夢幻水滸伝
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第三十九話 熊本城孤立その五
「決戦で敗れればでごわす」
「そうなればとね」
「まずいんだね」
「敗れ方によっては諦めるでござる」
日本の統一、それをというのだ。
「関西に降るでごわす」
「そうなりますね」
又吉は北原の右隣、少し退いた位置から問うた。
「その時は」
「そうでごわす」
「ではこれからの決戦は」
「おいどん達が日本統一を諦めるかまだ統一を目指すか」
「その分かれ目の決戦ですね」
「そうした戦でごわすよ」
「わかりました、では」
又吉は北原のその言葉に頷いた、そのうえで言った。
「僕達はこれからの決戦では」
「兵は少なく装備も劣っているでごわすが」
「何としても」
「勝つでごわす」
そうすると言い切った、そしてだった。
彼等は容易をさらに進めて中里が率いる関西の軍勢が日向に入るのを待っていた、彼等の動きは斥候を送り見張り完全に把握していた。
それは中里達も同じでだ、中里は日向に入った夜軍議の場で諸将に言った。
「敵は高城を拠点としてこっちを待っとるな」
「そうだね、万全の調子でね」
先陣を率いる玲子が言ってきた。
「備えているね、しかもよく見えないけれどね」
「伏兵もやな」
「してるね、それもかなり」
「表に出てる兵の数はどれ位でしょうか」
織田はこのことを聞いた。
「一体」
「四万だよ」
それだけだとだ、玲子は斥候から聞いた数を述べた。
「それだけだよ」
「丁度ですね」
「ああ、ただね」
「その四万のうちですね」
「藁人形とか見せかけが多いみたいだね」
玲子は織田にこのことを話した。
「やっぱりね」
「精巧にしていてもですね」
「傀儡の術で動かしてまでわかりにくい様にしてね」
「徹底していますね」
「敵も必死ぜよ」
それでそこまでしているとだ、正岡は指摘した。
「だからぜよ」
「そこまでしてそのうえで」
「わし等と戦おうとしているぜよ」
「そして隠している兵はですね」
「もう見事な位にぜよ」
これは正岡の読みだが聞いている面々も確信していた。
「隠しているぜよ」
「忍や空船でよく見とくか」
井伏は目を鋭くさせて言った。
「そうして見付けるべきかのう」
「逆に近寄り過ぎて討たれるかも知れんが」
山本が言うにはだった。
「伏兵は把握しておいた方がええわ」
「そうじゃ、今のうちにな」
「それで僕も忍をよおさん出してるが」
彼等の棟梁でもある芥川の言葉だ。
「けどな」
「それでもか」
「中々か」
「見付からんわ」
伏兵はというのだ。
「いそうな場所は全部わかったがな」
「それだけで充分や」
中里は芥川のその話を聞いてこう返した。
「伏兵のいそうな場所がわかっただけでな」
「そこに伏兵を仕込ませておくのは確実やからやな」
「数が多くて装備のええ相手にどう向かうか」
「そう考えたらやな」
「自然とや」
まさにというのだ。
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