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儚き想い、されど永遠の想い

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464部分:第三十六話 遂に来たものその五


第三十六話 遂に来たものその五

「ですから。何処か他の場所にもです」
「行ってそうしてですか」
「楽しみませんか?」
 これが真理への提案だった。
「春を。もっと」
「春をですか」
「はい。如何でしょうか」
「そうですね。それでは」
 義正のその誘いを受けてだ。真理は暫し考えだ。
 そうしてだ。こう答えたのである。
「そうさせてもらいます」
「では。何処に行かれますか」
「梅は見ましたし」
 その梅を見つつの言葉だった。
「他の春のお花を」
「春のですね」
「何がいいでしょうか」
 花と言っても色々だ。それで義正に問うたのである。
「一体何が」
「では蒲公英はどうでしょうか」
 真理の言葉を受けてだ。義正は。
 この花を出したのだった。
「その花は」
「蒲公英ですか」
「はい、これは如何でしょうね」
「そうですね。蒲公英もまた」
「春ですね」
「春のはじまりに咲く花ですから」
 だからだというのである。
「見に行かれますか」
「そうですね。ただ」
「ただ?」
「蒲公英でしたら」
 三人が今いるそのだ。緑の絨毯を見回す。
 そこに蒲公英達が咲いている。既にだ。
 その花達を見てだ。真理は義正に言うのだった。
「もうここにありますね」
「そうですね。既に」
「ではここで見るのはどうでしょうか」
 少し離れた場所にあるがそれでも見つつだ。微笑みながらの言葉だった。
「蒲公英達を」
「そうですね。それはいいことですね」
「ではその様に」
「それにですね」
「それに?」
「見れば蒲公英達だけではありませんね」
 義正もその緑の終端を見回す。そうしての言葉だった。
「他にもありますね」
「お花だけではないですか」
 見える花は蒲公英だけではなかった。その他にもだった。
「その他にあるものは」
「それは見た時にお話させてもらいます」
「見回る時にですね」
「はい、その時にです」
 義正も温かい目で話す。
「お話させてもらいます」
「わかりました。それでは」
「まずは食べましょう」
 お握りもおかずもまだ残っていた。義正の話はそこに戻ったのだ。
「たっぷりと」
「そうですね。お弁当はまだ多く残っていますね」
「お握りはいいものです」
 そのお握りを手にして食べながら言うのだった。
「手にしているだけで何か」
「落ち着きますね」
「不思議な食べものだと思います」
「日本人はやはりお握りでしょうか」
「そうも思います」
 実際に食べながら答える義正だった。黒い海苔に覆われたその白いお握りを食べてだ。
 
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