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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Epica9-Cザンクト・ヒルデ魔法学院・学院祭~Confession~

†††Sideイクスヴェリア†††

外回りのお仕事を終えた後の休憩を挟んで、私とヴィヴィオとコロナ、それにフォルセティは次のお仕事であるフロア係をするために、特別教室の準備室前へと戻ってきた。

「はぁ。とりあえず、次の交替までドレスとはお別れだよ・・・」

王族のような煌びやかなドレスを身に纏っていたフォルセティでしたが、さすがにあの衣装では給仕のお仕事は出来ませんからね。そういうわけで、今のフォルセティは執事の方が着る燕尾服に、獅子のたてがみと耳と長い尾を装着しています。ちなみにお髭は水性ペンで書いています。フロア係が終わっての休憩を挟んだ後には、またドレスを着て踊るお仕事が待っていますからね。

「うん。やっぱりフォルセティはちゃんと男の子の格好してる方が良いよ♪」

「ありがとう、ヴィヴィオ。ヴィヴィオ達のウェイトレス姿も可愛いよ!」

私とヴィヴィオとコロナも、先ほど更衣室でメイド服という衣装へと着替えてきた。私は先の衣装と同じイヌの耳と尻尾を、ヴィヴィオはキツネ、コロナはウサギの耳と尾を付けています。

「リオもお昼の1時間、フロア係になる予定らしいんだけど・・・」

「まだ戻ってきてないね」

ヴィヴィオとコロナが不安そうにしていたところに「ごめーん! お待たせ~!」と方々に謝罪をしているリオがやって来ました。彼女もメイド服へと着替え終えており、ネズミの耳と尻尾を付けています。

「お! ヴィヴィオ達もお疲れ~!」

「お疲れ様~!」

「ほらほら。挨拶は後。早く交代しなきゃ」

フォルセティに急かされるように準備室へ入る。教室の2/3ほどの広さがあり、並べられたデスクには簡易コンロが幾つも置かれ、料理の腕に覚えのある生徒が料理を作っています。

「お疲れ様! フロア係の交替組、到着で~す!」

「お疲れ~! 休憩入りま~す!」

先にフロア係を務めていた生徒たちと交替し、私たちは特別教室と繋がる扉を潜る。フロアにはお客様がそれなりに入っており、出された料理を頂いています。そこに「団体様で~す!」と受付から教室内に報せが入った。お客様としてお越し頂いたのは・・・

「ママ!」

「お父さん、お母さん!」

「シャル・・・!」

「アリサさんとすずかさん!」

「アインスさん達も!」

私の姉であるシャルを始めとした、チーム海鳴の皆さんだった。外回りの中、ヴィヴィオと逢った時に聞いていましたが、やはりこうして来て頂くと緊張しますね。ともかく、「いらっしゃいませ~♪」とお出迎えです。

「お席にご案内します!」

「おおきに~♪」

私とヴィヴィオとコロナでシャル達を席に案内して、フォルセティやリオと一緒に各テーブルに着いた皆さんにメニューをお渡しする。そして注文を聞き終えて準備室――厨房に報告。フロアに戻ってきたところで「お客様2名入ります~!」と新たなお客様がご来店です。

「いらっしゃ――あ、ノーヴェ! アインハルトさんも!」

「おっす! 暇そうにぶらついてたから拾ってきたぜ」

「あの、失礼します」

とても嬉しそうに笑顔を浮かべるヴィヴィオが「はい! いらっしゃいませ! お席に――」と言いかけたところ、「ノーヴェ、こっち、こっち~♪」となのはさんが手招きをしました。はやてさんも「ちょうでええところに! お話しようか!」と誘いました。

「どうもっす! じゃあ、あたしとアインハルトの席は、なのはさんやはやてさんのテーブルの近くで頼むわ」

「かしこまりました~♪」

ヴィヴィオがノーヴェさんとアインハルトを、なのはさんとフェイトさんとアリサさんとすずかさんのテーブルと、はやてさんとルシルさんとアインスさんとリインのテーブルに近いテーブルの元へ案内しました。そしてすぐに自己紹介が行われました。その間、アインハルトの目は強敵と知り合いになれたからでしょうか、とても輝いていました。

「ではご注文を伺います!」

「う~ん・・・。じゃあピザトーストとコーヒー、ブラックで」

ノーヴェさんはすぐに注文を決めましたが、アインハルトは「えーと・・・」とても悩んでいますね。悩む事1分。ここで「体に良いスイーツをお勧めしますか?」とフォルセティが提案しますと、「お願いします」アインハルトは即座に受け入れた。

「では。パンプキンケーキとミルクティーがお勧めです」

「かぼちゃですね・・・。それではその2つをください」

「かしこまりました。ヴィヴィオ」

「はーい! ご注文を確認します。ピザトースト、ブラックコーヒー。パンプキンケーキ、ミルクティー。ご注文承りました。少々お待ちください」

ノーヴェさんとアインハルトに小さく一礼したヴィヴィオが厨房へと向かいました。それから他のお客様の応対、シャル達への料理運びなどを行いつつ、なのはさんやはやてさん、ノーヴェさんとアインハルトの会話に聞き耳を立てる。

「――アインハルトちゃんも、ヴィヴィオ達と一緒にインターミドルに出場するんだよね?」

「あ、はい。ノーヴェさんやヴィヴィオさん達からお誘いいただいたので。恥ずかしながら、そういう大会などについては全くの無知でしたので、これまで己の力量を試せる機会がありませんでした。ですが具体的な目標を頂けたので、まずはインターミドルに挑戦し、そして覇王流の名を轟かせたく思います」

アインハルトはやはり楽しむという目的は持たないようで・・・。それが少しばかり悲しい。なのはさん達もそれには気付いているようですが、「じゃあ出場条件については?」とそれに話を持って行くことなく、フェイトさんがそう尋ねました。

「はい。ノーヴェさんから伺っています。10代であること、セコンドが居ること、それに・・・クラス3以上のデバイスが必要、です」

「そうや♪ でな、すずかちゃん、ノーヴェ、ルールー、この3人から相談を受けてな。私がアインハルトのデバイスを造ろう思うんよ」

「え・・・!? あの、ですが真正古代ベルカのデバイスの開発は難しいと聞き及んでおりますが・・・」

「チッチッチ。侮ってもらっては困るよ? 私ら八神家は全員、その真正古代ベルカの魔法使いや。デバイスの1つや2つ、造ってみせるよ♪」

はやてさんが自信満々に胸を叩いて、ご家族の方々を見回した。それでアインハルトも「ぜひよろしくお願いします!」とフォークを置いた上で深々と頭を下げてお願いした。

「お願いします、はやてさん。・・・これで後は・・・ヴィヴィオとコロナのデバイスだけだな」

ノーヴェがそう言うと、なのはさんがチラリとヴィヴィオの方を見ました。ヴィヴィオはまた別のお客様に応対中で、なのはさん達の会話はおそらく聞こえていない。それを確認したなのはさんは、私に一瞥した後に人差し指をご自分の唇に当てました。何か聞いてもヴィヴィオには秘密、ということですね。コクリと首肯すると・・・

「実は、ヴィヴィオのデバイスはもう完成しているの」

なのはさんが小さなモニターを展開し、そこにぬいぐるみのようなものを表示させました。そしてそのデバイスの性能や特徴などを、アインハルトのデバイス製作の助けになるようにとはやてさんに伝えているところに、「イクス~! 注文お願い~」とフォルセティから応援要請が来たので、皆さんのテーブルより離れた。

「――ごちそうさまでした~♪」

「美味しかったよ~♪」

「んじゃイクス。初めての学院祭、精いっぱい楽しんで来てね~♪」

「はい! ありがとうございます、シャル!」

そしてお昼のピークが過ぎた頃、シャル達が食事を終えてお帰りになる。シャル達が特別教室を後にするのをフロア係一同で見送ろうとしたところで、「え・・・?」とアインハルトが蹴躓いて転びそうになったのですが、「おっと」とルシルさんが抱きとめた。

「「「「アインハルトさん!?」」」」

「アインハルト!?」

ルシルさんにもたれかかっているアインハルトの側へと急いで駆け寄る。それにシャマル先生やアイリも俯いているアインハルトを診始めました。その間、私たちは心配ながらも「お騒がして申し訳ありません」と他のお客様に謝罪します。

「アインハルトちゃん。話を聞く限り寝不足が原因よ」

「躓いて転びそうになるほど注意力が散漫。ドクターストップね」

「あの、ですがこれからクラスの手伝いをしなければいけ――」

「「ダメ♪」」

そう言ってアインハルトはルシルさんの元から離れようとしますが、「シャルちゃん。クラスの担当に報告お願い。アインハルトちゃんを休ませます、って」ってシャマル先生が制止しました。

「ん。アインハルト。本局医務官からのドクターストップ、無視なんかしないよね?」

「あ・・う・・・はい」

「よし、良い子♪ ルシル、わたしが保健室に案内するからアインハルトを運んできて」

「了か――」

「あ、あの! 自分で歩けますので! それにその・・・恥ずかしいの・・・で・・・?」

慌ててルシルさんから離れようとしたアインハルトが彼の手を取った瞬間、彼女の瞳から大粒の涙が溢れ出た。その様子に「どうした!?」とルシルさんが仰天して、はやてさんが「ルシル君?」と低い声でそう呼びました。

「いや、ちょっと待て! 俺は何もしていないぞ!」

「ほらほら、お約束はあとあと。シグナムかアインス、どっちでもいいからアインハルトを背負ってあげて。シャマル先生は保健医に事情説明。わたしは5-Bの担任に事情を説明するよ。で、なのは達は・・・やる事ないから自由時間ということで」

シャルがテキパキと指示を出してくれたことで、アインハルトは保健室でゆっくりと休むことが出来ました。

†††Sideイクスヴェリア⇒ヴィヴィオ†††

アインハルトさんが寝不足でダウンしちゃうっていうアクシデントがあって、アインハルトさんと休憩時間が同じなら一緒に学院祭を回ろうと思ってたんだけど・・・。うーん、残念だけど、2回目の休憩は、わたしとフォルセティとコロナとイクス、それにリオのチームナカジマメンバーで過ごすことに。

「ヴィヴィオ。そう暗い顔をしないでください。アインハルトも、私に構わず楽しんで来て下さい、と言っていたでしょう」

「うん・・・」

「ここで変に気を遣って僕たちが楽しめなかったって知ったら、アインハルトさんも気に病むと思うから・・・ほら、行こうヴィヴィオ♪」

フォルセティがわたしの手を取って歩き出した。アインハルトさんには申し訳ないと思いながらも、「うんっ!」ってわたしは頷いた。そういうわけで1回目の休憩の時には回れなかった出店を目指す。

「どこから回る?」

「1時間あるし、体育系と飲食系を交互に行けばいいじゃん」

「そうですね。ではどちらかは始めます?」

イクスの質問に、「ご飯!」とわたし達は同じ意見だった。フロアで料理を運んでる時、もう香りだけでお腹が空いちゃってた。じゃあ何を食べようかって話になるわけで。パンフレットのマップを確認。そして一斉に「じゃがバター!」を指差した。えへへ♪って笑い合ったあと、じゃがバター店へ向かう。

「いらっしゃいませ~♪」

「じゃがバター5つくださ~い!」

「味付けはバター、チーズ、生クリーム、カレー、塩の5種で!」

「ありがとうございます~♪」

人数分のじゃがバターを購入して、飲食が出来るように設けられた休憩所へ。一般のお客さんや学院の生徒がそこで食事をしてる。わたし達も空いてる席に着いて、「いただきます!」とフォークを手に取る。

「ヴィヴィオ、チーズ味ちょっとちょうだい!」

「いいよ~。リオのカレー味もちょっともらうね~」

味を別々にしたのは、みんなで色んな味を楽しむため。結構サイズが大きいから、1人分を5人で分け合える。そして「ごちそうさまでした!」って手を合わせて挨拶。お腹いっぱいじゃないけど、これから体を動かすとなればそこそこで十分だ。

「さてと。最初の食事は終わったけど、どの出店で体を動かそうか?」

「じゃあこれなんてどう? キックスケーターレース」

リオがパンフレットをわたし達に見せて、ある出展物の項目を指差した。子供の部と大人の部の2種類があって、一度に5人までのレースみたい。最初の運動系としては悪くないと思うから、「異議な~し」だ。そのレースが行われる中等科の運動場へとやって来たわたし達は、「参加します!」と受付の先輩に申請した。

「ありがとうございます! ではルール説明をさせてもらいます。とは言っても実に簡単。我がクラスのランナー2人に、あなた達のうち4人が先にゴールすれば勝ちとなります。難度は3種類。普通、速い、最速。君たちなら普通レベルが良いと思うけど・・・」

そう提案されたけど、わたし達は話し合いして「最速で!」と無茶とは思うけど最高難度を選択。受付の先輩も「本当に?」って心配してくれた。

「はい!」

「何事にもチャレンジ精神なので!」

「あら。うふふ♪ それではどなたが参加しますか?」

「では私が辞退を。この中では一番ひ弱なので」

イクスがそう言って挙手。コロナも手を挙げ掛けてたけど、そっと戻した。コロナもインターミドルに出場するって決めてからのトレーニングで、かなり体力を付けてるはずなんだけど・・・。とにかく、わたしとフォルセティとコロナとリオの4人で、中等科の先輩2人と競い合うことになった。コースは折り返し含めての全長100mほど。上り下りの三角山、S字カーブ、細道、ジグザグ路、といった感じ。エントリーシートに名前を書いて、キックスケーターをレンタル。

「先輩として手加減できたらいいんだけど、これも出し物のルールだから手加減無用になっちゃうけど・・・」

「ごめんなさいね、勝たせてもらうわ」

「いえ。わたし達も鍛えているので」

「手加減無用、上等なのです」

わたしとフォルセティでそう返す。お互いに本気の全力全開で競ったうえで負けたなら、次は勝てるようにもっと強くなろうって思える。でも手加減されたうえでの勝ち負けには虚しさしか残らないと思う。それを解った先輩たちも「そうね。今の発言と忘れてね」と言った後、真っ直ぐコースを見つめた。

「スタンバイ! レディ・・・ゴー!」

スタートラインに並んだわたし達は号令と同時、左足で地面を蹴ってキックスケーターを走らせる。このときの順位は、1位2位ともに先輩で、3位にリオ、4位にフォルセティ、次いでわたしとコロナ。単純に脚力が違うから、わたしとコロナはすごい勢いで置いて行かれちゃう。

『速い速い! 挑戦者リオちゃんとフォルセティちゃん、我らがエースに食らい付く!』

「僕、男なんですけど!?」

わたしとコロナが三角山を下りきったところで、そんなアナウンスが入った。先頭は変わらず先輩2人で、細長い足場を落ちないように進んでる。フォルセティとリオも遅れて足場を進み始めた。

『ヴィヴィオちゃんとコロナちゃんはちょっと遅れてるか! S字カーブに突入したばかり!』

もうちょっとやれるかなって思ってたけど、思ってた以上に進まない。わたし達が細道に入ったところで、フォルセティ達がジグザグ路を抜けて折り返しの三角コーンを曲がった。曲がる際、先輩たちもさすがに減速したけど、ここでフォルセティとリオが協力プレイ。2人は手を繋ぐとリオは急停止して、フォルセティはそのまま速度を落とすことなくカーブに突入。止まったリオと手を掴んでることで、フォルセティは遠心力に逆らって速度を落とさずに曲がり切れた。

『抜いたぁぁぁーーー!! フォルセティ君、リオちゃんと協力しての高速コーナリング! これを我がエース2人が追い掛ける』

リオも遅れて再スタート。わたしとコロナがジグザグ路の途中に差し掛かったとき、フォルセティとすれ違う。わたしとコロナが「頑張って!」って応援すると、「うんっ!」頷いてくれた。で、このレースの結果はと言うと・・・

「負けちゃったね~」

「ゴール直前で追い抜かれちゃったよ」

「でも惜しかったよ、フォルセティ君」

「接戦でしたね」

「もっと鍛えないとダメだね~」

惜敗だった。たった今買ったアイスクリームを食べながら反省会。足腰も走りこみで鍛えてるはずなんだけど、元々の体のスペックが違ったみたい。反省会もそこそこに、「次は何しに行く?」と聞く。

「ボルダリングがあるよ」

「お、いいね」

そういうわけでロッククライミングの一種、ボルダリングに挑戦。やっているのは同じ中等科の運動場で、キックスケーターレースのコースからも近い。出展しているのは中等科3年のD組。一般のお客さんも多く参加してる。

「子供5人、参加できますか?」

「ええ、大丈夫よ。君たちは子供だから4m級の壁でお願いね。プレイ時間は最大で10分。時間内に終了しても問題ないです」

おっとりした先輩から説明を受けた後、垂直の壁の前に移動。そして出っ張り(ホールド)に右手を掛けたところで、「あっ! ちょっ、スカート!」ってフォルセティが慌てて顔を背けて、周囲の人からわたし達を庇う様に背を向けた。

「大丈夫だよ、フォルセティ。制服に着替えるときにスパッツ履いてきたし」

証拠としてスカートに手を伸ばしたら「うわぁ!? いいから! 見せなくていいから!」フォルセティがさらに顔を真っ赤にした。可愛いな~って思いつつ、わたし達は壁を登り始めたんだけど、4m級はすぐに終わっちゃう。カルナージでもっと高い壁を登ったし。

「君たち、すごいのね~。経験者みたいだし、好きな壁を登ってもらってもいいよ~」

「いいんですか!? ありがとうございます!」

降りたところでおっとり先輩からお許しが出たから、時間いっぱいまで競争や人文字を作って遊んだ。自分たちが楽しむだけじゃなくて、他のお客さんも一緒に楽しんでくれた。拍手で見送られたわたし達は、次の出店へと向かった。

『中等科3年D組! ダニエル・アルダー! 僕には、ずっと気になってる女の子がいま~す!』

中等科運動場の端に設けられてる特設ステージから、そんな宣言が聞こえてきた。告白だ。だから「おおー!」って歓声が上がる。わたしは関係ないのにすごくドキドキする。チラッとフォルセティを見ると、「こんな状況で告白ってすごいな~」って感嘆してた。

『A組のリヒャルダ・バーダーさん! ずっと前から好きでしたー! 友達から始めて、いつか彼女になってくださ~~~~~い!』

ステージの側に居た中等科の制服を着たバーダー先輩らしい女子生徒が「お願いしま~す!」って告白をOKしたから、「おめでとう~~~!」ってお祝いの言葉がそこらじゅうから上がった。わたし達も拍手して、アルダー先輩がステージから降りていくのを見送った。

『主張、告白、なんでもOKのステージ! さあ、他には誰か居ませんか? 飛び入り大歓迎だ~!』

「ヴィヴィオ達は何か告白したい事とかないの?」

司会の人の言葉にリオがいきなり話を振ってきて、わたしとコロナは「ふぇっ!?」って変な声を出しちゃった。イクスは「そうですね~。特には」って微笑んで、フォルセティは「ある! 行ってくる!」ってステージに上がるための階段へ向かった。

「おお!? なになに、フォルセティには告白したい誰か居たの!?」

ひとり盛り上がるリオだけど、わたしは違う意味でドキドキし始めた。フォルセティが司会の人と挨拶した後にマイクを受け取って『初等科3年B組、八神フォルセティです!』そう自己紹介。問題はその後だ。告白なのか別の何かなのか、それが気になる。

『身寄りのない僕を引き取って大事に育ててくれている家族に、日頃の感謝を伝えたいです! お父さん、お母さん、お姉ちゃん達、僕は幸せです! これからもお願いします! ありがと~~~~!』

女の子への告白じゃなくてホッとして、さらに「わたしも・・・!」って思いにさせてくれたフォルセティに感謝。コロナ達に「わたしも行ってくる!」って伝えてからステージに向かった。

「ヴィヴィオ・・・」

「ありがとう、フォルセティ。わたしもママ達に伝えたい事があったのを思い出した」

階段から降りて来てたフォルセティとすれ違いざまに伝えると、「うん、行っておいで」って送り出してくれた。そしてわたしも司会の人と挨拶をして、差し出してくれたマイクを受け取る。ステージから見る光景はまた違っていて、集まってる何十人っていう学院の生徒やお客さんの視線を一手に受けて緊張してきた。

(あ、ママ達だ・・・!)

校舎の窓からこっちを見てるなのはママ達に気付いたから、すぐに緊張は解れた。マイクを両手で握って、深呼吸を1回。

「初等科3年B組、高町ヴィヴィオです。わたしも身寄りのない孤児でした。でもある日、2人のママがわたしを迎え入れてくれました。そのおかげで今、わたしが学院に通えて、多くのお友達が出来ました。心から感謝してます。なのはママ、フェイトママ、本当にありがと~~~~!」

叫ぶように伝えた後にはフォルセティの時みたく拍手が巻き起こった。もう一度なのはママ達の居た窓へ目をやると、なのはママとフェイトママは笑顔で手を振ってくれてたから、わたしも大きく手を振り返した。そしてマイクを返してステージを降りると、「良かったよ!」ってフォルセティ達が迎えてくれた。

「ありがと♪ それじゃ次の出店へゴー♪」

「「「「おー♪」」」」

それから蹴ったボールで9枚の的を打ち抜くキックターゲットや巨大カットアンドダウン(なのはママ達の国でいうダルマ落とし)など体育会系、それに射撃や迷路など体を酷使しない出店に参加した。ちなみにスイーツの出店もほとんど回れた。明日からちょっと甘いものは控えよう、うん。
そうして1時間の休憩時間も終わって、再びお仕事に戻る。わたし達は最初と同じ外回りで、フォルセティは女装してのダンス。30分の休憩を挟んで喫茶店のフロア係。もう一度なのはママ達が来てくれて精一杯おもてなしをした。

「はふぅ~。疲れた~」

空を暗くなってきた頃、わたし達生徒はメイド服のまま校庭に集まってる。学院祭を締めくくるセレモニーに参加するためだ。キャンプファイアのように木材を組んで、生徒みんなで協力して作り出した魔法の聖火を囲んで、聖歌を斉唱する。それが終われば年に一度の学院祭は終了になる。

「でも楽しかったよね~」

「はい。生まれて初めてのお祭り、とても素晴らしいものでした」

イクスが目を閉じて今日の事を振り返る。美味しい物、楽しい事、色んな事があった。アインハルトさんも休んだおかげか、喫茶店に元気な顔を出してくれた。今年は一緒できなかったけど、来年こそはきっと・・・。

「っ・・・。ごめん、ちょっと外すね」

お手洗いに行きたくなっちゃった。フォルセティにはそう言いたくないから、ちょっと濁した感じでコロナ達に伝える。

「聖歌斉唱まであんまり時間ないから、急いできた方が良いよ?」

「うん。すぐ戻るよ!」

みんなと別れてひとり校舎に入る。生徒もシスター達もお客さんも校庭に集まってるから、校内は人っ子一人いなくて静か。そんな中でトイレに入って、用を済ませてスッキリ。そして個室から出たところで、わたしの視界にあってはいけないものが入った。

「え・・・? 男の人・・・? え、あれ、ここ、女子トイレ・・・?」

女子トイレに15歳くらいから40歳くらいまでの男の人が、まるでわたしを待ち構えるように佇んでた。混乱する頭の中。

「きゃ――っ!?」

悲鳴を上げそうになった時、一番近かった男の人がわたしの口を押さえてきて、さらにもう1人がわたしの背後に回って羽交い絞めにしてきた。体を持ち上げられて足が宙に浮く。頭の中は混乱から恐怖へ。

(なのはママ、フェイトママ・・・フォルセティ・・・!)

「聖王」

「聖王」

「聖王を、確保せよ」

「確保せよ」
 
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