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ラピス、母よりも強く愛して

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09学校

 やがて学校に通うようになったラピス達。
 しかし、アキトの前では愛想良くしているラピスも、大勢のゴミの前では機嫌が悪く、非常に目付きが悪かった。
 髪型も短くしていたので、その顔はまるで「ハレのち*ゥ」のグゥのようだった。
 もちろん教室でも、無理矢理アキトの隣に陣取り、授業中もアキトしか見ていなかった。
「君、どこを見てるんだ、ちゃんと前を見なさい」
「私はずっと、アキトだけ見ています」
 まだ子供とは言え、それはクラスメイト全員の前での告白と同じであった。
「「「え~っ」」」
「「「「すごーい」」」」
「「「「「チッ!」」」」」
 女子からは驚きの声が上がったが、男子からは苦々しい舌打ちが起こった。
「何を言っとるんだ君は、授業を聞きなさいっ」
「間違った歴史は聞いても意味がありません、ここに書いてあるのは、下らない年号の羅列だけ、もっとも、それすら間違えてますが、フッ」
 ラピスの薄ら笑いが癇に障り、怒り出す教師。
「どこが間違ってるんだ!」
 実際に見てきた者だけが知る、人類本来の醜い歴史。そしてキリスト生誕年も間違っていたので、本に書かれた数値は全て間違っていた。
「キリストの生誕年が違いますから、紀元前、後の年数がずれます、これは宗教上の理由ですか?それとも訂正するのが面倒なだけですか?」
「そんな仮説が出るたびに、いちいち年表を変更する訳にはいかん!お前達は言われた事だけ覚えればいいんだ!」
 下らない学校と、教師の質もいつも通りなので、ラピスは失笑を隠せなかった。
「トロイアやノアの洪水の時代の間違いは仕方ないとしても、中世や近代に入ってからの歴史背景も違います、征服? 侵略? 全部間違いです」
「いい加減にしなさい!」
「ここには当時の穀物生産量も、何も書いてありません。飢饉が起こったり、アーリア人の大移動の原因が天変地異だとも書いていない。バッタがイナゴに変わるように、食料不足と他人の体臭が一定限度を超えると、脳にあるトリガーが引かれ、まるで集団自殺でもするように、個体数を減らす為に殺し合う、それがヒトの歴史、それともこれは生物学の範囲でしょうか?」
 体罰は禁止されていたので殴れなかったが、ラピスの口を塞ごうとする教師、だがいつも通り、その手がラピスに届く事は無かった。
「汚い手で触らないで下さい」
 わずか6歳の生徒に圧倒されている教師、そろそろ怒りよりも、恐怖の方が強くなって来た。
「君は一体…… 何なんだ」
「今もまた地球の人口は、飽和限界を超えて増え続けています、報道管制があっても、もうすぐ食料の生産量より、人口が多くなるのは誰でも知っています」
 以前の歴史では、こんな事は起こらなかったが、アキトが産まれた後「誰か」の調整で、爆発的な人口増加と、天候不良による深刻な食料不足で、強硬な移民政策が行われていた。
 火星でも、普通なら一世代目の地球人が故郷に叛乱を起こすはずは無いが、食料問題だけは別である。
「火星の独立を目指す勢力が移民を締め出した時点で、ここは戦場になるでしょう」
 きっと火星の「太陽の牙」とか言う集団で、アキトが「コンバットアーマー」に乗って戦うシナリオもあるらしい。

「「「「いや、せんそうになるの? こわい」」」」
 教室の中では、ラピスの脅しが効いた生徒が、ざわつき始めていた。
「「「いや、こわい!」」」
 すでに人類を嫌うラピスやオモイカネシリーズによって「人類絶滅計画」が開始され、人間の末路は相互確証破壊による自滅が選ばれていた。
 その際、人口と物量に劣る木星のために、火星とその周辺は、反地球連合に組み入れられるらしい。
「静かにしなさい! そんな事は無い!」
 毎日が事実の隠蔽と、責任回避に汲々としている教師達。こんなモノに大切なアキトの人生を託す事はできない。
「あったもん! あたし2195ねんからきたからしってるもん! みんな、みんなしんじゃうんだからっ!」
 そうするよう教えられた訳でも無いのに、突然立ち上がって泣き叫ぶアイちゃん。
(この教師は「火星人」のアキトを弾圧する敵か、それとも政府の手先?、どちらにしても、早めに消しておきましょう)
「先生、貴方は保守派ですか、それとも独立派?」
 今日の目的は、いかに教師を怒らせ、自分とアキトを自宅学習か「保健室授業(普通の意味)」に持ち込む事にあった。
 その後、どの授業でも教師を論破し、質問責めにされても、オーメンのダミアン君のように、全てに正解するラピス、きっと頭のどこかに製造番号666と書いてあるに違い無い。

 ある時、他の女子に呼び出され、トイレに連れ込まれたラピス。
 アキトは他の男子と遊ぶのに夢中だったので、ラピスが消えたのには気付いていなかった。
(こんなゴミのために、アキトが元気に遊ぶ姿が見れないなんて)
 しかしアキトの監視は継続されているので、生中継で我慢する事にした。
「おまえ! なまいきなんだよ、センコウだけじゃねえ、アタシらまでシカトしやがって、ちょっとぐらいツラがいいからって、かっこつけんじゃねえぞ!」
 数人に凄まれて囲まれても、平然と聞いているラピス。
(低俗な言語、言語学的にも比較文化人類学的にも何の価値も無い)
「それにいっつもテンカワにベタベタしやがってっ、あいつはおまえのもんなのか!」
 それを聞いたラピスは、突然表情を変えて微笑んだ。
「貴方にもアキトの良さがわかるのね? そう、やっぱりアキトってかわいいから、誰にも好かれちゃうのよっ!」
 手を胸の前で組んで、お星様の目をしているラピス。

 ラピス妄想中…
 高校生になり、玄関で上履きに履き替えようとすると、アキトの靴箱の中からは沢山のラブレターがこぼれ落ちた。
「アキトってモテるのね、私なんか出る幕じゃないって感じかしら?」
 わざと平静を装って、先に教室に行こうとするラピス。
「あっ! 待てよ、何怒ってるんだ?」
「別に怒ってないわっ」
 床にまで散らばったラブレターをかき集め、ラピスを追いかけるアキト。
「待てったら!」
 正面に回ったアキトの前には、涙ぐんだラピスが。
「怒ってなんかないよ、ただ、悲しいだけ……」
「ラピス…」
 いつも丁寧に断りの手紙を書いたり、友達と一緒に告白しに来た相手には、何も悪くないのに深々と頭を下げて断っているアキト。
 優しいはずのアキトに、いつも辛い思いをさせている自分も許せなかったが、「他の子とも付き合っていいよ」とか「一度だけでもデートしてあげて」とは、口が裂けても言えない自分は、もっと許せなかった。
「うっ、ごめんなさいっ、私なんかのために、いつも辛い思いばかりさせて」
 ついに肩を震わせて、自分を抱くようにして泣き出してしまったラピス。
「何言ってるんだ? 辛いだなんて、お前だって俺と付き合ってるからって、女子の友達なんて、誰もいなくなったじゃないか」

 最初からいません。

「みんな、口もきいてくれないんだろ(自分から)、だったら、俺の答えはこうだっ!」
 ドサドサッ!
 まだ封も切っていないラブレターを、近くのゴミ箱に捨ててしまうアキト。
「あっ!」
(私、喜んでるっ、アキトがあんな酷い事したのに喜んでる、きっと私みたいに「あの場所でいつまでも待ってます」って書いてあるはずなのに、他の子が一杯泣いちゃうのに、私ってやっぱり酷い女なんだわっ)
「ひどいよ…… アキト、みんな一生懸命書いたのに、勇気を出して手紙を出したのに、読んであげないなんてっ」
「いいんだ、俺はお前だけだから、お前一人だけだから」
 そう言いながら、朝の込み合う学校の玄関で抱き締められ、最後に残っていた心の壁が、ガラガラと音を立てて崩れて行くのを感じた。
「あっ!」
(もうだめ…… アキト以外なにも見えない、なにもかんがえられない)
 妄想終了

「てめえ!ふざけてんじゃねえぞ! ひとのハナシをききやがれ!」
 せっかくトリップしていたのに、いい所で現実に引き戻され、機嫌が悪くなる。
(ああ、やっぱりアキトを独占したら、こうやって大勢の女子に復讐されたり、女友達なんか一人もできなくて、アキトの名前で呼び出されて喜んで行ったら、男が大勢待っていてレ*プされそうになるのね、でも勘違いしないで、この体はアキトだけの物なのよ)
 勘違いしているのが自分だとは、気付いていないらしい。
「そう、貴方達、紙の自然発火点は知ってる?」
 辺りを見回し、突然関係無い質問をする。
「なんだ? おまえ、こわくておかしくなったのか?」
 それを無視してトイレットペーパーをケースごと引き千切ると、両手で縦に押し潰し、片手に収まるようになると、さらに握り潰して行く。
「科学の実験よ、こうやって押し潰して行くと、圧力のエネルギーは熱に変換される」
 メキッ! バキバキッ! バリッ!
 例え「象が踏んでも壊れない」強度のケースは簡単に押しつぶされ、圧壊するイヤな音を目の前の女達に順に聞かせて行く。
 メキメキッ! キューーーーー!
「な、なにしてやがんだっ」
「そして摂氏230℃で酸素に触れると、紙は自然発火する」
 広げた手の上で空気に触れ、白熱して燃え上がる元トイレットペーパー。
「「「「「ひっ!」」」」」
 炎に照らされながら、アキトの前では絶対にしない、悪魔の表情をするラピス。
「さあ! 誰の頭から握り潰してあげましょうか? もっとも、燃えるより先にトマトみたいにグチャグチャに飛び散るでしょうけどねっ!」
「「「「「ぎゃあああああああああ!!」」」」」
 我先に逃げ出して行く子供達、今日もラピスは悪魔より恐ろしかった。

 さらにそれに懲りず、アイちゃんだけなら何とかなるだろうと、またトイレに連れて行く一同。
「てめえ、つけあがってんじゃねえぞ?」
 大勢に囲まれ、もう「うるうる」しているアイちゃん。
「(ニヤリ)へっ、もう泣きがはいってやがるぜ」
「ねえ、みんな火星生まれ?」
 誰かと同じく、人の言う事を一切聞かないょぅじょ。
「は? なにいってやがんだ、ふざけてんのか?」
 粋がる奴とは違い、取り巻き連中はイヤな予感がしていた。
 ピッ、ピッ、ピッ」
「うん、だいじょうぶね(ニッコリ)」
 胸のペンダントでチェックを済ませたアイちゃんは、ある場所をイメージした。
「ふざけてるとしょうちし…」
 その瞬間、周囲の風景は一変していた。
「なんだっ!」
「ここ、どこ?」
「いやあっ!」
 周りには地平線まで続くような砂漠が広がっていた
「ここから30キロほど行くとね、おっきいゆうえんちがあるの、みんなで行ってきて、ほらあれっ!」
 米粒のように小さい建物の尖塔を指差すと、チケットを置いてアイちゃんは消えてしまった。
 そこはユートピアコロニーから250キロほど離れた、火星ネズミーランドらしい。
「「「「「いやああああああっ!」」」」」

「せんせ~~!」
 その足で職員室に行き、早速チクるアイちゃん。
「あの子たちが、わたしのチケットとりあげたの」
「何のチケットだ?」
「ネズミーランド、せっかくおねえちゃんにもらったのに、え~~ん、え~~ん(嘘泣)」
「またあいつらか、どうしてそんな物を学校に持って来たんだ」
 カツ上げを咎めるより先に、高価な物を持ってきた事をしかる教師。
「ごめんなさい、それでね、みつかるまえに今から行くって、さっき出ていったの」
 養母と姉の教育が悪かったのか、生まれつきの遺伝なのか、アイちゃんはとても性悪な子供に成長していた。
 補導員に連絡し、駅か現地で子供だけの集団がいれば、補導するよう連絡しておく教師、各家庭にも連絡してみるが、子供同様、連絡が着くまともな家は無かった。

 放課後、砂漠にて
「あとどれくらいだ?」
「さあ、はんぶんはきたんじゃない」
 もう涙も枯れ果て、足を引きずるように歩いている一同。
「もうだめ、しんじゃう」
「バカ、あきらめんな、ほんとにしぬぞ」
「ちょっとあそこで休もう」
 何とか岩場を見付け、影で休む少女達。
 砂漠超え30キロなど、子供には不可能な距離で、何一つ見えない荒野に放り出されると絶望して諦めるのに、目に見えている目標が何とか足を運ばせた。
「み、みず……」
 すでに舌まで渇き切って、声を出すのも苦しい子供達、そこにボソンの輝きが起きた。
「ねえ、お水ほしい?」
 来た時と同じく、突然現れたアイちゃん。
「なっ! てめえ、ふざけやがって!」
 掴み掛かろうとした少女だったが、水のボトルを下に向け、ドボドボと捨てる所を見せられ、こぼれた水に飛び付いた。
「あっ、ああっ、水が、水がっ」
 それでも砂に吸い込まれて行く水を口に含み、ジャリジャリと味わう。
「お水ほしい?」
 数歩下がって、もう一度問い掛ける悪魔の妹。
「くれよっ、水くれよっ!」
「だめ、おねえちゃんが言ってたの、「いじめられたときは、あいてがひざまづいて、泣きさけんでゆるしをこうまで、ゆるしてはだめ」って」
 大した教育である。
「なんだと…」
「またかえろうかな、みんなしんだら、おはか作ってあげるね」
 その周囲は干乾びた「お供え物」や「はみ出した服」がある所から、岩場では無く、ラピスやアイちゃんが建てた墓らしい。
「「「「いやああああっ!」」」」
 後ろでは残りの4人が、早くも跪いて許しを請い始めた。
「ゆるしてっ! もうしないから!」
「おねがい、もうかえらせて!」
「うえぇぇん!」
「たすけて、たすけてぇええ!」
 渇き切って、霞んでいたはずの目から涙がこぼれる。
「お、おれも、もうしないから、ゆるしてくれ」
「本当?」
 まるでラピスのような、冷たい目で見下げる悪魔。ジャンプの前のように、またペンダントで相手を探る。
「後ろの4人、ここにきて」
 パシリと思われる1人と、気合の入っていない3人が呼ばれた。
「はい、お水あげる」
「「「「あああっ!」」」」
 泣きながら水のボトルを受け取り、ゴクゴクと喉を鳴らして飲み始める4人。
「てめえらっ!おれにもよこせっ」
 しかし、見えない壁にぶつかり、跳ね返される少女。
「な…」
「うふふっ、あなた「こんじょう」があるのね、「かえったらぜったい、ふくしゅうしてやる」っておもってるでしょ」
 アイちゃんのCCが入った魔法?のペンダントは、便利な機能が満載で、きっとカードなんかをキャプターする人になったり、おジャ魔女とかプリキュアに変身もできるらしい。
「ちがう、そんな…」
 言いよどむ少女にキッパリと言い放つ。
「これもおねえちゃんが言ってた「服従しないあいては、かならずころしておきなさい」って「なさけをかけて、あとで復讐されたとき、こうかいしてもおそい」って」
 記憶力が良いのか、骨の髄まで叩き込まれたのか、難しい単語を淀みなく並べるょうじょ。
「ころしなさい」
 周りの4人に視線を向け、服従しない相手を指差しながら命令する。
「えっ?そんな」
「できないよ~」
「じゃあ、みんなもしぬ?(ニッコリ)」
「「「「ヒイイッ!」」」」
「これもてっそくだって「しゃべられるまえに、きょうはんしゃにしておけ」それと「しにんにくちなし」よ」
 4人は残った水を飲み干すと、ゆっくりと少女に近付いていった。
「やめろ、くるんじゃねえ!」
 ゾンビのように群がって来る4人に恐れをなし、後ずさっていく少女。
「くそおっ」
 さっきまで自分の手下だった少女達が向かって来る、そこで取り囲まれる前に、右端のそこそこ出来そうな奴に突っ込んで行った。
「うおおおっ!」
「ギャッ!」
 まず一人をハイキックの一撃で倒し、掴みかかって来た二人目にカウンターを喰らわせた。
「うふっ、なかなかつよいのね」
 まるで宴会芸でも見るように、座って脚をバタつかせ、楽しんでいる悪魔の妹。
「はああっ!」
 その間に蹴りと掌底で、さっきまでの仲間を始末していく少女。
「ひっ! ヒイイッ!」
 3人目が倒された所で、パシリの少女は桁外れな戦闘力の前に降参した。
「おいっ、俺があいつをたおすから、よこからきをひいてろ」
「できないよ~~」
「チッ」
「うふっ、じゃあ「タイマン」ってことね」
 服がはみ出した岩から降り、構えを取るアイちゃん。ジリジリと距離を詰めて、空手か何かの構えを取る相手にも動じず、コマンドサンボなどなどで鍛え上げられた肉体に物を言わせる。
「おまえとは、こころざしがちがうっ!」
 ハイキックをかわし、足を払って倒した所に、アイちゃんの掌底が決まった。
「ゲフゥッ!」
 打ちのめされた少女は、無い胃液を吐いて陥落した。
「お友達と一緒に埋めてあげるね」
 かつて、ラピスやアイちゃんをハイエースしようとして埋められた大人。イジメようとして行方不明になった少女。この少女もそこに仲間入りしようとしていた。

 紋様を光らせながら、悪魔の笑顔で巨大な岩を持ち上げ、少女に近付いて行く。
「く、くるなっ!」
「だめよ、ここがあなたの「はかば」よっ!」
「うわああああっ!!」
 周囲数メートルが吹き飛ばされ、砕けた岩が飛び散った。
「さあ、かえりましょうか(ニッコリ)」
「「「「はイっ!」」」」
 声を裏返し、即座に返答する4人、アイちゃんには「新しいお友達(笑)」ができた。
 その後、行方不明になっていた少女は、残り4人の通報により、夜遅く砂漠の中で発見された。そこはネズミーランドまで僅か500メートルの場所であった。

 監視小屋
「アイちゃん」
「え?」
 ラピスに呼ばれ、今日の失態を怒られると思い、身が縮むアイちゃん。
「甘いわね、「アレ」を生かして帰したの?」
「ごめんなさい、だってそんなことしたら、お兄ちゃんにきらわれちゃうもん」
 自分と同じ行動パターンを聞き、口元をほころばせる、姉の方のリアル悪魔。
「そう、でもジャンプの跡は残してはだめよ、消す時はあそこが一番」
 そう言って上を指差すラピス。
「大気圏の上なら、下に落ちるまでに燃え尽きるわ、だめなら5メートルぐらい下の地下にしなさい、ミミズが片付けてくれる」
「うん(ニッコリ)」
 天使のような笑顔で笑い合う二人、しかしその会話の内容は、穢れきっていた。
「何なら私が消してあげましょうか?」
 折角のラピスの申し出だが、やはりアキトに嫌われるのでは無いかと心配する。
「うーん、いいもん、だって「タイマンはったらマブダチ」だから」
 どこで聞いたのか、そっち系のルールに詳しくなってしまったょうじょ。
「そう…… でも実際はね、あの種類にヒトの「仁義」なんてないの、女の友情より薄いから、本気で信じちゃだめよ」
「うん」

 テンカワ家や監視小屋付近では、近所付き合いやママ友との付き合いが煩わしかったラピス(母)は、即座に近所のババアの脳を支配し、「噂デマゴーグババア」、「潔癖清掃ゴミ分別ババア」、「DQN泥棒キチババア」などを始末した。
 雑草も刈らず、虫すら殺さず生かしている人物や、猫や鳥に食べ物を与える人物の方が非難され、動物まで迫害される割には、近所にも腐ったサディストが蔓延っていて、雑草や公園の樹木を根こそぎ抜いて、汚ならしい赤や紫の花を植え、虫も鳥も毒を撒いて殺害、動物まで殺害しようとするジジイ、ババアが多かったので、逆にラピスが掃除して片付けていた。
 今では人間モドキと呼ばれる「ご近所さん」が暮らし、鳥や虫、猫や犬といった自然が循環する自治体が出来上がっていたが、学校に通うと以前と同じ腐ったサディストと、縦の物を横にもしない役人教師達が蔓延っていたので、学校の清掃を実施する事にした。
 木連が到着し次第火星全土を清掃(クリアランス)、次に地球を清掃する予定のラピス達。
 人類抹殺計画を阻止できるのは、将来ゲキガンガーに搭乗する、テンカワ・アキトただ一人だけであった。
 
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