八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第百三十九話 雨のバイク部その七
「この食べ方は」
「そうよね、やっぱり」
「けれどあっちではおつゆも辛くて」
「あまり漬けなくて」
「それで一気になのね」
「噛まずに飲むんだ」
そうして味わうというのだ。
「東京じゃね」
「そこで噛んだら」
「通は怒るらしいよ」
お風呂屋さんのお湯を薄めた時みたいにだ。
「そうしたら」
「消化に悪いのに」
「それでもね」
「それがあっちの食べ方で」
「譲れないみたいだよ」
「おかしなことね」
「他の場所から見ればおかしくても」
それでもだ。
「そうした風なんだ」
「東京ではなのね」
「うん、お蕎麦はね」
「噛まないのね」
「喉ごしで味わうんだ、だからね」
そうした食べ方をするからだ。
「ざるそばも多いんだ」
「ざるそばね」
「そうなんだ、ざるそばはね」
本当にだ。
「あっちじゃ主流なんだ」
「汁そばじゃなくて」
「温かいね」
もっと言えば熱い、そうしたお蕎麦だ。
「そういうのじゃないんだ」
「けれどそうしたお蕎麦もあるわよね」
「あるよ、けれど何といってもね」
「主流はざるそばなのね」
「あとせいろだね」
「せいろ?」
「麺を蒸したお蕎麦なんだ」
普通のざるそばとはそこが違う、そうした作り方のお蕎麦もあってよく食べられているのだ。
「せいろは」
「そうなの」
「そういうのをよく食べるんだ」
「こっちとはかなり違うわね」
「こっちでもざるそば食べるけれど」
それでもだ。
「沢山のお蕎麦のうちの一つだよね」
「ええ、夏はよく食べるけれど」
汁そばだと熱いからだ、僕にしても夏は結構ざるそばを食べるしざるうどんもよく食べている。
「そのうちの一つだね」
「けれど東京ではそっちが主流なのね」
「あと主食なんだ」
「主食なの」
「蕎麦定食とかはないよ」
東京の方にはだ。
「大阪だとうどん定食あるよね」
「私も好きよ」
「お好み焼き定食とか焼きそば定食とかも」
「あるけれど」
それでもというのだ。
「東京じゃないんだ」
「おそばと御飯食べないの」
「そうなんだ、おうどんでもね」
「おうどんは御飯のおかずじゃなくて」
「主食なんだ」
「実はね」
イタワッチさんは僕にいぶかしむ顔でこう返した。
「私こっちに来てお好み焼き定食食べて」
「びっくりしたよね」
「だって主食と主食じゃない」
炭水化物と炭水化物だ、要するに。
「主食をおかずにするなんて」
「他の国でもないよね」
「ないわよ」
「それ他の国の人からいつも言われるよ」
僕も笑って話した。
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