死の印
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第一章
死の印
ロシアはこの時革命の最中にあった、ソビエト政府が皇帝派等と内戦を繰り広げその中でだ。
ソビエト政府は農民達から食料を強制的に徴発し自分達の勢力圏で革命に反対する者達を粛清していった。
それは容赦のないもの多くの血が流れていたが指導者であるレーニンはこう言うだけだった。
「革命には犠牲が付きものだ」
「だからですか」
「徴発により飢饉も粛清もですか」
「止むを得ないですか」
「そうだ」
平然として同志達に述べた。
「その通りだ」
「では、ですね」
「このままですね」
「革命を推し進めていき」
「粛清もしていきますか」
「革命に反するのならば当然だ」
そうした者達粛清することはというのだ。
「フランスの革命を見るのだ」
「ロベスピエールを」
「ジャコバン派を」
「あの様にする、しかしだ」
レーニンは極めて冷静に述べた。
「ロベスピーエルは最後は失敗したな」
「そして自らもギロチン台に送られました」
「同志達と共に」
「罵倒と嘲笑を浴びつつ」
「彼は徹底さが足りなかった」
レーニンが言うにはだ、その顎鬚を生やした鋭い目を持つ顔で言う。見れば頭がかなり大きい。
「だから我々はだ」
「さらに徹底的にですね」
「革命を推し進めていく」
「そうしていきますか」
「そういうことだ、犠牲を厭うな」
一切、というのだ。
「そして革命に抵抗するならだ」
「容赦せずに」
「粛清していきますか」
「そうしていきますか」
「そうだ、犠牲は付きものだからな」
またこう言った、そして実際にだった。
レーニン率いるソビエト政府は内戦を繰り広げつつ粛清も徴発も容赦なく行っていた、その最中にだ。
彼の部屋に濃い黒の口髭と顎鬚を生やした男が向かった、党員達はその彼を見て思わず震え上がった。
「同志ジェルジンスキーか」
「非常委員会がまた動くんだな」
「今度は何人粛清される」
「一体どうなる」
こう囁き合った、ウラジミール=レーニンが主導する革命政府の要人の一人であり秘密警察を率いるフェリックス=エドムーンドヴィチ=ジェルジンスキーだ。元はポーランドの貴族でソビエトに参加し多くの反革命主義者を粛清している。
自ら粛清に手を下すことも多く聖職者、資本家、自由主義者はその職業及び立場にあるだけで殺していく、その為だ。
同志達からも恐れられていてだ、彼等も囁いていた。
「今度は何人粛清されるんだ」
「一体な」
「我々にも刃が向かうかもな」
「そうならないことを祈ろう」
「反革命と思われれば終わりだからな」
「我々にしてもな」
こう囁き合ってジェルジンスキーを恐れていた、だが。
彼はこの時はレーニンの前に立ち机に座り書類仕事をしている彼とこれからのことでの意見の確認をしていただけだった。とりあえず粛清の話はなかった。
しかしだ、ここでだった。
×の印が隅にある書類、多くの者の名前が書いてあるそれを見てだった。彼はレーニンに尋ねた。
「同志レーニン、その書類は」
「ああ、それか」
レーニンはサインを続けつつ応えた。
「もういい」
「そうですか、ではこちらで」
「宜しく頼む」
書類のサインをしつつ応えた、そしてだった。
ジェルジンスキーは彼の部屋に入ってだ、非常委員会のメンバー達にその書類を見せて話した。
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