FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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八竜のゴッドセレナ
前書き
最近リバウンドしてきてちょっと焦ってます・・・
生活習慣を見直さなければ・・・
「九雷星も七星剣もまともに食らったのに・・・なぜ平然としていられるんだ?」
無傷でダメージをまともに受けていない相手にジェラールの冷や汗が止まらない。
「ジェラールさん!!そこからすぐ離れて!!」
険しい顔つきになった天海を見てシリルが声を張り上げるがその時にはすでに遅かった。男は立ち尽くす天体魔導士の間合いに入り込むと、アッパーで宙へと浮き上がらせる。
「がはっ!!」
「ジェラール!!」
顎を突かれたことで青年は動けない。重力に従って落ちてきた彼の腹部に、天海は回し蹴りを叩き込んだ。
「がっ・・・」
地面を削りながら数メートルは軽く飛ばされたであろうジェラールは、白目を向いて動けなくなっている。そんな彼に歩み寄ろうとした天海の前に、二人の剣士が現れた。
「セシリー!!ジェラールをウェンディとシェリアのところに!!」
「わかった!!」
レオンを救助したセシリーがそのままとんぼ返りでジェラールを回収し、治癒魔法を使えるウェンディとシェリアの元へと連れていく。その際、レオンの顔が暗いものになっているのに気が付いたシリルが声をかける。
「レオン、さっきからおかしいよ。どうしたの?」
その問いに彼は答えない。無言で俯いている彼を見て、天海が口を開いた。
「力がない者は何も知らなくていいな、そうだろ?レオン」
「・・・」
彼のその言葉がどういうことなのかわからないシリルたちは失礼な物言いに苛立ちを隠せない。さらし姿となったエルザが紅桜で少年に視線を向けている天海に斬りかかるが、彼はそれを刃先を避けてキャッチしてしまった。
「そんな遅くては、俺には届かないぞ」
「何!?」
エルザの剣を振るう速度はトップクラス。普通の相手であれば一刀両断など容易いことなのだが、今回は相手があまりにも悪すぎる。
「怨刀・不倶戴天!!」
ならばと次に攻撃に出たのはエルザを慕う女剣士。彼女の剣はエルザよりも優れている。その速度ならば突破できるかもしれないとジャンプして飛びかかった。
「剛の型!!」
全体重を乗せての攻撃。しかしそれを見ていた天海は掴んでいたエルザの剣をそちらへと投げる。強く紅桜を緋色の剣士が掴んでいたこともあり、二人の剣はぶつかり合い、青年に届くことはなかった。
「すまん!!カグラ」
「問題ない。そっちは大丈夫か?」
「これしき・・・何ともない」
そう言ってはいるものの、カグラの攻撃を真っ向から受け止める格好になったエルザの手は痺れていた。正直剣を握ることが困難になった彼女は、黒魔術教団を殲滅するときに見せた鎧へと変化する。
「舞え!!」
背中に翼のように備え付けられている剣が一斉に飛びかかる。広範囲攻撃とあって天海も避けられないと判断したのか、その場から動かない。
スウッ
と思っていた。しかし、彼はわずかに体をズラしただけですべての攻撃を回避できることを一瞬で見切っていたからその場から大きく動かず、最小限の動きで済ませたのだ。
「なんだこいつ・・・」
「今までの敵とは格が違う」
誰の攻撃も通じず、当たることもない。それなのに彼の攻撃を受ければ一溜まりもないとなれば、恐怖で体が萎縮してしまうのも無理はない。
「だが、こいつからは魔力を感じない。大したことはないと思うんだが・・・」
「あぁ。他の奴等の方が遥かに魔力を感じるぞ」
リオンとグレイがそう言うと、天海は苦笑した。彼は憐れみの視線を二人へとくれてやる。
「魔力を感じない?それはそうだ。俺は体内に魔力を持っていないのだから」
「「「「「!?」」」」」
その台詞に全員の思考が停止した。超魔導軍事帝国の幹部である男が体内に魔力を持っていない・・・その大きな矛盾に彼らは目を見開く。
「やっぱり・・・昨日のあの言葉の意味はそういうことか」
レオンは昨日の彼とのやり取りを思い出していた。魔法を一切使わない天海。それに対し使わせてみろと彼は言った。あの時は純粋に力の差があるからかと思っていたが実は違う。彼は魔法を使えないから、そんな無理難題をあえて唱えることができたのだ。
「でも、魔力を一切持っていないってことはないんじゃないですか?」
「うん。一般の人でも多少はあるって話だし」
この世界において魔法を使う職業である魔導士は人口の1割程度に過ぎない。しかし、それは魔力を持っているものが少ないからではなく、そこまで成長しようとするものが少ないからだ。ゆえに、魔導士でなくても多少は体内にある魔力を感知することもできるのだが、天海からはその微量の魔力すら感じない。それにサクラとラウルが首を傾げていると、彼はそれにあっさりと答える。
「このアースランドとやらではそうらしいな。だが、俺がいた世界では、体内に魔力を持っている者など一人もいない」
「アースランド?」
「俺がいた世界・・・」
「まさか・・・」
聞き覚えのある単語に妖精の尻尾の魔導士たちはある世界の住民のことを思い出す。
「俺はこのアースランドの平行世界、エドラスからやって来た」
8年前、魔力が枯渇してきたことでマグノリアを魔水晶にして魔力を得ようとした世界、それがエドラス。その世界では体内に魔力を持っている者はエクシードたちしかおらず、人間たちは魔力を宿した武器や物を使って生活しており、その武器を扱う者を魔導士と総評していた。
「なぜエドラスの人間がこんなところに」
「何のためにこの世界にやって来た」
エルザとグレイの厳しい問い。しかし、その質問をぶつけたことを、二人は後悔することになる。天海がこの世界にやって来たことは、一人の少年の精神を大きく揺さぶるものだからだ。
「俺はこの世界の俺から呼ばれてやって来た。名前は確か・・・
ヴァッサボーネ・・・とか言ったか?」
「「「「「!!」」」」」
その時全員の視線が一人の少年に注がれた。彼は目の前の人物から明かされた衝撃の事実に、言葉を失っていた。
「エドラスの・・・お父さん?」
呆然としているシリルは天海を見て固まっていた。乱れた少年の心は、この戦場に何をもたらすことになるのだろうか。
「意志が合わない?」
「何を言ってるんだ?こいつは」
「さぁ?」
ティオスの言っている言葉に意味がわからないといった雰囲気を醸し出している三大竜。だが、ティオスの表情は一切変わることはなかった。まるですべてを見透かしているかのような顔で、彼らを見据える。
「別にいいんじゃないか?どうせすぐに知れることなんだしな」
含みを持たせた笑いを見せる青年にスティングたちの額に血管が浮かぶ。彼らは顔にドラゴンの鱗を浮かび上がらせると、魔力を高める。
「三頭のドラゴンに勝てるか?」
「君たちはドラゴンじゃない。ただの人だ。それも・・・親から捨てられたね」
その瞬間、スティングとローグが駆け出した。光の如し速度で接近するスティングと影になって地面へと消えたローグ。それに続くようにグラシアンが、二人を意識から逸らすためかのように何のフェイクもなく突っ込んでいく。
「白竜の・・・鉄拳!!」
光を纏い拳をスティングが放つ。しかしティオスはそれを上に払うと、バランスが上に向いた彼の腹部に回し蹴りを放ち吹き飛ばす。
「ハァッ!!」
その直後に現れたのはグラシアン。彼は蹴りを放つが、ティオスはそれとはまるで違う方向に手を出す。
「悪いけど、君が幻影なのはわかっているよ」
「なっ!?」
視認できていたグラシアンは偽物。本物は自らの姿を消して向かってきており、ティオスの手によって攻撃を受け止められてしまった。
「誰かに変身しないんですか?あなたより強い魔導士はいくらでもいるでしょ?」
「言われなくて・・・」
足を掴まれたことにより偽物が姿を消して本物が現れる。本物は無理矢理青年の手を払うと、フードを被り、5本の杖を背負った青年へと姿を変えた。
「へぇ、こいつは・・・」
その姿には見覚えがあった。大魔闘演武でミラジェーンと共に現れた彼は、ジュラとレオンのタッグに果敢に挑んでいった。
「流星!!」
ミストガン・・・正確にはジェラールに変身したグラシアンはスティング顔負けの瞬間移動を見せる。それにはティオスも反応するのがやっとだったのか、ギリギリで回避していた。
「ジェラールか・・・いや、君の中ではミストガンでいいのかな?」
なおも向かってくる流星から距離を取ろうとしたティオス。しかし、彼の足が動かない。その理由は、影になったローグが彼の足を掴んでいたからだ。
「そのままやられろ」
「いい目をしている」
影から手と顔だけをわずかに覗かせる影竜。それを見たティオスは動きが制限されてしまい、グラシアンの接近を許してしまった。
「天輪・三位の剣!!」
距離を詰めたグラシアンは今度はエルザへと変身する。天輪の鎧を纏い、両手に握らせた剣を三角形になるように振るう。
「まるで本物・・・まぁでも」
バシィッ
「!?」
エルザに限りなく近い剣筋を見せたグラシアン。しかし、ティオスはそれを難なくキャッチすると、自分の真下にいるローグ目掛けて叩き付ける。
「「ガッ!!」」
ティオスの足を掴んでいたことで逃れることができなかったローグ。しかも必要最低限に影から出ている部位を抑えていたことが仇となり、叩き付けられたグラシアンに潰された腕が思わぬ方向に曲がってしまった。
「悪い!!ローグ」
「いや・・・大丈夫だ・・・」
折れるまではいかなかったからよかったものの、ダメージが大きいことは間違いない。
「ホーリーレイ!!」
腕を抑えているローグと咳き込んでいたグラシアン。その後ろから白竜が無数の光の矢を放つ。前にいた二人の間をすり抜けるようにして敵を目指す攻撃。これは決まったかと思われたが、ティオスはそれを一瞬で凍らせてしまった。
「氷!?」
「この間は水を操ってなかったか?」
凍ったことにより砕け散った魔法を見てそんなことを述べるグラシアンとローグ。ティオスはそれを聞いて、不敵な笑みを浮かべた。
「俺に勝ちたければ、もっと強くなってから来るべきだった」
「「「っ・・・」」」
もっともな物言いに苛立ちが込み上げてくる。その際幻竜の顔が、わずかにうつ向いたことに誰も気が付かなかった。
「聖十最強の男。これにはやっぱり興味あるぜ」
ゴッドセレナと対峙しているオルガは笑みを浮かべていた。それは格上相手を見るものではない。
「お前が本当に大陸一の魔導士か、見極めさせてもらうぜ」
「へぇ」
両手を前に突き出すと次第に魔力を集めていく。そこには大きな雷の球体が出来上がっていた。
「俺は雷の滅神魔導士。戦ったことはあるかい?」
「いや、聞いたことはあるけどな」
興味無さそうにしているゴッドセレナだが、オルガはそれを気にした様子もない。彼は最大まで高めたそれを一気に解放する。
「行くぜ!!雷神の荷電粒子砲!!」
放たれた黒雷が聖十最強の男を襲う。それにより辺りは砂煙に覆われていた。
「なんだ、ずいぶん呆気ねぇな」
「記憶するに値しない・・・かな?」
オルガの魔法をまともに食らったとなれば大きなダメージを受けたことは間違いない。勝利を確信していた二人・・・しかし、砂煙が晴れるとその表情は一変した。
「なんだ?この程度なのか?」
「なっ・・・」
「バカな・・・」
ゴッドセレナは平然と立っていた。それも、傷など一切なく、魔法を受けたとは思えないほど堂々と。
「そんな魔法じゃ神も竜も殺せないぜ、滅神魔導士」
「っ・・・」
自分の力では勝てないのかと奥歯を噛んだオルガ。その隣では、ルーファスが彼のある言葉が引っ掛かっていた。
「竜も・・・とは?」
滅神魔法は神を滅する魔法。ここでは竜を倒すことなど想定しているはずもなく、そんな単語が出てくること事態がおかしい。
そう思い問いかけると、ゴッドセレナの目の色が反転した。
「岩窟竜の・・・大地崩壊!!」
両手を地面に付けた瞬間、彼らの足場が崩れた。それは隕石でも落ちてきたかのような衝撃と勘違いするほどの、凄まじい威力だった。
「これは・・・」
「大地の滅竜魔法!?」
辺り一面の地面が崩れ落ち、敵味方関係なく倒れている。その力と放たれた魔法に驚いていたオルガとルーファスだが、それだけでは終わらない。
「煉獄竜の・・・炎熱地獄!!海王竜の水陣方円!!」
続けざまに左腕、右腕を振るって違う属性の魔法を繰り出すゴッドセレナ。これにはさすがのセイバーの二人も、為す術がない。
「何なんだこいつ・・・」
「まさか・・・複数の属性の滅竜魔法を使えるなんて・・・」
通常滅竜魔導士は一つの属性しか使えない。多少例外はいるものの、ここまで複数の魔法を使える魔導士を見たのは初めてだ。
「俺は八つの竜の魔水晶を体内に宿している。全てのドラゴンは、俺の前に朽ち果てるのさ」
そう言って頬を膨らませていくゴッドセレナ。どんな魔法が来るかはわかっていたが、二人の体は動かない。
「暴風竜の・・・吟風弄月!!」
「「うわあああああ!!」」
容赦なく放たれた攻撃に吹き飛ばされることしかできないセイバーの最強の魔導士たち。戦況はなおも、アルバレス軍優位に進んでいた。
後書き
いかがだったでしょうか。
ここでゴッドセレナの魔法が明らかになってきました。
次はガジルたちが出てくる予定です。
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