儚き想い、されど永遠の想い
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
448部分:第三十四話 冬の花その十二
第三十四話 冬の花その十二
「ですから御養生はいいことです」
「これまで通りですね」
「はい、林檎やそうしたものを召し上がられているそうですが」
「それはいいことと聞いてますが」
「非常にいいことです」
にこりと笑ってだ。医師は林檎はいいと答えた。
そしてだ。さらにだった。
「身体にいいものを食べられることです」
「これまで通りですね」
「医食同源ですから」
医師は支那の言葉をまた出すのだった。古い歴史を誇るこの国のだ。
「そしてです」
「さらにですね」
「御心も大事です」
食べることによって養生することに加えてだというのだ。
「それもまたです」
「心ですか」
「奥様の御心は今非常に晴れやかです」
今度は真理を見ての言葉だった。
「ですからそのまま晴れやかなままでいられれば」
「春まで、ですか」
「若しかするとですが」
やはり可能性は薄いと言う。しかしそれでもだとだ。
医師もだ。希望を見い出して話すのだった。
「桜を見られるかも知れません」
「身体と心が共によければ」
「人は不思議なものでどれだけ健康でもです」
「心が塞ぎ込んでいればですね」
「それだけで駄目になってしまいます」
「病は心から」
「だからなのです」
心、その大事さについて話す医師だった。
「どうか是非共。この二つを共に良好なままです」
「維持すればですね」
「必ずよくなりますから」
「わかりました。では私は」
「奥様のそのご健康を御護り下さい」
「わかりました。それなら」
義正は医師の言葉に頷いた。そしてだ。
医師は今度は真理も見てだ。そのうえでだった。
彼女にはだ。こう言うのだった。
「奥様はとにかく召し上がられて養生されてです」
「身体にいいものをですね」
「御主人のお考えは間違っていません」
林檎等を勧める義正のそれはだというのだ。
ページ上へ戻る