儚き想い、されど永遠の想い
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206部分:第十五話 婚礼その十五
第十五話 婚礼その十五
「娘の。真理が嫁ぎ幸せをはじめることは」
「そのことはとても嬉しい」
他の相手に与える、そのことはとても辛くともだ。
娘が幸せをはじめると思うとだ。嬉しいというのだ。
「複雑な気持ちだな」
「とてもですね」
「だが総じては嬉しい」
そちらの感情の方が勝っているというのだ」
「真理、ではな」
「ではお父様」
「今から行こう」
「御願いします」
こうしてだ。真理は自分の父のエスコートを受けてそのうえでだ。結婚式のその場に向かうのだった。そしてその場においてであった。
義正と手を取り合いだ。そうしてだ。
式場の前にいる神父の言葉に誓いを立てるのだった。
こうして二人は婚礼を迎えた。はじまりを迎えたのだ。
そのうえで二人になってからだった。
二人はもう礼装ではない。お互いにスーツとブラウスになってそのうえで左右に緑がある道を並んで歩き。その中で、であった。
義正がだ。真理に言ってきた。
「はじまりましたね」
「そうですね。やっと」
「私達ははじまったのです」
真理にだ。笑顔で言ったのである。
「全てはこれからです」
「これからはじまり。そして」
「幸せになりましょう」
「では。私達は」
「二人です」
一人ではだ。なくなったというのだ。
「二人になったのです」
「そうですね。二人で」
「それでなのですが」
話は変わった。また義正からだった。
「今から何処に行かれますか」
「そうですね。今は」
「真理さんが望まれる場所に」
彼も行くというのだ。その二人で。
「一緒に行きましょう」
「では」
「はい、それでは」
「マジックに」
微笑みだ。その店に行きたいと答える真理だった。
「マジックに行きましょう」
「あの店にですね」
「二人の思い出の場所の一つですから」
だからだ。その店にだというのだ。
「そこで珈琲を飲んでそれと」
「音楽ですね」
「それも楽しみたいです」
「二人で、ですね」
「そうです。二人で」
まさにだ。その二人でだというのだ。
「二人であのお店に行きましょう」
「そうしましょう。では」
義正も応えてだ。こうしてだった。
二人はマジックに向かいだ。そして二人でだ。
珈琲を飲み音楽を楽しむ。その中でだ。
真理はだ。今かけられている音楽を聴いてこう義正に問うた。
「あの、今の音楽は」
「ワーグナーですね」
「これがワーグナーですか」
「ローエングリンです」
真理にその題名も話す。
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