儚き想い、されど永遠の想い
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32部分:第三話 再会その七
第三話 再会その七
「忘れてはならないと」
「それで今もですか」
「ですからこうしてお寿司と日本のお酒を」
「では私もです」
「召し上がられますか」
「お寿司を」
そちらをだというのである。
「お寿司を頂きます」
「お酒はどうされますか?」
「今は遠慮させてもらいます」
穏やかに笑ってだ。それはいいというのである。
「お酒は。どうも飲めなくて」
「そうなのですか」
「はい、ですからお寿司を」
そちらをだというのである。
「頂きます」
「このお寿司は」
その寿司の話にもなった。見れば宴に参加している者の殆どがだ。その寿司を笑顔で食べている。それを見れば好評ということがわかる。
それを見ながら箸に取ってだ。そうしてだ。
食べてみる。その味は。
「これは」
「如何ですか?」
「いいですね。ジャリだけでなく」
米だけではないというのだ。
「鮪も」
「いいですか」
「はい、素晴らしい味ですね」
目を細めさせてだ。そのうえでの言葉だった。
「このお寿司は」
「鮪以外にもありますが」
「そうですね。他にも」
見ればその通りだった。寿司のネタは他にも多くあった。
ハマチがある。鯛もだ。そうしたものを見てだ。
真理はだ。あらためて笑顔になってだ。そのうえで彼女に言った。
「お父様は本当に」
「はい、こうしたことには凝りまして」
「そうですね。本当に」
「私も。どうやら」
彼女はだ。微笑んでこうも言ったのだった。
「そうしたところがありますし」
「喜久子さんもですか」
「はい、そうです」
こうだ。彼女、高柳喜久子もこう真理に答えた。
「凝り性ですし」
「そうですね。喜久子さんもそうしたところがありますね」
「油絵にも」
こうだ。喜久子は微笑んで真理に話す。
「そうですしね」
「そういえば今も描かれていますね」
「そうさせてもらっています」
実際にそうだと真理に話す。
「風景画ですが。今も描かせてもらっています」
「何処を描かれてますか?」
「この町を」
彼女達が今住んでいるだ。その町をだというのだ。
「描かせてもらっています」
「神戸をですか」
「いい町ですね」
喜久子は微笑みのままだ。神戸そのものについて話した。
「見ているだけでは勿体ない程です」
「勿体ないですか」
「はい、私は」
喜久子はだ。彼女自身はどうかと話すのだった。
「見ているだけでは物足りない人間ですから」
「だからですか」
「はい、描きたくなります」
これがだ。彼女の考えだというのだった。
「ですから」
「それでなのですね」
「そうです。ですから描きます」
また話す。そうしてだった。
真理もまた楽しい時間を過ごしていた。その中でだ。
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