夢幻水滸伝
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第四十四話 山と海その十五
「ではです」
「次は東海と北陸になる」
「そうなりますので」
「それで向こうに何か動きがあれば」
「既に兵は集めています」
東海と北陸の境にである、厳密に言えば伊勢長島城と岐阜城のすぐ西そして北ノ庄城に多くの兵を入れているのだ。その数およそ十万である。
「ではです」
「即座にやな」
「その十万で、です」
「向こうに動きがあれば攻める」
「そうしてもらいます」
「攻める星の奴もやな」
「移動の術ですぐに来てもらいます」
有事にはというのだ。
「既に兵は置いています、ではです」
「後は率いる星の奴だけやな」
「そうです、そしてその将ですが」
「僕とやな」
「中里君です」
太宰は中里も忘れていなかった。
「貴方はいつも通り軍師として働いてもらいます」
「そして将はやな」
「貴方です」
中里自身への言葉だ。
「そうしてもらいます」
「わかったわ」
中里も素直に答えた。
「そうしてもらいます」
「ほなな、しかし内政の星の奴も揃ったけどな」
「休む間もなくですね」
「内政も戦もあるか」
「政は常に動くものなので」
太宰はぼやきかけた中里にクールに告げた。
「ですから」
「こっちも常に働く必要があるか」
「そうなります、ではです」
「ああ、働くわ」
「そうして頂きます」
「それでや、僕が人材を得た話やけどな」
中里は彼等の話を終えた二人に言ってきた。
「話してええか?」
「ああ、どんなんや?」
中里はその芥川にすぐに聞き返した。
「一体」
「ほな今から話すで」
「頼むわ」
「私からもお願いします」
そっと茶と羊羹を出しつつだ、太宰も言ってきた。
「面白いお話の様ですから」
「ほなな」
芥川も応えた、そうしてだった。
まずは茶を飲んだ、そのうえで話そうとするがここで志賀と田中は太宰に対してこう言ってきたのだった。
「政にかかりますが」
「その前に宜しいでしょうか」
「芥川さんのお話をお聞きして」
「面白そうなので」
「はい、どうぞ」
太宰は二人に温厚な声で答えた。
「それだけの余裕はあるので」
「ではです」
「聞かせてもらいます」
「ほな二人にもお茶と羊羹やな」
芥川はお茶を飲みつつ笑って言った。
「あと自分と中里にもやな」
「そうですね、では」
太宰は芥川の言葉に頷いてすぐにだった、彼等にもそして自分にも茶と羊羹を出した。そのうえであらためて芥川に言った。
「これよりです」
「羊羹も食べてな」
「お話をお願いします」
「ええのう、羊羹は最高や」
「先日お饅頭にも言っておられましたね」
「お団子にもな、実は甘いものも好きやねん」
酒も飲むがだ。
「どっちもな」
「星の者は誰もがそうですね」
「そういえば全員大酒飲みでしかも甘いものも好きやな」
「特に棟梁は」
綾乃はとりわけというのだ。
「左様ですね」
「綾乃ちゃんはまた別格やろ」
「とりわけお酒は」
「ほんまのざるやからな」
綾乃の幾ら飲んでも全く酔わない体質のことも話すのだった。
「綾乃ちゃんは」
「はい、そして甘いものもお好きなので」
「おはぎとか団子とかな」
「確かに私達はどちらもという人が多いですね」
「ほんまやな、ほな羊羹食べつつな」
その甘いものをというのだ。
「話すで」
「頼むわ」
中里は芥川に笑って応えた、そうして太宰達と共に彼等の話を聞くのだった。
第四十四話 完
2017・12・1
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