儚き想い、されど永遠の想い
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483部分:最終話 永遠の想いその五
最終話 永遠の想いその五
真理が婆やにだ。声をかけたのだった。
「それでなのですが」
「義幸様ですね」
「あの子も一緒に」
「はい、わかっております」
彼女とずっと一緒にいた婆やはこのうえなく優しい顔になってだ。そうしてだ。
一旦玄関のところを離れた。そうしてだ。
すぐに義幸をおぶってきてだ。こう真理に言ったのである。
「お待たせしました。それでは」
「持っていて下さるのですか」
「そうして宜しいでしょうか」
「はい」
何かと察していたのか。今の真理は我が子を背負おうとはしなかった。
そしてだ。後ろにいる婆やに言ったのである。
「お願いできますか」
「義幸様をですね」
「はい」
その通りだと。微笑んで述べたのである。
「お願いしますね」
「そうしてですね」
「三人で行きます」
微笑んでの言葉だった。
「今から」
「では。参りましょう」
義正も言いだ。そうしてだった。
三人、婆やが抱いている義幸も入れてだ。その三人でだ。
扉を開けそのうえで外に出た。外にあるのは春の輝かしい光だった。
その輝かしく優しい光の中をだ。三人は進む。そうしてだ。
まずはだ。義正の兄達がだ。顔を見合わせてからだ。
笑顔でだ。それぞれ言ったのである。
「では行こうか」
「はい、義正達と共に」
「この晴れ舞台をだ」
「共に進みましょう」
こう話してだった。まずは彼等だった。
そして義美が来てだ。続いてだ。
真理の兄と姉達が足を進め義正と真理達の両親達もだった。春の中に出るのだった。
そしてだ。その彼等の背を見てからだ。佐藤がだ。医師と看護婦に声をかけた。
「ではです」
「今からですね」
「桜をですか」
「はい、見に行きましょう」
こうだ。二人にも声をかけたのである。
「では今から」
「はい、それでは」
医師が笑顔で応え。そのうえでだ。
彼はだ。看護婦にだ、彼も声をかけたのである。
「行こうか」
「そうですね、では」
「遂にこの日が来たから」
それでいいというのだった。そうしてだった。
彼等も春の中に出た。そのうえでだ。
春の中を歩いていく。ふとだ。
義正の前に白い蝶々が出て来た。それを見てだ。
彼は目を細めさせてだ。共にいる真理に話したのである。
「春ですね、本当に」
「はい、蝶々もいますね」
「冬はいませんでした」
「ですが春になると」
「こうして出て来てくれたのですね」
「全ての命が出て来ています」
義正は言っていく。そうしてだ。
彼女にだ。また言うのだった。
「冬に眠っていた命達がです」
「眠っていたのですね」
「はい、眠っていたのです」
ただだ。そうしているだけだというのだ。冬の間はだ。
それでだ。真理に話すのだった。
「それだけなのです」
「そして春になる」
「目覚め。肉体がなくても」
「それでもですね」
「肉体を手に入れて目覚めたのです」
死んだのではなかった。そうだったというのだ。
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