八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第百四十一話 怪談その五
「あそこにもあったって話があるんだ」
「そうだったの」
「東京の方だけじゃなかったの」
「うん、播州皿屋敷っていうんだけれどね」
これも歌舞伎になっている、ただどちらも物語の展開は同じだ。
「あの井戸にお菊さんが投げ込まれたって言われてるんだ」
「そうした井戸があのお城にあるの」
「じゃあ出るの?」
「そうした話だけれど」
「そうなのね」
「うん、まあ実際はどうかわからないよ」
出るかどうかはだ。
「言い伝えだから」
「そのことは」
「福井の方は色々言われてるけれど」
「色々?」
「うん、見てそのことを話した人は死ぬってね」
その怨霊達の祟りでだ。しかも出るのが柴田勝家さんの命日でこの人の馬印も掲げていたりするらしい。
「言われてるんだ」
「いや、話したら死ぬって」
「じゃあ言い伝え残らないんじゃ」
「何でそれで残ってるの?」
「矛盾してない?」
「それは噂を聞いた絵師の人が観てから絵として描き残してね」
僕は不思議がった二人にその辺りの事情を話した。
「あるお侍さんにその絵を渡してから死んだらしいんだ」
「そうなの」
「そこで死んだの」
「うん、それで言い伝えとして残っていて」
それでだ。
「福井の人達は幽霊が出る日は夜は外出しなかったそうだよ」
「本当に出るから」
「それでなの」
「見ただけで危ないっていうからね」
怨念で殺されるからだ。
「そうも言われてるからね」
「ううん、それじゃあ」
「その話はマジの怪談ね」
「生贄のお話じゃないけれど」
「お城にまつわるお話ね」
「何しろ人だけじゃなくて馬も首がないそうだよ」
伝え聞くところではだ。
「だから余計怖いね」
「あれっ、それって」
馬までくびがないと聞いてだ。ニキータさんに言ってきた。
「イギリスでそんな妖精いたわよね」
「デュラハンだね」
僕はニキータさんの愚問にすぐに答えた。
「アイルランドとかの妖精だね」
「首を脇に抱えてて首のない馬が曳く馬車に乗ってる」
「似てるね、確かに」
「そうよね」
「ただ、もっと怖いかな」
この福井にいるという妖怪達はだ。
「見ただけでも死ぬっていうから」
「だから」
「そう、その分ね」
「とうか下手な妖怪より怖いわね」
モンセラさんはその北ノ庄城の戦からその橋に出る妖怪についてこう言った。
「悪魔よりもね」
「そうだよね、人間が怨念で魔王にもなるから」
「そりゃ妖怪以上にね」
「怖いよね」
「それが日本の幽霊なのね」
「他にも怖いお話多いんだ」
日本の幽霊絡みではだ。
「それもあちこちにあるしね」
「そんなに多いの」
「結構ね、大阪にもあるし東京にもね」
「あるの」
「京都なんか物凄い多いよ」
歴史があるせいかだ。
「夜な夜な怨霊達がねり歩いていたって話もあるしね」
「ふうん、そうなの」
「そんなお話もあるの」
二人で僕の言葉に応えた。
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