儚き想い、されど永遠の想い
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244部分:第十八話 相互訪問その十一
第十八話 相互訪問その十一
「そこも和風です」
「御風呂もですか」
「そしてベッドもありますが」
それでもだというのだ。
「御布団もあります」
「では畳の部屋も」
「茶室もありまして」
日本そのものと言っていいだ。それだった。
「そこでよく茶を飲みました」
「いいものですね。それは」
「そして母が好きな華道の」
「そのお花もですね」
「よく飾られていました」
「洋館の中に華道の花ですか」
「そうした日本がありました」
この話を聞いてだ。義正は。
微笑みだ。そうしてこう言った。
「私の屋敷にも」
「完全な洋風というのはです」
「馴染めませんか」
「日本人には」
そうだというのだ。
「どうしても」
「そうなりますね。やはり」
「日本人は日本に生まれ育っているからこそ」
「日本人だからですね」
「やはり。日本のものに最も馴染みます」
そうなるというのだ。どうしても。
「私もそうですね」
「そして私も」
「確かに洋館は好きです」
このことは義正自身も認めた。
「そして洋服もです」
「洋食もですね」
「全て嫌いではありません」
そうだというのだ。
「ですが」
「それでもですね」
「やはり。落ち着くのは」
「日本ですね」
「そうです。日本です」
またそれだと話す二人だった。
「日本のものがそこにあれば」
「それだけで」
「落ち着きます」
「だから食事もまた」
「そうです。ただ」
「ただ?」
「洋食にしてもですが」
そのだ。西洋から入ってきたそれもだというのだ。
「そして洋服も洋館も」
「そうしたもの全てがですか」
「西洋から入ってはいますが」
それでもだというのだ。
「その西洋の方から見ればです」
「違うというのですか」
「日本が。それも強く」
「入っているというのですね」
「江田島ですが」
義正はここでまた一つの例えをその話に出してきた。
「海軍兵学校がありますが」
「赤煉瓦のあの場所ですね」
「あの煉瓦は英吉利から直接輸入して」
そして築いたものなのだ。そうした意味では本格的な西洋建築である。
しかしそれもだ。どうかというと。
「やはり。その英吉利の方が見れば」
「日本のものですか」
「その様です」
「完全に西洋のものを築いても」
「そこに日本があるとのことです」
「我が国のそれが」
「はい、あるようです」
そう言われたとだ。真理に話すのだった。
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