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儚き想い、されど永遠の想い

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145部分:第十二話 公の場でその三


第十二話 公の場でその三

「あのオペラからといいますと」
「第三幕のあの結婚の音楽だ」
 まさにだ。それだというのだ。
「あの曲も頼む」
「あの曲を入れられるべきとは」
 それを聞いてだ。彼等はこう話すのだった。
「また冒険ですね」
「冒険なのか」
「はい、そう思います」
 まさにそれだとだ。周りも話す。
「ワーグナーはまだ我が国に定着していません」
「しかしあえてワーグー氏を選ばれるとは」
「まさに冒険です」
「そうとしか言い様がありません」
「そうだな。こうした場では考えられんな」
 それはだ。伊上自身も認めた。
「ワーグナーはな」
「しかしそれでもですか」
「あえてワーグナーを」
「そしてその音楽を」
「奏でてもらう。食事はだ」
 次にはだ。この話だった。
「それだが」
「はい、食事は」
「どうされますか」
「そちらは」
「それもだ」
 食事もだというのだった。
「結婚式を祝う様なものをだ」
「そうした御馳走を用意するのですね」
「この度の舞踏会では」
「そうしたもので」
「やはり西洋だ」
 ここでもだ。それだというのだ。西洋だとだ。
「その感じでいく」
「では酒は葡萄酒ですね」
「それですね」
「赤も白も用意しておいてもらう」
 その葡萄酒についてもだ。彼は話した。
「そうしてもらう」
「畏まりました」
「では」
 周りも彼のその言葉に応える。そうしてだった。 
 彼は準備を進めていたのだった。そのうえでだ。
 招待状も用意する。それは己の屋敷で行った。使用人達がその彼に言う。
「あの、それで」
「双方に出すが」
「双方の家にですね」
「そうだ。出す」
 そうするというのだ。
「前に言った通りな」
「賭けですね」
「確実に勝つ賭けだ」
 それだともだ。彼は話した。
「間違いなくだ」
「勝ちますか」
「成功する」
 今度はこう言った。
「成功することだ」
「成功しますね」
「そうだ。前に言った通りだ」
 そうだというのだ。
「だからだ」
「左様ですか。では」
「楽しみだ」
 また言う伊上だった。
「実にな」
「ううむ、そうなのですか」
「楽しみですか」
「そう仰るのですか」
「その時になればわかる」
 思わせぶりな言葉をだ。それも話すのだった。
「君達もな」
「私達もですか」
「その時になればわかるのですか」
「ではです」
 伊上のその確かな言葉を聞いてだ。彼等も頷いた。
 
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