儚き想い、されど永遠の想い
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426部分:第三十三話 鈴虫その二
第三十三話 鈴虫その二
「落ち着いています。それにです」
「お身体そのものも」
「いいです。血も吐いていません」
「血もですか」
「咳も出ないです」
労咳の苦しみの元であるその二つもだというのだ。
「本当に心地よいです」
「そうですか。それは何よりです」
そのことを聞いてだ。義正もだった。
顔を微笑まさせてだ。こう言ったのである。
「では春までは」
「大丈夫だと思います」
「そうですね。病は気からというのは本当ですね」
ひるがえってだ。この考えも口にした。
「心さえしっかりしていればです」
「病もかなりよくなりますね」
「落ち着きます。では春まで」
「三人でいて。そして」
「桜を見ましょう」
秋にもそのことを誓うのだった。
「是非共」
「私はあの桜をまた見たいです」
真理も切実な声になっていた。静かであっても。
「貴方と。そして」
「この子と共に」
義幸は今も安らかに眠っていた。赤子らしく。
その寝顔を見てだ。真理も義正も言うのだった。
「あの時は三人で見られませんでしたが」
「ですが今度はです」
「はい、三人で見られますね」
「春になれば」
真理がそこまで生きていることを確信しての言葉だった。
「貴女とこの子と共に」
「三人で」
こう話してだった。三人でだった。そうしてだった。
彼等はそのうえでだった。秋に春のことを考えるのだった。そしてだ。
まただ。義正は話題を変えてきたのである。今度の話題は。
「夜は長いですしそれにです」
「お腹がですね」
「はい、それでなのですが」
「夜食ですね」
「お菓子があります」
微笑みだ。妻にそれを話すのだった。
「それを召し上がられますか」
「お菓子は何がありますか」
「支那のもので」
「あの国のお菓子ですか」
「はい、月餅です」
それがあるというのだ。
「それを召し上がられますか」
「それは中華街で食べたことがあります」
「どうだったでしょうか。あのお菓子は」
「美味しかったです」
「その中華街のものです」
その月餅はまさにそのだ。中華街のものだというのだ。
「それをどうぞ」
「わかりました。それでは」
「はい、それではですね」
こう話してだった。彼等は月餅も食べるのだった。そうしたことも楽しみだ。紅葉狩りに向かうのだった。
その紅葉狩りについてだ。義愛と義智がだ。弟に対して話した。
「紅葉ならやはり」
「神戸の紅葉だね」
「はい、できれば神戸で見たいです」
こう話すのだった。兄達にだ。
「そう考えているのですが」
「そうか。それならだ」
ここでだ。義愛が話してきた。その話すことは。
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