魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~
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Epica10今日からあなたがわたしのパートナー~Sacred Heart~
†††Sideアインハルト†††
学院祭の準備によって削られた練習時間を得るため、睡眠時間を削ってしまったのがいけなかった。お昼を向かえ昼食を終えたところで、これまでの疲労が一度に押し寄せてきて体勢を崩してしまいました。そこで昼食をご一緒させてくださったフォルセティさんのご家族であり、クラウスの記憶の中にも登場した、かの守護騎士ヴォルケンリッターのお1人である湖の騎士シャマルさん、元オーディンさんの融合騎であるアイリさんからドクターストップを受け、保健室で休眠を取ることに。
(そのおかげで、今の私の体調は万全です)
とはいえ2時間も眠ってしまったので、休憩時間を返上してクラスの出展物に尽力しました。クラスメイトの方たちからは、そこまでしなくてもいいよ、と言われましたが、それでは私の気が治まらず、休憩は取らなかった。
(ヴィヴィオさん達には悪い事をしていまいました・・・)
時間が合えば一緒に学院祭を回りましょう、と誘われていたのですが・・・。それはまた来年に持越しですね。
「お疲れ様~!」
「お疲れ~!」
17時となったことで全出展物は終了し、全校生徒が校庭に集合する。そして薄暗くなった空の下に立ち上る魔法の聖火を囲み、学院祭を締めくくる聖歌斉唱を行う。その様子は教員、本日来てくださった一般のお客さんも観覧する。
「あ・・・」
手持ち無沙汰だった私が意味もなく辺りを見回していると、「ヴィヴィオさん?」達の後姿を見かけた。休眠から今までヴィヴィオさん達とは話が出来なかったので、ちょうど良い機会ですし会いに行こう。初等科と中等科の他の生徒も談笑していますし、私が彼女たちと一緒に居てもきっとおかしくはないはず。生徒たちの中を通り抜け、もう少しでたどり着くといったところでヴィヴィオさんが1人離れて行ってしまいました。
「(何かあったのでしょうか・・・? イクスさん達にご挨拶くらいはしておこう)・・・イクスさん、フォルセティさん、コロナさん、リオさん。昼間はご迷惑をお掛けしました」
「「「アインハルトさん!」」」
「もう体の方は大丈夫なのですか?」
「はい。お蔭様で。・・・昼間はすみませんでした。せっかくお誘いしてくださったのに・・・」
ヴィヴィオさんには改めて謝罪をしよう。イクスさん達は笑って許してくれたので、私は「あの、ヴィヴィオさんはどうしたのですか?」と話題を切り替えさせてもらった。するとコロナさんがササッと側に寄って来まして、「お手洗いです」と耳打ちしてきました。男子であるフォルセティさんが居るのですから、ヴィヴィオさんに気を遣ったのでしょうが・・・。
「トイレでしょ?」
フォルセティさんがサラッとそう言ったので、「だからデリカシー!」とコロナさんとリオさんに小突かれてしまい、さらに遅れてイクスさんからも「フォルセティ。そろそろ学習しましょう」と叩かれてしまいました。
「あいたた・・・。トイレは生物なら当たり前の生理現象なのに・・・。なんで・・・?」
「普段は察しとか良いのに・・・」
コロナさんが大きく溜息を吐く中、私はここへ来た目的である「ここでセレモニーをご一緒してもいいですか?」と聞いてみた。すると「もちろんです!」と満面の笑顔で受け入れてくれた。
「ありがとうございます。・・・っ!?」
そうお礼を述べた直後・・・
――あなたはどうか良き王として国民とともに生きてください――
私の意識を持っていきそうなほどに強烈な記憶のフラッシュバックが起きた。またもフラリと倒れ込みそうになったのですが、今度はしっかりと踏み止まった。ですがそれだけでも「大丈夫ですか!?」と皆さんを不安にさせてしまうもので・・・。
「ええ、大丈夫です。ただの立ちくらみですので、問題ありません」
「でも・・・」
「シャマルお姉ちゃん達はまだ居てくれてるから、呼んでくるよ!」
そう言って駆け出そうとするフォルセティさんの右手を掴んで「大丈夫ですから・・・! そこまで大事にしないでください」とお願いする。
――この大地がもう戦で枯れぬよう・・・青空と綺麗な花をいつでも見られるような、そんな国を作ってください。オーディン先生をはじめグラオベン・オルデンの皆さんのためにも・・・――
――待ってください! まだ話は・・・! ゆりかごには僕が乗り・・・オリヴィエ! 僕は・・・!――
また記憶のフラッシュバック。クラウスの記憶の中でも最も辛く悲しいオリヴィエとの永遠の別れ・・・。何故今、この記憶が・・・。クラウスの元より去るオリヴィエの背中が、先ほどのヴィヴィオさんの背中と重なってしまう。
(これは何・・・? 何かの暗示・・・? ヴィヴィオさんの身に何か・・・?)
湧き上がる嫌な予感に私は「すいません、ちょっと・・・!」と、説明するのも省いて校舎へと駆け出す。ただの杞憂であればそれで良し。行かずに後悔しないより行っていち早く安心する方が良い。お手洗いということは一番近いトイレを選んでいるはず。そう考え廊下を駆け、そして到着したトイレの中へと入った。
「な・・・っ!?」
視界に入ったのは、複数人の男性に拘束されているヴィヴィオさんだった。布で目隠しや猿轡をされていて、背の高い男性の肩に担がれようとしていた。一瞬で頭の中が沸騰する。
「何をしているのですか!!!」
ほぼ無意識に魔法陣を展開し、魔力を練り上げる。成すべき事はヴィヴィオさんの救出、そして未遂になるとはいえ誘拐犯である男性たちの撃破。両拳をグッと握り込み、軸足に力を込めていざ突撃と言うところで、「待て、アインハルト!」と制止の声を掛けられた。
――チェーンバインド――
その言葉に床を蹴るタイミングをずらされた私がたたらを踏んだ直後、蒼い魔力で作り出された鎖状の拘束魔法が男性たちの四肢に巻きついたと同時、私の側をフォルセティさんが通り過ぎて行く。
「アインハルトさん!」
「っ! はいっ!」
拘束魔法から逃れようと体を捩っている男性たちへと私も駆け出す。身長が2m近い男性の体を駆け上がったフォルセティさんが肩に担がれていたヴィヴィオさんを抱き上げたかと思えば「アインハルトさん、お願い!」と私に向かって放り投げた。私はヴィヴィオさんを抱きとめ、すぐに目隠しと猿轡を取り払った。目を瞑ったままのヴィヴィオさんに、さらなる不安が襲い掛かってきた。
「ヴィヴィオさん!」
そう呼びかけるとヴィヴィオさんはゆっくりとですがまぶたを開けてくれた。そして始めは焦点の合っていなかった瞳でしたが、僅かな間の後しっかりと私の目を見つめ返してくれた。
「ア、アインハルト・・さん・・・? アインハルトさん!」
「大丈夫です! もう大丈夫です、ヴィヴィオさん!」
私に力強く抱きつくヴィヴィオさんを抱きしめ返す。 そんなヴィヴィオさんにフォルセティさんも「無事で良かったよ」と優しく肩に手を置いた。ヴィヴィオさんは「フォルセティ・・・! ありがと~!」とフォルセティさんにも抱きついた。なんといいますか、ちょっと残念と言うか・・・。
「さてと。彼らも助けてあげないとな」
そこに私を制止した方、フォルセティさんのお父様であるルシリオンさんが、今なおもがいている男性たちに歩み寄った。
「運が悪かったな、君ら。操作されて誘拐事件を未遂とはいえ起こすとは」
「操作・・・?」
「そうだよ、アインハルト。怒りで捉えていなかったのだろうが、彼らの瞳は正気の色を灯していない。明らかに操作されている。緊急時とはいえ操作された被害者である彼らを殴り倒してはちょっと可哀想だ」
だからルシリオンさんは私を止めたのですね。改めて男性たちを、正確には目を見れば、目に光が宿っていないのが見て取れる。危うくルシリオンさんの言うとおり、被害者を殴ってしまってしまうところだった。
「確保せよ」
「聖王を」
「「「聖王を確保せよ」」」
男性たちがまるで壊れた機械のように、聖王を確保せよ、と繰り返し始めた。するとルシリオンさんが「はぁ。やっぱりあの連中の仕業か」と呆れ果てた風に溜息を吐きました。そして拘束を一旦解いた後、手錠のような拘束魔法で改めて男性たちを拘束し、それぞれを魔力の縄で繋げました。まるで複数のペットを散歩に連れ出す飼い主さんのよう。
「とりあえずみんなに連絡だな」
彼らをトイレの外へと連れ出しつつ、ルシルさんが全体通信を繋げ、ヴィヴィオさんの身に起きた事を伝えました。
『ヴィヴィオ! ヴィヴィオに怪我とかは!?』
「フェイトママ、落ち着いて。わたしは大丈夫だから。アインハルトさんやフォルセティ、ルシルさんが助けてくれたから」
『そ、そう・・・。それなら良いんだけど・・・。ごめんね、ヴィヴィオ。ルシル達もありがとう』
『アインハルトちゃん、フォルセティ、それにルシル君も、ヴィヴィオを助けてくれてありがとう!』
ヴィヴィオさんのお母様方からの感謝に私は、「い、いえ! 当然の事をしたまでですので!」と慌てて返した。本当に偶然のことでしたし、実際に助けたのはフォルセティさんとルシリオンさんでしたし。
「それでシャル。君はシスター・プラダマンテに連絡を。彼女は学院の警備主任なのだろう? 今後のヴィヴィオの警護などについて話し合いをしておいた方が良いと思うんだが・・・?」
『了解。そっち方面はわたしが全面的に担当するから。ヴィヴィオ、安心してね』
「え、あ、その・・・はい・・・」
『それでルシル君。被疑者はどないしたん?』
「これから連行する。が、実行犯として立件するのも難しいかもしれない。操作されていたようで、操作される前後、その最中の記憶はないだろう」
『そうか。操作した犯人にはたどり着けへんね~』
「いや。目星は付いている。連中は口を揃えて、聖王を確保せよ、と言っていた。つまり・・・」
『『『『仮面持ち・・・!』』』』
緊張感がすさまじいです。それからルシリオンさん達はあれよこれよと話を進め、それを眺めていた私たちは、聖歌斉唱に間に合わずにそのまま学院祭を終えてしまった。
・―・―・―・―・―・
ザンクト・オルフェン魔法学院の学院祭が終了した後、聖王教会の最精鋭部隊である銀薔薇騎士隊ズィルバーン・ローゼの隊長にして、学院の警備主任であるプラダマンテ・トラバントは、どことも知れぬ通路を早歩きで進んでいた。
「ちょっとそこのあなた」
「あ、これは騎士プラダマンテ。あの、どうかなさいました?」
プラダマンテに声を掛けられた白衣姿の科学者然とした男性が僅かに怯えたように応じた。それほどまでにプラダマンテのかもし出す雰囲気がまずいものだと察することが出来たからだ。いったい何を言われるのかと怯えている。
「エルフテは今、どこに居るか知らないか?」
「え?・・・あぁ、11号ですね。ご案内します」
「どこに居るか教えてくれるだけで結構よ」
「あ、そうですか。では。11号から17号は現在、格納庫にて待機中です」
「そう。・・・あぁ、それともう1つ。エルフテはここ最近、外出をしたか?」
「はい。昨夜の22時から本日13時まで外出許可を提出。これを総長が受理しました」
「ありがとう。邪魔をした」
プラダマンテは男性より目的のエルフテというモノの居場所を聞き、通路を早足で進んだ。そうしてたどり着いたのは、両側に開くタイプのスライドドア。表面には格納庫を意味するHANGARと刻まれている。彼女が一歩踏み出すとドアは開き、長い通路が現れた。両面の壁にはいくつものスライドドアがあり、その中の1つ、11を意味するⅩⅠと記されたドアの前に彼女は移動。
「エルフテ!」
ドアがスライドして完全にドアが開く前にはプラダマンテが怒気を含んだ声でそう叫んだ。が、ドアの奥に広がる光景に彼女は一瞬息を止めはしたが、「こんな悪戯! 火に油を注ぐつもりか!?」とさらに怒声を上げた。室内に広がっていたのは無数の死体の山で、そのどれもがココに勤める者に酷似しているからだ。
「そう怒らないでくれ、ちょっとした茶目っ気だ」
死体の山より少年のような老人のような特徴的な声が聞こえてきた。そして突如として死体の山が消失し、代わりに60cmほどの小さな紳士が現れた。人間の子供のようだが、大きな猫耳や長い尻尾が生えていた。服装はシルクハット、燕尾服、ジャケット、シャツ、スラックス。色は白で統一されている。右手にはステッキを携えている。そう、二足歩行の猫だ。猫が紳士服を着て、偉そうに佇んでいるのだ。
「なぜ、勝手に聖王陛下を拉致しようとした? 貴様の身勝手な行動のおかげで聖王陛下の護衛を増やす結果となった。そもそも拉致などという強硬手段を採るなど・・・! プライソンの暴走からこっち、計画は修正を重ね続けてばかり・・・!」
「はっはっは! そう怒っていてはしわが増えるぞ?」
「その口を私のスキルで永遠に失くそうか、幻惑の融合騎エルフテ?」
「おぉ怖い怖い。・・・我ら新生イリュリア融合騎が母の手によりこの世に生み出され早5年。私だけが、ずっとこの殺風景極まりない施設に閉じ込められてきた」
エルフテは寂しそうに室内を右に左にと歩き回る。プラダマンテはそんな彼を目だけで追いつつ、彼の独白を聴いている。
「強化の融合騎・改のツヴェルフ。盾の融合騎・改のドライツェーン。治癒の融合騎・改のフィアツェーン。風の融合騎・改のフュンフツェーン。炎の融合騎・改のゼヒツェーン。氷の融合騎・改のズィプツェー。雷の融合騎・改のアハツェーンテ。我が弟妹はプライソン戦役時に実戦投入され、今なお外界で活躍していると言うのに。手柄を立てたいと焦るのも仕方なくないか?」
「だからと言って・・・いきなり陛下を拉致しようという考えに至るのが不思議で仕方がない」
「いずれ陛下を招くのだろう? 早ければ早いほど良いと思うが? 暴れるのであれば私が洗脳すれば良い。そのためのパートナーの居ない幻惑の融合騎なのだからな! はっはっは!」
「はぁ・・・。とにかく、これ以上は勝手な行動を慎んでもらいたい」
「承服しよう! しかし私の活躍の場も用意してもらいたいものだな! 退屈で退屈で仕方がないのだ!」
「その時まで待っていなさい」
そう言ってプラダマンテはエルフテの部屋より退室した。
†††Sideヴィヴィオ†††
学院祭の翌日。本来なら学院祭の後片付けに追われる日・・・になるはずだった。フォルセティ達はいつもどおりに登校して、今まさに片付けをしてる最中だと思う中、わたしだけは今日はお休みです。それも昨夜、わたしが誰かに操られてた男の人たちに襲われちゃったから。
(恐怖で何も出来なかった。たぶん、普段どおりに動けたなら絶対に捕まってなかったのに・・・)
フェイトママは、それが当たり前なんだよ、って言ってくれた。経験が無い事に遭遇したら混乱するのが当たり前なんだって。なら一度経験したなら、もう二度と同じ失敗を犯さないようにしないと・・・。だからわたしは庭で日課のトレーニングをした後、シャワーを終えて自室のベッドで仰向けに横になってるんだけど・・・。
(フォルセティ達が頑張って片付けしてる中で、ってなるとちょっと罪悪感がある・・・)
とまぁ学院祭で一般のお客さんが敷地内に入ってきてたとはいえ、セキュリティが高い学院内で高町ヴィヴィオ誘拐未遂事件が起きちゃった事で、教員やシスター達どころか聖王教会自体が大慌て。未遂とはいえ誘拐事件が起きちゃって、しかもわたしが聖王家の血筋というわけですごい事になっちゃった。学院内で登下校の中でも護衛を付けようなんて話になっちゃってるみたい。
(わたしの事を心配してくれるっていうご厚意なんだけど、ちょっと息が詰まっちゃいそう・・・)
一応フォルセティとアインハルトさんが護衛として、出来る限り側に居てくれるって話になってる。そしてルシルさんとシャルさんの所属する特騎隊は、男の人たちを操った真犯人らしい人が属してる組織を、こっちから打って出て壊滅させるって言ってた。そうすれば、もっと早く自由に外を出歩き回れることが出来るだろうって。
「ヴィヴィオ、ちょっと来て~」
新着メールが無いかな~って携帯端末の画面を見てると、なのはママがわたしを呼んだから「はーい!」って答えて部屋を出る。階段の踊り場まで来ると、「忙しい中、ありがとう♪」ってフェイトママが誰かにそう言ってるのが聞こえた。階段を下りてリビングに入って、お客さんが誰なのかを知った。
「すずかさん! それにセッテも!」
リビングのソファに座っていたのは、ママ達の親友のすずかさんと、すずかさんが任されてる第零技術部の一員のセッテだ。2人はわたしに「こんにちは」って挨拶をしてくれたので、わたしも「こんにちは!」って返した。そしてみんなでソファに座って、なのはママが淹れてくれたお茶を頂く。
「うん、美味しい・・・。ヴィヴィオ。昨晩は大丈夫だった? 怖い夢とか見てない?」
「あ、はい、大丈夫です。思ったより引き摺ってないみたいです」
わたしやフォルセティは以前、ミッドを席巻したプライソン一派に拉致されたことがあった。そもそもプライソンの手によって生み出されたから、取り返されたとも言えるかも。とにかく今でもその記憶は残っていて、痛い思いも苦しい思いも悲しい思いも・・・たくさんあって怖くなることもある。それに比べたら、昨夜の事は恐くはあってもトラウマになるほどじゃなかった。
「そう。それは不幸中の幸いだね・・・」
「はい。・・・ところで、あの・・・今日はどういった・・・?」
「あ、うん。実はね、なのはちゃんとフェイトちゃんからお願いされて・・・」
すずかさんが側に置いてあったバッグの中から小包を取り出して、「今日はコレをヴィヴィオに届けに来たの」ってテーブルに置いた。わたしの両隣に座るなのはママとフェイトママが、「ヴィヴィオ、開けてみて」って促した。
「うん・・・」
リボンを解いてから包装紙をそっと剥がす。そして両手で箱の蓋を外すと、「うさぎ・・・?」のぬいぐるみが中に納められてた。頭の中に?マークがぐるぐる回ってる。
「あはは。うさぎが外装なの。中身はなのはちゃんのレイジングハートのようなクリスタルだよ」
「え?・・ええ!? じゃ、じゃあ・・・この子ってまさか・・・! デバイス!?」
すずかさんの言葉が浸透して、わたしのテンションがぐんぐん上がってく。
「本当は、基礎が全て終わっての進級祝いに贈るつもりだったんだけど、昨日のような事がもしまた起きてしまった場合、少しでもヴィヴィオ自身の力で切り抜けられるようにって」
「なのはと相談して決めたんだ。ヴィヴィオの扱う魔法や資質などをリサーチしたデータを入れた最新式・・・なんだよね?」
「フフ。うん、そうだよ、フェイトちゃん。ヴィヴィオ。いろいろとデータは詰め込んであるけど、その子はまっさらな状態なの。名前もまだ付けてないから、付けてあげて♪」
「すずかさん・・・! ありがと~♪ あ、あの! わたしのデータが入ってるって事は、あの機能ももしかして・・・!」
思わずすずかさんに抱きついちゃった。すずかさんは優しく「もちろんっ! 大切にしてくれると嬉しいな♪」って言いながらわたしの頭を撫でてくれた。すると箱に納められてたうさぎがフワリと浮かび上がって、まるで挨拶するかのように右手(動物の場合は右前脚だっけ)を上げた。
「わわっ!? 飛んだ!? というか動いた!」
「すずかちゃんにお願いした、ちょっとしたオマケ機能かな? 常に手で持って移動とか手間が掛かるでしょ? でも飛んでくれたらそんな心配ないし」
「ママ達もすずかさんも本当にありがと! わたしだけのデバイスか~。えへへ♪ 実は名前も愛称も考えてあるんだ~♪」
チラッとなのはママを見ると、「???」ってなのはママも?マークを浮かべて首を傾げた。スキップしながら庭へと出て、足元にわたしの魔力光である虹色に輝くベルカ魔法陣を展開。
「マスター認証、高町ヴィヴィオ。術式はベルカ主体のミッド混合ハイブリット」
わたしの元になった聖王オリヴィエは真正古代ベルカ式だけど、わたしはどちらかと言うと近代ベルカ式に近い、ベルカ式とミッドチルダ式の複合式だ。そのおかげで戦術の幅もぐぐいっと広がってくれてる。
「わたしの愛機、デバイスに固有名称を登録。マスコットネームはクリス。正式名称・・・セイクリッドハート!」
それがわたしのこれからのパートナーとなる子の名前。登録を終えたばかりだけど、すぐにあの機能を実践開始。
「セイクリッドハート! セーットアーップ♪」
変身魔法を起動させて、いつもは“レイジングハート”の力を借りて行なってる大人モードへ変身。変身はなんの問題もなく完了して、「よしっ!」てグッと拳を握った。ママ達が「おお!」って拍手を送ってくれて、「どうもどうも♪」ちょっと気恥ずかしかったりする。
「えいっ、せやっ!」
それから軽くシャドーをしても何も変なところはなし。となったら「うぅ~。スパーリングがしたい~」ってなっちゃうわけで。うずうずしてるところに、「セッテ。ちょっと相手してあげて」ってすずかさんがセッテにお願いした。
「判りました。ではヴィヴィオ。これより私がお相手いたします」
「良いの!? ありがとう! なのはママ、フェイトママ、いい!?」
「うん、しごかれておいで♪」
「セッテ。一応はじめての起動だから、そこそこ手加減お願い」
フェイトママは本当に心配性。でもそれがわたしの事を本当に大事に思ってくれての事だから嬉しい。すずかさんも「本気は良いけど全力はダメだよ?」って付け加えた。
「了解です」
その後わたし達は徒歩圏内で行ける魔法練習場へ移動して、わたしはセッテと試合をした。結果? コテンパンのボロ負けでした。
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