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儚き想い、されど永遠の想い

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107部分:第九話 知られたものその十三


第九話 知られたものその十三

「そうさせて下さい」
「それでは」
 こんな話をしてだ。二人は川辺にも向かいそこを見るのだった。その後でだ。
 二人は森を後にした。そうしてだ。
 また列車に乗りだ。二人でいられる最後の時間を楽しむのだった。
 その列車の中で二人向かい合って立ってだ。話すのだった。
「またですね」
「はい、また御会いしましょう」
 義正は真理の顔を見ながら話す。時間はもう夕刻になっている。
 列車の中も外も赤くなっている。その中でだ。 
 彼はだ。真理のその赤い世界でだ。話をするのだった。
「今度はですね」
「何時にされますか?」
「また日曜にされますか?」
 次の週にだというのだ。
「日はそこで」
「はい、そして場所は」
「映画館はどうでしょうか」
「映画館ですか」
「そうです。そこはどうでしょうか」
 また真理に話すのだった。
「映画館は」
「私、実はです」
 真理は少し気恥ずかしそうに俯いてからだ。こう義正に話した。
「映画も好きでして」
「そうなのですか」
「はい、それではです」
「映画館にですね」
「御願いします」
 こう話してだ。そうしてだった。
 二人でだ。笑顔で頷き合ってだ。そのうえだった。
 二人は次に会う日とその場所を決めた。そんな話をしてだ。
 真理を駅を出るまで見送った。そこから帰る時にだ。
 振り返るとだった。そこにはだ。
 佐藤がいてだ。普段の執事の姿とは違う砕けたラフな格好でいる彼がである。難しい顔をしてそこに立っていたのだ。彼を見てだ。
「後をついてきた筈がないね」
「それはないとおわかりですね」
「君はそうした人間じゃない」
 それはよくわかっていた。実にだ。
 それがわかってだ。彼に言っているのだ。
「そうだね」
「実はです」
 佐藤は主のその言葉を受けてだ。話すのだった。
「本屋に行っていました」
「そこにだったんだね」
「それで帰るところだったのですが」
「そこに僕がいた」
「そういうことです」
「そして見てしまったんだね」
 そのことを察した。そこまでだ。
「そういうことだね」
「申し訳ありません」
 佐藤は頭を下げて述べた。
「旦那様に」
「いいよ。仕方ないさ」
 彼はいいと返した。言ってもどうにもならないことがわかっていたからだ。だから余計にだ。今の彼はやるせない気持ちになっていた。
 その気持ちでだ。彼は言うしかなかった。
「考えてみれば。隠せば隠す程」
「そうであればあるだけだというのですか」
「わかってしまうものなのだろうね」
 諦念してだ。そのうえでの言葉だった。
「そうだろうね」
「そうなのですか」
「仕方ないよ。それでね」
 義正は佐藤に話した。
 
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