儚き想い、されど永遠の想い
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364部分:第二十八話 余命その六
第二十八話 余命その六
「その他のことも見ましょう」
「はい、それではこの冬を」
こう話してだった。二人はだ。
まずは食べそのうえでだ。冬を過ごすのだった。
冬にあるのは雪だけではなかった。無論それもある。だがそれ以外にもだった。
二人は年末にだ。神戸の商店街を歩いた。そこは。
「さあ安いよ安いよ」
「餅はこっちだよ」
「カズノコはどうだい?」
「おせちの材料あるよ」
こうだ。店の者達が口々に客達に言っていた。商店街はいつも以上にごった返していてだ。人の呼び声や笑顔で賑わっていた。
そういったものを見てだ。真理は笑顔で共にいる義正に話した。
「冬で寒い筈ですが」
「それでもですね」
「はい、暑いです」
その暑さをだ。笑顔で受け止め言ったのである。
「とても」
「そうですね。寒いというのにです」
「ここは暑いのですね」
「この時期のこの場所はこうなのです」
「必ずこうなるんですか」
「はい、人で一杯になって」
そしてだというのだ。さらに。
「多くの人が色々なものを買います」
「そうして年末と年始に備えるのですね」
「その通りです。その中で、です」
その中でだ。義正は言うのだった。
「皆動いているのです」
「年末や年始は忙しいものですが」
「確かに忙しいです。ですが」
「それでもですね」
「ここは楽しいですね」
「はい」
その通りだとだ。真理は笑顔で答えた。
「人は多いですがそれでも」
「正直ここに入るのはです」
義正は今の真理を見てだ。少しだが複雑な顔を見せた。
そのうえでだ。彼はこんなことを言ったのである。
「あまりよくないとも思ったのですが」
「私にとってね」
「あまりに人ごみが多くまた騒がしい場所です」
それが真理の労咳にとってよくないのは自明の理だ。しかしなのだ。
「ですがそれでも」
「それ以上にですね」
「貴女の御心によいと思いましたので」
「心が弾みますね」
ここでだ。真理も言った。笑顔で。
「ここにいるだけで」
「活気は見る人の心も活かします」
義正は言った。
「だからこそです」
「心が活かされるからこそ」
「そして冬の風物詩でもあります」
日本のだ。まさにそれだというのだ。
「そう思ってです」
「それでだったのですね」
「お楽しみ下さい。それに」
「それに?」
「私達も買いましょう」
微笑んでだ。買い物もどうかというのだった。
「実は婆やさん達に許しを得ています」
「お餅やおせちの材料を買うことを」
「私達二人の分だけですが」
「そして買った材料をですね」
「シェフが料理してくれます」
そのだ。おせち料理にだというのだ。
「ですからここはです」
「二人で買い物を」
「さて、まずはお餅にしましょう」
正月に欠かせないだ。それを最初にだというのだ。
「餅屋はあちらです」
「こちらですね」
「はい、こちらです」
案内されたのは商店街の中にあるその餅屋だ。店の前は客でごった返している。
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