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艦隊これくしょん~男艦娘 木曾~

作者:V・B
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第四十七話

 
前書き
どうも、最近脚をやらかしちまいました。まぁ、手は動くから、小説は書ける。 

 

あー、今一、二を争うほど会いたくないやつだー。
 
俺は窓の外にいる木曾を眺めながらそう思った。
 
どうやら、出撃から帰ってきたらしく、艤装は既に外していた。
 
しばらく見つめ…………いや、にらみ合い俺たち。傍から見たら木曾はかなり変なやつだ。
 
俺は根負けして、窓を開けて木曾に話しかける。
 
「よぉ!今朝は悪かったな!完全に寝坊した!」
 
すると、木曾は少し笑いながら、大声で
 
「あぁ!ちょうど文句のひとつでも言おうかと考えてたとこだ!そこで待っとけ!」
 
と言い、右へ向かって走り始めた。木曾のことだから壁をかけ上がってくるのかと思った。
 
アイツはちゃんと人間だった。
 
ガチャリ。
 
待つこと十五秒。木曾は俺の部屋の扉を開けて入ってきた。
 
こいつ、ちゃんと人間か?
 
先ほどの自分の考えを頭の中で否定しつつ、座れよと木曾を促す。
 
木曾は先ほどまで冬華が座っていたところに胡座で座った。
 
「……………………。」
 
「……………………。」
 
「……………………。」
 
「……………………。」
 
……………………。
 
「「……………………。」」
 
お見合いかよ。なんか喋れよ俺にしろ木曾にしろ。
 
ここにはお互いの両親も居ないわけで、自分達で話を進めるしかない。
 
「…………朝は、寝坊して、すまんかった。」
 
俺は根負けしたように、木曾に向かって頭を下げる。まず、俺が言わなきゃいけないことを言おう。
 
「…………まぁ、それに関しても確かに怒ってるけど…………別に毎朝約束してる訳じゃねぇし、そこはいいさ。」
 
あらやだイケメン。というか、やっぱり怒ってたんですねはい。
 
「俺が怒ってるのはなぁ……まず、春雨の約束をすっぽぬかしたこと。」
 
サクッ。
 
「次に、理由やら結果やら抜かしても春雨泣かして時雨を怒らせたこと。」
 
サクサクッ。
 
「おまけにオレに対しての昨日のセリフ。あれにかなり怒ってる。」
 
サクサクサクッ。
 
色々心に刺さった。
 
まぁ、最後のはこの際だから気にしないでおいてやると、木曾は付け足した。
 
…………やっぱりこいつ、いいやつじゃねぇかよ。自分のことより他人のことで怒るんだもん。
 
そのわりにはコミュニケーション能力低すぎじゃね?とも思うけども。
 
「さて、お前はどんな風に責任を取るんだ?吐いたゲロの掃除はテメェでしろよな?」
 
と、凄みを効かせる木曾。おっかないことこの上ない。
 
「…………まぁ、春雨は俺の台詞に期待したんだろうなぁ…………。」
 
今日に至るまで、俺は基本的にここでは得意の目を向けられ続けた。
 
唯一無二の男艦娘。
 
親父が元提督とか、お袋が元艦娘ってことを除いても、俺はみんなが言うところの、『特別』な存在だ。
 
でも、春雨は違う。
 
木曾や冬華たちと同じように艦娘でありながら、人ではない、『始祖』という存在。
 
同じだけど、違う。俺とは、向けられている視線が違う。
 
そんな春雨に、俺は気にしてないと言った。
 
…………そりゃあ、泣くよなぁ。
 
となると…………。
 
 
 
 
 
 
 
「…………この戦いを終わらせる、か。」
 

 
 
 
 
 
我ながら、とんでもない台詞を吐いた。
 
「……………………は?」
 
キョトンとする木曾。
 
「この戦いを終わらせたらさ、俺たちは日常生活に戻れるし、春雨は…………わかんねぇけどさ。そこは親父や提督の力を使って、春雨も学校にも行けるだろう。」
 
万事解決じゃね?と、俺は締めくくった。
 
「いや、そこじゃねぇ。俺が驚いてんのはそこじゃねぇ。」
 
木曾は首を横に降りながら、あり得ねぇとでも云いたげな顔をしていた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「お前………………どうやって終わらせる気だよ。」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
深海棲艦との戦い。
 
それは、今から二十年以上前に始まった。
 
以来、奴らの勢いを止めることはできても、征服することは一回もできていない。
 
倒しても倒しても、いくらでも沸いてくる敵。
 
いつしか世界中の人々は『勝てない』、『終わらない』と思うようになったこの深海棲艦との戦い。
 
それを終らせる方法?
 
俺はフッと鼻で笑ったあと、木曾の顔を真っ直ぐ見て言った。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「知るかよ。」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

―医務室―
 
 
 
 
 
「……………………えっと、今回も木曾?」
 
明石さんは、ベッドの上に寝転んでいる俺と、横の椅子に座っている木曾を交互に見てそう言った。
 
「おう、俺がぶん殴った。今回に限ってはオレは絶対に謝らねぇ。」
 
「…………おう。今回に限っては俺が悪かった。」
 
あの後、木曾の右ストレートが俺の顔面に炸裂。久しぶりに医務室へ運ばれることになった。
 
明石さんは、「そ、そう……。」と言うと、何処かへ行ってしまった。
 
「お前さぁ!バカじゃねぇのか!?あんだけかっこつけといて、知るかよだぁ?ふざけんな!」
 
「知るわけねぇだろ!先人たちに分からなかったことが、なぜ俺に分かる!」
 
「開き直るんじゃねぇボケェ!!」
 
そんな感じで、二人してギャーギャー騒いでいた。
 
「ったく…………なにか案ができたら話してこい!力ならいくらでも貸してやる!じゃあな!」
 
木曾はそう言うと、勢いよく外に出ていった。
 
……………………はぁ。
 
俺はため息をつくと、ベッドに寝転んだ。
 
…………さてと、明日から調べものでもしますかね。
 
木曾じゃないけど、自分の吐いたゲロの掃除は自分でしなきゃな。
 
俺はそのまま目をつむった。
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
その夜は、久しぶりに、夢を見た。 
 

 
後書き
読んでくれてありがとうございます。僕のプロットでは、第十九話からここまでが『第二部』という感じで、千尋の目標が決まりました。『第三部』では、だーいぶお話が暗くなってきます。覚悟してくださいね?

それでは、また次回。 
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