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儚き想い、されど永遠の想い

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144部分:第十二話 公の場でその二


第十二話 公の場でその二

 そのもう一方もだ。彼はあえて言った。
「白杜家とその縁者もだ」
「白杜家ですか?」
「あの家ですか」
「あの、白杜家ですか」
 周りは白杜家と聞いて、八条家の名前を聞いたうえでのことだ。驚きを隠せなかった。それで唖然としてだ。伊上に対して問うのだった。
「まさか。あの両家を同時にですか」
「同じ場所に御呼びするのですか」
「そうされるのですか」
「そうだ。そうする」
 伊上は驚く彼等にだ。確かな声で述べた。
「そうするのだ」
「あの、しかしそれは」
「幾ら何でも無謀では」
「私もそう思います」
「騒動を引き起こす様なものです」
「少なくともです」
 舞踏会がどうなってしまうのか。周囲は必死の顔で伊上に話す。
「場はかなり険悪なものになります」
「完全に二つに分かれてしまいます」
「宴を楽しむどころではありません」
「とてもです」
「普通で考えればそうだ」
 常識で考えればだとだ。伊上も言った。
「確かに場はそうなる」
「それを御存知で何故ですか」
「その様なことをされるのですか」
「そうだ。それでもだ」
 伊上は言うのだった。
「双方を呼ぶ」
「八条家も白杜家も」
「御互いをですか」
「あの両家を」
「見ているといい」
 伊上は自信に満ちた声で述べた。
「これは上手くいく」
「成功するのですか」
「この宴は」
「そうだ、成功する」
 その声での言葉だった。
「確実にだ」
「左様ですか。そこまで仰るのなら」
「我々もそれに従わさせてもらいます」
「そうしてそのうえで」
「この度の舞踏会はです」
「準備を進めさせてもらいます」
「そうしてくれ」
 伊上の今度の言葉は簡潔だった。
「結婚式会場の様にするのだ」
「西洋のそれに」
「あの感じで」
「舞踏会ならばそれだ」
 まさにだ。西洋だというのだ。だからその模すのも西洋の結婚式だというのだ。
「それにする」
「畏まりました。それではです」
「これからもその様に進めさせてもらいます」
「西洋の結婚式のイメージで」
「それで飾り音楽を選ばさせてもらいます」
「音楽ではいい曲があるな」
 ここでこうも話す伊上だった。
「あのワーグナーのだ」
「独逸のあの音楽家ですか」
「ロマン派の」
 欧州のロマン派と日本の浪漫派は違う。ただ文字が違うだけではないのだ。そこにあるものもだ。全く違っているのだ。ロマンと浪漫はだ。
「その音楽家の音楽ですか」
「それを選ばれるのですか」
「そのこともまた」
「そうだ。そのワーグナーのだ」
 どの曲なのかもだ。彼は話した。
「ローエングリンだ」
「あの白銀の騎士ですか」
 働いている者の一人が言った。
 
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