も知らない誰かの命で出来てる。
俺はその事は気にしない。
でも、そんな奴があんな真っ直ぐな二人に慕われていいのかな…」
刹那、雪乃が翼の頬を打った。
ランク戦の観戦に来ていた隊員の視線が、二人に集まる。
「貴方が自分を貶める事は、貴方が助けた私達を蔑ろにする事よ」
「すまん。雪乃」
「わかればいいわ」
「ひっぱたく必要性の説明は?」
「『カッとなってやった反省はしている後悔はしていない』よ」
周囲の影響で『イイ』性格になりつつある雪乃の返しに、翼は肩をガックリとおとした。
「はぁ…まぁいいや」
翼が自分の頬を一撫ですると、雪乃につけられた紅葉が消えた。
「それで、貴方の躊躇いとかは抜きにして、二人をどう思うのかはっきり言葉になさい」
「言葉に…か…そうさな…」
少し考えて、翼が口をひらいた。
「俺には勿体ないくらい、頼もしくて、強くて、美しい。
あの二人を庇って死ねるなら、迷わず死ねる」
それを聞いた雪乃は笑みを浮かべた。
『そんなの、「愛してる」って言ってるような物じゃない』
「そう、それが聞けて良かったわ」
「という事です迅さん」
「ありがとね、雪乃ちゃん」
「何を企んでいるんですか」
「今回ばかりは何も。ただ、今日君が彼等に話した事で、彼等に亀裂が入る事は阻止できた」
「やっぱり企んでいたのね」
「翼は、幸せにならないといけない。
アイツには、英雄の最期を迎えさせるわけには行かないんだ」
「……がんばってください」
雪乃が踵を返し、迅に背を向けて歩き出す。
「雪乃ちゃん」
「なんですか」
「君が結ばれる相手は翼君じゃない。
だけど、君はきっと幸せになるよ。
あと、毒を吐くのはほどほどにね」
「ご助言心に留めておきます」
後書き
ストックがきれました。
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