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儚き想い、されど永遠の想い

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427部分:第三十三話 鈴虫その三


第三十三話 鈴虫その三

「いい場所がある」
「六甲でしょうか」
「瑞宝寺だ」
 そこだというのだ。
「もう廃寺になっていて公園になっているがな」
「そこの紅葉がいいのですね」
「是非行くといい」
 義愛はこう弟に勧める。
「そこだ」
「あの場所の紅葉ですね」
「どうだ、そこで」
「そうですね。それではです」
 また言ってだった。義正は長兄の言葉に頷いたのだった。
 行く場所が決まるとだ。今度は義智がだった。こう弟に言ってきた。
「紅葉か。そういえば」
「はい、何でしょうか」
「義正は前から好きだったな」
 微笑みだ。彼の紅葉好きについて話すのだった。
「それこそ子供の頃からだったな」
「そうですね。ですが」
「しかしか」
「今は私だけではありません」
 彼だけがだ。好きではないというのだ。
「妻も好きですし。それに」
「義幸君もかい?」
「あの子もだと」
「はい、好きな筈です」
 こう言うのだった。兄達に対して。
「そのことも感じています」
「まさか。まだ赤子だが」
「それでも好き嫌いがあるのか」
「そう思います。だからです」
 それでだと答える義正だった。そしてだ。
 兄達にだ。こうも言うのだった。
「ですからあの子も連れて行っています」
「これまで色々な花を見て真理さんと多くの店に行っていると聞いていたが」
「それは三人でだったのか」
「はい、そうでした」
 まさにそうだったとだ。義正はまた答えた。
「あの子に。母親と一緒にいさせたくもありまして」
「子供は母親と共にいるべき」
 義愛は難しく考える顔で述べた。
「そうした考えが確かにあるな」
「はい、私もそう思います」
「それでか。いつも三人で行っているのだな」
「そうしています。駄目でしょうか」
「駄目とかそういうことではないだろう」
 是非を問うた末弟にだ。彼は述べた。
「是非の問題ではなくだ」
「では何の問題だと」
「感性の問題だ」
 それだというのである。
「今はその問題だ」
「感性のですか」
「義幸君がどう受け取っているか」
 今の話の柱は彼にあった。まだ幼子の彼にだ。
「それが大事なのだからな」
「義幸にも。母親との思い出を残したく。そして」
「そしてか」
「母親をあの子の中に生かしたいのです」
 真理は永遠に自分の中で生きる、そしてそれは義幸も同じだと考えてだ。
 それでだ。そうしていると兄達に話すのだった。
 弟のその話を聞き終えてだ。今度は義智が述べた。
「そうだな。その考えはな」
「是非ではないと。義智兄さんも」
「私もそう思う」
 確かな声で答える義智だった。
「そうした問題ではなくだ」
「やはり感性ですか」
「義幸君がどう感じるかだな」
「赤子でも感じるのなら」
 義愛もその可能性を否定しなかった。決してだ。
 そうしてだ。そのうえでの言葉だった。
 
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