夢幻水滸伝
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第三十八話 豊後の拠点その九
「まあそうそうとことんまでやる戦争はない」
「相手を完全に滅ぼすつもりやないとやな」
「そうそうせんわ」
「そんなもんか」
「そや、戦は政の一手段やな」
「それでやな」
「とことんまでする戦争もないわ、特に宗教だのイデオロギーだのが関わってないとな」
人間の心がというのだ、人間には感情というものがありそれでどうしても信仰が関わると戦争も際限がなくなることがある。
「お互いが生き残る前提やとや」
「徹底的にはせんか」
「十字軍とか三十年戦争みたいにな」
芥川はこうした戦争を挙げた。
「アルビジョワ十字軍もえぐかったけどな」
「南フランスでのあれやな」
「異端とか言うてカトリックの信者も殺してた」
異端とカトリックの信者の区別の付け方を指揮官に問われたバチカンから派遣された僧侶が全て殺せ、神が見分けられると言ったことも大きかった。その為この十字軍では百万人が犠牲になったと言われている。
「そんな無茶苦茶な戦にはならん」
「今の戦かて領民にも田畑にも手を出してないしな」
中里にしてもそうしたことは一切許していない。
「太平洋の戦も同じやな」
「この世界のな」
「太平洋の盟主を決めるだけ、軍同士だけの戦か」
「そやから無制限戦争はせんでや」
「やろうと思ったら出来るやろ」
「そう思ったらな」
芥川もその可能性は否定しなかった。
「出来るで」
「やっぱりそうか」
「そやけどや」
「実際にはか」
「さっきも言うたけど領民も田畑も産業も街も港も全部無茶苦茶になるわ」
犠牲者は多く出て何もかもが破壊されてしまうというのだ。
「二次大戦後の日本みたいにな」
「それは意味がないってことやな」
「どの勢力も太平洋をそのまま手に入れたいんや」
そこにある全てのものをだ、当然その中には星の者達も神具ごと入っている。
「そのうえで発展させてや」
「この世界を統一してそこから世界を救う」
「そうしたいだけでや」
あくまでというのだ。
「そんな無茶は考えてないわ、自分もそやろ」
「そこまでの戦は意味がないわ」
実際に中里もこう答えた。
「それも全くな」
「そやな」
「ああ、僕は確かに六将星の一人やけどや」
戦う者だが、というのだ。
「それでも政もしてるしな」
「戦がどんなものかもわかってるな」
「さっき自分が言うたけど政の一手段や」
「それやからや、あくまで盟主を決めるしかも領民や産業をそっくりそのまま手に入れるんならや」
太平洋の各勢力がそう考えているならというのだ。
「そこまでする理由はない」
「一戦してやな」
「それで終わりや」
勝った方が敗れた方を取り込んでというのだ。
「完全にな」
「わかりやすい話やな」
「そやろ、それはこっちの世界では欧州も同じや」
「あっちも今盟主を決める戦をしてるんやったな」
「お互いにな」
そうだとだ、芥川は中里に答えた。
「あっちは海やなくて大陸で争ってるけどな」
「それでもやな」
「あっちも領民や産業はそっくり手に入れたいんや」
どの勢力もそう考えているというのだ。
「宗教戦争はしてない」
「生きるか死ぬかやないからやな」
「そこまではせん」
絶対にというのだ。
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