儚き想い、されど永遠の想い
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373部分:第二十九話 限られた時その四
第二十九話 限られた時その四
「是非共」
「そうですね。二人でまたここに」
「冬があるからこそです」
「春があるのですね」
「はい、あります」
こう言ってだった。さらに。
「そして冬があるからこそ」
「春があるのですね」
「はい、春があります」
また言う義正だった。
「では冬もです」
「楽しめばいいのですね」
「そうしましょう。冬もまた」
「では」
こう話してだった。二人はだ。
今は冬を楽しむことにした。屋敷に帰ると。
その冬を楽しむことはだ。まだあった。それは。
シェフ達がだ。帰って来た二人にこんなことを言ってきたのである。
「御待ちしていました」
「いいものがあります」
「いいものとは?」
「それは一体」
「鍋です」
それがあるとだ。彼等は二人に言うのである。
鍋と聞いてだ。義正がそれがだ。何の鍋かというのだ。
「では何の鍋でしょうか」
「河豚です」
「河豚の鍋です」
「河豚!?」
河豚と聞いてだ。義正はだ。すぐにこう彼等に話した。
「大阪からのものですか」
「そうです。大阪の店から特別に取り寄せたものです」
「鉄道を使って」
それでだ。取り寄せたものだというのだ。
「既に切って後は調理するだけです」
「それを今から調理させてもらいます」
「残念ですが私達は誰もです」
素直にだ。彼等はあることを話した。そのことは。
「河豚は調理できませんので」
「あれは特別な魚ですから」
「毒ですね」
その特別な事情はだ。義正もすぐに察した。
そうしてだ。こう言ったのである。
「河豚には毒がありますから」
「はい、それも非常に危険な毒です」
「ですから迂闊には調理できません」
「ですから大阪の料理人に頼んで、です」
「切って送ってもらいました」
「鉄道で、ですか」
それを聞いてだ。義正は少し考える顔になった。
そうしてだ。シェフ達に尋ねたのである。
「箱の中に入れてですね」
「はい、切ったものを薄い袋に入れて」
「そのうえで」
「そして氷も入れていますね」
それも使ったと考えての問いだった。
「そうして冷やしてですね」
「はい、そうしました」
「それで大阪からこの屋敷まで送ってもらいました」
「その様にして」
「そういうやり方がありますね」
ここまで聞いてだ。義正は納得した顔になって頷いた。
そのうえでだ。彼は明るい顔になりこうもだ。シェフ達に言った。
「有り難うございます」
「いえ、お礼はいいです」
「私達の独断ですから」
それで河豚にしたというのである。
「あの魚も広く食べられるべきですから」
「例え毒があるにしても」
「毒はあってもですね」
義正も河豚のことは知っていた。そうして言うのだった。
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