八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第百三十九話 雨のバイク部その十一
「それで最後はな」
「振られてだね」
「それを言っちゃおしめえよってな」
「なるんだね」
「世界のあちこちの人にな」
結局そうなるというのだ、どうも寅さんは振られてこそだ。
「それでまた次の場所でだよ」
「別のマドンナに惚れて」
「振られるんだよ」
世界各国の人達にというのだ。
「寅さんはな」
「あのシリーズもそうなっていたかも知れないんだね」
「祖父ちゃんがガキの頃と今じゃ全然違うっていうしな」
その喝しかもというのだ。
「本当にな」
「神戸もそうだっていうしね」
「だから蕎麦の食い方も変わったぜ」
「噛む人が増えたんだね」
「というか俺も言うぜ」
こう前置きして僕に顔を向けて言った。
「噛まないと身体に悪いだろ」
「それもさっき言ったね」
「だろ?噛んで食わないとな」
例え蕎麦でもだ。
「つゆがどうとかじゃなくて」
「消化に悪いから」
「噛んで食うものだよ」
蕎麦もというのだ。
「しっかりとな」
「おうどんと一緒だね」
「風呂にしても長くじっくり入って」
「疲れも取るか」
「そうしないとな」
「何か江戸っ子のイメージが違ってきたよ」
「だから何でも変わるんだよ」
万物は流転するの言葉通りにだ。
「酒だって色々飲んでるし」
「君ビール好きだよね」
「日本酒駄目だぜ」
飲めないというのだ。
「舌が受け付けないんだよ」
「江戸っ子はやっぱり日本酒だよね」
「まずいな」
「まずいって」
「関東の酒はまずいんだよ」
このことはこれまで以上に真剣に言ってきた、どうも本当に関東のお酒は味が落ちるのだと思った。
「水と土が悪いからな」
「ああ、お酒を造るお米にとって大事な」
「関東はな、だからな」
「お酒もまずいんだ」
「そうなんだよ、東京の辺りの酒は」
「まずくて」
「それを飲んできたけれどな」
それがというのだ。
「変わったんだよ」
「君はビールでだね」
「日本酒飲んでないぜ」
僕に強い声で言った。
「また言うが身体が受け付けないからな」
「だからだね」
「ああ、飲まないんだよ」
「お祖父さんやお父さんは日本酒?」
「祖父ちゃんはそうだけれどな」
「お父さんは違うんだ」
「親父はヒビール派だったんだよ」
言葉が過去形になった、ここで。
「今は違うけれぢな」
「だった、なんだ」
「飲み過ぎて痛風になってな」
「ああ、ビールだからね」
「今はプリン体ゼロのビールかな」
若しくはとだ、僕に話した。
「焼酎飲んでるよ」
「焼酎なんだ」
「芋焼酎な」
「江戸っ子らしくうはないね」
「だろ?けれど酒好きでな」
普通のビールは飲めなくなってもというのだ、とにかく痛風はとんでもなく痛いらしい。だから一度罹ると飲まなくなるそうだ。
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