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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第百三十七話 八条荘に帰ってその七

「身体も鍛えていた」
「色々とされていたのですね」
「そうした人だったのだ」
「憂国だけではなかったのですね」
「この人も調べれば調べる程だ」
「面白いですか」
「昭和の一時代を代表した人だ」
 留美さんは三島由紀夫についてもこうも言った。
「その生い立ちも交流も非常に面白い」
「そうした人でしたか」
「育ちのいい紳士でな」
「確か学習院でしたね」 
 言わずと知れた皇室の方々が通われる学園だ、それだけに所謂良家の子弟の方々が集まる。
「大学は違いましたが」
「うむ、高級官僚の子息でだ」
「しかも抜群に頭がよく」
 学校の成績もとにかくよかったらしい。
「官僚にもなられて」
「そこから作家になった」
「凄い生い立ちですね」
「そこも調べていると興味深い人だ」
 僕達は何時しかロビーの席に座っていた、そこで三人で話をしているとたまたま通りがかってくれた小野さんの娘さんが冷たい紅茶を持って来てくれた。氷が中に入っているストレートの紅茶だ。
「何かとな」
「良家のご出身で作家さんで頭がいいといいますと」 
 円香さんがここで出した人はというと。
「太宰治さんか志賀直哉さんか」
「そうした人達も同じだな」
「そうですよね」
「二人共育ちがよかった」
 太宰治は青森の大地主、政治家の家の生まれだ。長兄さんの子孫の人達が今も政治家をしている。志賀直哉も仙台藩の家老の家の人で学習院に通っていた。
「特に太宰はだ」
「青森の方で、ですね」
 円香さんも僕が思ったことをそのまま言った。
「大地主の家の人で」
「立派な屋敷に住んでいてな」
「生活にも困っていませんでしたね」
「もっと言えば三人共美男子だった」
「太宰さんは確かに」
「美男子だな」
「はい」
 そうだとだ。留美さんも答えた。
「写真を見ても」
「志賀直哉もだな」
「お爺さんになられた時も」
「そして三島由紀夫もだ」
 ひいてはこの人もだ。
「映画の主演も出来ただけにな」
「美男子でしたね」
「まさにニ物も三物も与えられたな」
「そうした人達でしたね」
「個性はそれぞれ違うがな」
 三島、太宰、志賀それぞれでだ。
「私は三人の中では三島が一番好きだ」
「武者小路実篤と同じだけですか」
「好きだ」
 実際にというのだ。
「私はな」
「そうですか」
「うむ、そしてだ」
「大学に入られたら」
「どちらかの人についてよく学んでいきたい」
「そう思われていますか」
「そう考えている、それと三島と太宰だが」
 留美さんはこのどうも個性としては正反対の二人の話もした。
「三島が若い、大学生かそれ位の時に会っているのだ」
「そうなのですか」
「太宰にとっては晩年だ」
 玉川上水で心中するその少し前位だというのだ。
「その頃に二人は会っている」
「終戦直後ですか?」
「それ位だ、太宰が自殺する前だからな」
「お二人は会っていますか」
「会ってそして三島は太宰に言った」
 その言った言葉はというと。 
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