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夢幻水滸伝

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第三十五話 筑後を抑えその九

「そしてね」
「佐世保まで退き」
「そこでまた戦う」
「そうしますね」
「ああ、しかし軍師さんが言うにはね」
 美鈴の言葉も出した。
「佐世保や長崎の時には海からも攻めてくるのは間違いないし」
「そこも考えてですね」
「戦っていきますか」
「敵は陸や空からだけではない」
「海からもと」
「そうさ、まあ無理はしないよ」
 笑って言う雪路だった。
「必要なら今敵の水軍の主力がいる博多から近い佐世保で戦わず長崎に向かってね」
「あの街で戦い」
「そしてそこにも敵の水軍が来ればですね」
「無理はせず肥後に向かう」
「そうされますか」
「ああ、今は決戦じゃないんだ」
 とにかくこのことを念頭に置いている雪路だt6た。
「だから無理するなってことだからね」
「棟梁と軍師殿が言われていますね」
「決戦で勝つ為には一時でもこの肥前も肥後も捨てる」
「そうでもして勝つ」
「そうですね」
「そうさ、関西の連中を倒したら戻って来るんだ」
 その肥前や肥後ひいては占領されている博多や大宰府までもがだ。
「だから悔しくてもね」
「今はですね」
「退く」
「そうされますね」
「そうさ、あたしの性分としては逃げたくはないけれど」
 雪路は向かうタイプだ、戦でも攻める方が断然得意だ。カラーギャングとしてだけでなく性格的にそうなのだ。尚これは政でも同じだ。
「それでもね」
「今はですね」
「そうして戦う」
「逃げながらも」
「そうですね」
「そうさ、決戦の時には思いきりやるよ」
 にやりと笑ってだ、部将達にこうも言った。
「だから今はね」
「逃げる」
「そうされますね」
「そうさ、程よい位に戦って」
 そしてというのだ。
「退いてくよ」
「わかりました」
「ではそうして戦っていきましょう」
「時間を稼ぐ為に」
「そして無駄死にもですね」
「するんじゃないよ、生き返ってもね」
 それが出来てもとだ、雪路は死ぬことには強い否定で以て言った。
「死ぬべき時ってのがあるんだ」
「無駄に死ぬ時でないなら」
「絶対にですね」
「生きるべきですね」
「そうすべきですね」
「そうだよ、だから死ぬんじゃないよ」
 そこは絶対にというのだ。
「いいね」
「退きつつ生きていく」
「そうしていくべきってことですね」
「そして命を賭ける時はですね」
「賭けますか」
「そうすべきなんだよ、だから死んだら駄目だよ」
 このことを言ってだった、雪路は部将達を連れて天守閣から降りてそうしてだった。自ら陣頭で戦うが。
 その陣頭指揮にだ、自分から言ったのだった。
「これも私の性分だがね」
「それがですね」
「どうにもですね」
「ああ、上から見た方が采配執りやすいんだよ」
 苦笑いと共に言うのだった。
「全体を見られるからね」
「それはその通りですが」
「大将としてはですね」
「ご気質故に」
「自分で戦わないとね」
 陣頭でというのだ。
「しっくりいかないからね」
「だからですね」
「今もこうしてですね」
「戦われていますね」
「この辺り私の限界だね」
 苦笑いと共の言葉だった。 
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