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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第百四十三話 髑髏検校その九

「人の醜さを知って」
「そうしてですか」
「絶望してです」
「そうだったんですか」
「彼等の醜さはあまりものものでした」
 畑中さんが見て絶望した人達はというのだ。
「共産主義を擁護する為にならどの様な詭弁も嘘も弄しました」
「そんなに酷かったんですね」
「そうでした、当時のソ連のことはご存知ですね」
「全体主義で」
 ナチスと変わらない、そう言うしかない。
「しかも満州で」
「はい、暴虐の限りを尽くしましたね」
「一般市民に対して」
「私は満州の話も聞いていました」
 そのソ連軍の実態をというのだ。
「日本軍なぞ比べものにもならない」
「日本軍は軍律が厳しかったですからね」
「それもかなり、でしたね」
「その日本軍で略奪暴行を禁じていました」 
 それが軍規に明記されていた、軍規に書かれていてそれに反する日本軍の将兵がどれだけいるか。あの軍規軍律を絶対としていた日本軍が。
「ですから」
「ある筈がなかったですね」
「そうそうは」
「日本軍はそうでしたね」
「しかしソ連軍はです」
 その彼等はというと。
「スターリンが許していました」
「ベルリンとかでもそうでしたね」
「三日の間許すと言って」
「そして満州でもでしたね」
「そうです、まさに暴虐の限りを尽くしていました」
 文字通りそうだったことは僕も聞いている。
「あまりにも非道でした、満州から帰った人達からどれだけ聞いたか」
「本当のことだったんですね」
「そうでした、ですが」
 畑中さんは暗い顔になって僕に話してくれた。
「先程のお話ですが」
「人間は心で人間になる、ですね」
「そうです、その時に知りました」
「それだけ醜かったんですね」
「まさに。そのソ連軍を平和勢力の軍隊と呼んでいました」
「平和、ですか」
「はい」
 そうだったというのだ、実際に。
「共産主義自体が」
「全世界で革命を起こそうとしていましたね」
 ロシア革命、フランス革命もそうだろうか。ああした武力もっと言えば暴力による革命をだ。
「それで平和勢力ですか」
「革命を絶対としていた者達でしたので」
「そこで人が幾ら死んでもですか」
「尊い犠牲となっていました」
 畑中さんは皮肉を言わない、だから今もそれは言葉になかった。だから余計に怖いものがあった。
「そうなっていました」
「そうですか」
「そしてそのソ連軍をです」
「平和勢力の軍隊ですか」
「そう呼びまさにです」
 そのうえでというのだ。
「詭弁も嘘も駆使し」
「共産主義を擁護していたんですか」
「北朝鮮等も。その姿を見まして」
「人間に絶望されて」
「その頃は修行で汗を流しても気が晴れず」 
 あの直新陰流の激しいそれを毎日行ってもというのだ。
「それでもです」
「夜はですか」
「酒に溺れていました」
「そうだったんですか」
「はい、しかし」
「それでもですか」
「師に言われました、彼等だけ見るなと」
 その醜悪極まる当時の知識人達をというのだ。 
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