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英雄伝説~光の戦士の軌跡~

作者:トロイヌ
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第七話

 
前書き
残業やら何やらでモチベーション下げられて結局この有様です。
 

 
自由行動日当日、カイムは朝食の後片付けを終えた後リィンと共にポストに入っていた生徒会からの依頼を見ていた。中にあった依頼は三つ。

旧校舎地下の調査

導力器の配達

落とした学生手帳

という内容であった。


「落し物とかならともかく魔獣が巣くう旧校舎の調査まで依頼すんのかよ……いや仮にも士官学院だし腕の立つのはいるから出来る限りはやらせるんだろうが。」

「まあいざとなったら教師陣もいるからな。とりあえずこの依頼は後回しにして他の二つを片付けてしまわないか?」

「だな。他は落し物探しと届け物だから時間掛からないだろうし……いっそ更に時間短縮する為に手分けするか?」

「人ではそんなにいらなそうだしそうするか。」


依頼内容と数を見てカイムとリィンは手分けして依頼を片付ける事にした。担当は恨みっこ無しにするという事でくじ引きを行い、その結果カイムが落し物探し、リィンが届け物ということになった。


「お、女子の依頼だ。ラッキー♪」

「そこでラッキーと言うのか……。」

「まあ技術部にも興味はあるんだけどな。」


そのような会話をした後、二人は寮の外に出た。途中でケネス・レイクロードという生徒と釣り談義を行い(思いのほか盛り上がり時間が経過した)、学院内でそれぞれ目的地に向かう為に別れた。










リィンと別れたカイムは依頼者であるコレットのいる学生会館内にいた。


「えーっと、確かこの辺りに・・・おっといたいた、ちょっといいか?」

「はい、えっと……。」

「ああすまん。一年Ⅶ組のカイムだ、生徒会の依頼を見て来たんだが。」

「Ⅶ組の?もしかして生徒会に入ったの?」

「違うよ、ただの手伝い。会長通して依頼の片付け。」

「そうなんだ。同じ1年生なのに……特科クラスの人って、やっぱり凄いんだね。」

「いやあ、担任に嵌められただけなんだけどねぇ。うちのクラスの事色々やってもらってるみたいだし断るのもあれだしね。
ところで生徒手帳探していると聞いたんだが。」


話が少しそれていったのでカイムは依頼の話に戻す事にした。彼女曰く朝から心当たりを探しているが全く見つからないそうだ。無くした事に気付いたのは昨日放課後、最後に確認したのは自分の教室らしい。教室を出てから図書館に行く間で落としたのは確実だろう。

「ふむ、ならその間で立ち寄ったのは?」

「ええと、まずは本校舎でしょ。それから今いる学生会館と……あとは図書館だね~。それ以外は行ってないかな。」

「割と絞れてんのな。ならこっちは本校舎探すからそっちはそれ以外頼む。」

「うん、私もそうお願いしようと思ってたんだ。図書館は今朝の内に探しちゃったし……屋外も用務員さんに聞いたら掃除の時に見かけなかったって言われたから。」

「成る程。ちなみに各教室はどうだ?」

「そっちは大丈夫、自分の教室は探したし他の教室には入ってないから。それ以外を重点的に探してもらえると助かるかも~。多分2階が怪しいんじゃないかな?」

「あいよ。じゃあ引き続き学生会館頼む。」


ある程度情報を聞いた後、コレットと別れカイムは本校舎の2階に向かった。2階の廊下を歩き家庭科室の付近を通ると中からリィンとニコラスが出てきた。


「あれ、カイムじゃないか。どうしたんだ?」

「おや、本当だ。もしかして調理部に遊びにきてくれたのかな?」

「リィンとニコラス先輩じゃないか。そっちこそ二人揃ってどうしたんだ?」


予想外だったのかお互いに質問を繰り出していた。リィン達の方はどうやら届け先の一つが調理部のニコラスだったらしく、今しがた届け終わり次に向かおうとしていたらしい。次にカイムは自分の依頼を説明した。


「そんな訳で2階に今着いたんだ。まあ大体当たりはついてんだけどな。」

「そうなのか?」

「ああ、そも廊下に落ちてれば誰かが拾ってる筈だしな。届けられてないって事は見つけにくいとこにあるってことだ。それで生徒が基本的によくいる場所といえば……。」


そう言いながらカイムは談話スペースに向かい、少し奥まで歩いた後手前から三番目のソファーから何かを拾った。


「ま、こういう事だ。念の為……うんやっぱり。」

「成る程な。確かにそこなら生徒はよく立ち寄るな。」

「いやぁ、なかなかの慧眼だね。」

「これくらいなら誰でも直ぐ行き着きますよ。」


その後カイムはリィンとニコラスと別れ、学生会館に向かいコレットに生徒手帳を渡した。


「間違いない、私の手帳だ!ふぅ、本当によかった~~……。これがないと身分証明できないし、再発行とかになったら教官からすっごく怒られるって話しだし……。カイム君、どうもありがとう!」

「どういたしまして……ってなんで涙ぐんでんの!?」

「あ、あはは。安心したらつい……そういえば結局どこで見つけてくれたの?」

「本校舎2階の談話スペースのソファーの上。廊下からだと背中側だから死角になってたんだろうさ。」

「ああ、そういえば皆で話してたっけ。前にも座ってたら落とした事あったなー。」

「前も落としたって事はスカートのポケットか。いっそ上着の内ポケットに入れたらどうだ?まあ女子の制服にあるかは分からんが。」

「そんなのあるの!?」


そう言いながらコレットは上着の内側を調べてみるとどうやら内ポケット見つけたようで今後はそこにしまうことにしたようだ。依頼の完了を確認したカイムはコレットと別れリィンに連絡を取り、暫くした後合流し学院長室に向かった。










「「失礼します。」」

「おお、待っておったぞ。入りなさい。」


ヴァンダイクの了承を得て学院長室に入室するとヴァンダイクが窓に向けていた視線を二人に向けた。


(にゅ、入学式の時も思ったけど2アージュ近くありそうだな……)

(しかもかなり鍛えてるみたいだ。かなりガッシリしてるし相当強いだろうよ)


二人が改めてヴァンダイクの体格に驚いているとヴァンダイクの方から話を切り出してきた。


「――話はトワ君から聞いているよ、初めての自由行動日なのに悪いが早速説明させて貰ってもよいかな?」

「はい、構いません。」

「確か旧校舎地下の調査でしたっけ。」

「うむ、君達が入学式の時に使った場所だ。ちなみにあの落とし穴の仕掛けはサラ君が使うと言い出してな……ちとやり過ぎであったのはワシの方からも謝らせてもらおう。」

「い、いえ、とんでもない。」

「悪いのはあのウワバミの方ですし気にする必要はないかと。」

「そう言ってもらえると助かる。――さて話を戻すが、あの旧校舎は随分不思議な逸話があってのう。」


ヴァンダイクの言うとおり。出口で戦った石の魔獣、ガーゴイルも地下の他の場所にいた魔獣と比較しても尋常ではない魔獣であった。どちらかと言えば魔物と呼ぶのが相応しいだろう。しかも暫くすればただの石像に戻ってしまうという。だからこそ昔から生徒の鍛錬の為に使われていたようだが。しかしここ一年で無かった筈の扉が現れたり、どこからともなく声が聞こえるなど不思議な報告が相次いで来ているらしい。故にⅦ組にその調査を頼みたいとの事だ。


「――判りました。何とかやれると思います。あの石の化物が復活していたら厳しいかもしれませんが……。」

「何心配いらん。もし君達の手に負えないような物が出た時は横にいるカイム君に全部押し付けてしまえばいい。余程の事が無い限り蹴散らしてくれるじゃろうて。」

「そこで俺指名なんスね……いやまあやりますけど。」

「それとこれはあくまでⅦ組そのものに対する依頼じゃ。他のメンバーについても協力を頼めそうな仲間がいたら声を掛けて一緒に入りなさい。」

「それは……――了解しました。なるべく協力して入ります。」


その後二人はヴァンダイクから旧校舎の鍵を受け取り学院長室を後にした。










学院長室を出た後、二人は校庭で依頼について話し合っていた。


「どうする?直ぐに他の皆に確認を取って旧校舎に入るか?」

「それもいいが昼時が近い。結構ハードな依頼になりそうだし飯食って休憩してからでいいだろ。」

「それは……確かにそうだな。」

「それじゃリィン、お前は協力可能なメンバー連れて寮に行っててくれ。買い物済ましてから昼飯作るからさ。」

「悪い、頼む。」


そう言いながらリィンはARCUSを取り出しながらその場から離れていった。恐らく他のⅦ組メンバーに連絡をするのだろう。カイムも買い物をする為にその場から離れようとすると目の前にあるギムナジウムから出てきた一人の生徒が話しかけてきた。


「あら、カイムじゃない。どうしたの?もしかして気が変わってフェンシング部に入部する為に来てくれたの?」

「それちゃんと事情話しましたよね、フリーデル先輩?」

「ふふふ、冗談よ。でも出来れば今から遊びに来てくれると嬉しかったりするわね。」

「昼飯作りにいかにゃならないんですが、どうかしたんで?」

「ちょっと生意気な一年生と試合して欲しいなぁって。」

「先輩がやればいいじゃないですか。あなたやロギンス先輩ならそこら辺の連中に遅れはとらんでしょうに。」

「ロギンスが油断して引き分けになっちゃったのよ。私がやってもいいんだけどもう一人の指導もしたいから。ね、お願い。」

「……まあ少しなら。」


結局フリーデルの押しに負けカイムは彼女の頼みを引き受ける事になった。ギムナジウムに入りフェンシング部が使っている部屋に入るとそれに気付いた白い制服の生徒が話しかけていた。


「フリーデル部長と……寄せ集めのⅦ組に入ったカイム・グレイスか。何の用だ?入部はしないんだろう?」

「(いきなりこれかい)フリーデル先輩に頼まれたから来ただけだ。」

「……部長、どういうことですか?」

「あなたの対戦相手を連れてきたの、パトリック。」

(よりによってハイアームズの三男坊かよ……。)


パトリック・ハイアームズ。サザーランド州を治める≪四大名門≫の内の一家、ハイアームズ家の三男である。現当主であるフェルナン・ハイアームズは≪四大名門≫の中でも穏健派であり領民からも不満の少ない良き領主である。最もカイムはそういう所は認め尊敬しているが柔軟かつ底が知れないと、警戒もしているが。


「そうですか、分かりました。さあ、剣を取りそっちに立ちたまえ。」


パトリックに促され、カイムはロギンスから剣を受け取りパトリックと対峙した。


「ルールはサーブルにしましょうか。慣れない剣を使ってる訳だしカイムの得意な斬りも追加する意味で。」

「別に何でも構いませんよ。」

「ふふふ、そう。カイムはルールは流石に全部覚えてるわね?」

「ええもう。あんたらがこっちの知識の穴を突きまくってくれましたからねぇ。」

「もう、根に持たないの。……じゃあ、始め!!」


その声にパトリックは先に動き点を取ろうとし……上半身に剣を当てられていた。


「なっ!?」

「これでいいんですよね?」

「ええ、あなたの点よ。どうしたのパトリック。指導してあげるんでしょう?」

「クッ、油断しただけです!」


その声と同時にパトリックは攻勢を掛けるも自身の攻撃は次々といなされ逆にカイムの攻撃はパトリックに次々と命中していった。もはや挽回など不可能な所まで攻撃が命中した所で……


「試合終了!結果は……聞くまでも無いでしょう?」

「っっ!」


その言葉にパトリックの顔が歪みそのまま俯いてしまった。それに肩を竦めカイムはフリーデルに声を掛けた。


「もう行ってもいいですか?」

「ええ、いいわよ。わざわざごめんなさいね。」

「いえ。」


会話を終え部屋から出るとカイムのARCUSが鳴り出した。


「はい、もしもし。」

『リィンだ。ちょっと聞きたい事があってな。』

「どうしたんだ?」

『いや、今の所ガイウスとエリオットの了承は取れたんだ。他の皆は駄目らしいんだがラウラだけ連絡がつかなくてな。』

「ラウラが?確かあいつの部活は……。」

『水泳部だな。他は運よく連絡取れたとはいえ部活中だからしょうがないんだがどうする?』

「あー、今突然の野暮用でギムナジウムにいるから直接聞きに行くわ。」

『そうなのか?じゃあ頼む。ガイウスはもう少しで寮に向かうそうで、エリオットはもう寮にいる。』

「あいよ、なるべく早く済ますわ。」


そう言ってARCUSを切り、カイムはギムナジウムの奥にあるプールの扉を開けた。扉を開けると部員らしき男女が水着で泳いだり近くの椅子で休んでいたりしていた。カイムはその中で先輩と思わしき男子に話しかけた。


「すいません、少しいいでしょうか。」

「ん、どうしたんだい。もしや入部希望かな?」

「申し訳ない、違うんですわ。実はここに入部しているラウラの友人でして、彼女に用があって来ました。」

「おっとそうなのか。ラウラは……今は泳いでいるがそろそろ上がるだろうしそこの椅子に座って待っているといい。」

「ありがとうございます。」


男子生徒に促され近くの椅子に座りラウラの泳ぎを眺めてた。贔屓目抜きでもかなり速く直ぐに部で上位にいけるであろう。やがてラウラが上がったのを見計らって彼女の元に行き話しかけた。


「ようラウラ、なかなかの泳ぎじゃないか。」

「む、カイムか。そなたも泳ぎに来たのか?」

「いや、違う。しかし水泳部はこんな時期から活動してるのか。」

「うん、いわゆる寒中水泳だな。少々寒いがこれも鍛錬というものだろう。」

「あー俺も昔やらされたな。そこそこ深い極寒の川に厚着のまんまで放り込まれたわ。」

「……私が知るのよりも過酷だな。父上なら出来そうだが。」

「≪光の剣匠≫か。」


≪光の剣匠≫。本名はヴィクター・S・アルゼイド。レグラム領の現当主でありヴァンダール流と並ぶ帝国剣技、アルゼイド流を極めた達人。そして現帝国内において個人の武であれば五指に入る人物でありその実力は≪剣聖≫も称号を得たカイムすら凌ぐであろう。


「あの人なら出来ても不思議じゃないわな。しかし水泳は得意なのか?」

「私の故郷≪レグラム≫は湖畔にある町だからな。寒中水泳も鍛錬の為に日常的にやっていたから少しくらいはサマになるだろう。」

「俺はまあ、さっき言った状態で水生の魔獣に追い掛け回されたから得意だが好きじゃないな。」

「……本当に過酷だな。」

「自分でも引く。しかし武術系の部活じゃないのはそっちの鍛錬の為か?」

「それもあるが前に父上に言われた事がある。『時には、剣を手放す事で得られるものがある』らしい。前から学院に入ったら実戦してみようと思っていてな。」

「成る程、流石は≪光の剣匠≫か。俺も剣の方で行き詰ったときに師匠に言われて八葉を習い終えたら驚くほどあっさりと壁を越えたことがある。」

「……そなたは通常の剣も使えたのか?聞いていなかったな。」

(あ、やべ)


剣の話をした瞬間ラウラの目がギラリと光った気がした。これはマズイと思いカイムは本来の話に戻す事にした。


「そ、それはそれとしてだ。つい話し込んでしまったがこっちの用も聞いて貰ってもいいか?」

「ふむ、なんだ?」


カイムはここ一年で旧校舎から不思議な報告が相次いで来る為調べる依頼を受けた事、これはⅦ組全体への依頼であり可能な限り皆で協力して行う事、あと確認していないのがラウラだけである事を説明した。


「そうであったか、手間を掛けたな。……しかし申し訳ないが今日は抜けられない、来月予定が無ければ是非誘ってくれ。」

「ああ、分かった。じゃあな。」

「その前にカイム。」

「うん?」

「いずれ刀だけでなく剣でも手合わせしてもらいたいものだな?」

「……機会があったらな。」


話を戻し説明をなるべく詳しく長く行い忘れさせたと思っていたがそんなことは無かったらしい。ラウラの質問に曖昧に答えカイムはその場を後にし、寮に向かった。寮に入ると既にガイウスも揃っていたので三人に謝罪した後、急ぎめで昼食を作りそれを四人で食べ終えた後に旧校舎に向かった。





 
 

 
後書き
書いている途中で寝落ちし日まで跨ぐ始末。こんな体たらくでまことに申し訳ありません……。今月は余裕がある筈だから先月よりはマシな筈です。 
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