とある3年4組の卑怯者
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74 裏切者
前書き
ここまでの試合結果
男子サッカー
4組 5-4 1組
4組の勝利(3-3から1組先攻、4組後攻のPK戦で決定)
藤木は体育館へと向かった。
(笹山さんとリリィ、頑張ってほしいなあ・・・)
藤木はリリィと笹山のプレーを期待していた。
「藤木君、君もしかしてリリィと笹山が気になっているんじゃないのかい?」
永沢が聞いてきた。
「い、いや、そんなことないさ!!」
藤木は誤魔化した。
体育館で、最後の試合となる4組対5組のバレーボールの試合が始まった。
4組
FL:野村 FC:小島 FR:ヨリ
BL:冬田 BC:内田 BL:まる子
5組
FL:筒井 FC:桃山 FR:寺東
BL:久口 BC:佐川 BL:橿田
(たまちゃんは出ないのか・・・。まあこの後出るかもね・・・)
橿田はたまえが出ないことに落ち込んだ。そしてまる子の方を見た。
(私からたまちゃんを奪ったあの子・・・。ここで恨みを晴らそう・・・)
橿田は心の中が憎悪に満ちていた。
(リリィも笹山さんも控えか・・・)
藤木は「はあ~」と溜め息をついた。
たまえは橿田が彼女の仲良しの友達と共に出場しているのを見た。寺東えみ、桃山れい子、筒井けい子。2年前、たまえが橿田の誕生日会に行った時にいた彼女の友人だ。
(ひろ子ちゃんは今の友達といい感じで、私は除け者になった気がして私はひろ子ちゃんを避けるようになった・・・。でもひろ子ちゃんは私に話しかけてくる・・・)
たまえは複雑な心境であった。
小島と桃山がじゃんけんをした。結果桃山が勝ち、サーブ権を取った。コート権を得た4組はコートはそのままにした。佐川がサーブした。内田がレシーブした。小島がトス、そして野村がスパイクした。しかし、筒井と桃山がブロックする。落ちるボールを冬田が何とか掬い上げた。野村が再びスパイクを試みた。佐川が手首に当てるも、ボールはコート外に出てしまった。4組が先制した。
サーブ権が4組に渡った。まる子がサーブする番になった。
「まるちゃん、頑張れー!!」
たまえは必死で叫んだ。橿田はそれを見て何かを思う。
(そうか、私もそのまるちゃんって子も今はバックだけど、お互いどちらかが2点取った後はフロントに回る・・・)
次は筒井のアタックが決まって同点、そして、次は冬田のアタックがブロックされ、内田がレシーブするも、コート外に出てしまった。ポジション移動でまる子と橿田がフロントレフトになった。桃山がサーブした。小島がそれを見送った。ボールはコート外に出た。2-2の同点、4組がサーブ権を取り返した。ついにまる子と橿田が同じ位置に向き合った。橿田はまる子を睨みつけた。まる子はやや恐ろしく感じた。
(怖いよ・・・。この子・・・。なんかアタシに恨みでもあるように睨んで・・・)
野村がサーブした。久口がレシーブした。そして筒井がトスを上げた。その時、橿田が叫ぶ。
「私がやる!」
橿田はジャンプした。まる子もブロックのために内田と共にジャンプした。
(来たね・・・!!)
橿田はアタックした。そして・・・。
「まるちゃん!!」
「さくらさん!!」
「さくら!!」
試合に出ている皆も、たまえを始めとする控えに回っている女子の皆も、ギャラリーから見ている藤木ら男子も、叫び声を挙げた。橿田がスパイクしたボールはまる子の顔面に激突した。まる子が顔を抑えて倒れた。ボールは4組コートに落ちて、5組が勝ち越した。まる子は鼻血を出し、唇も切って血が出ていた。まる子は顔を抑えて立てない。みぎわがタイムを取った。
「さくらさん、大丈夫?」
「う・・・」
「相当痛そうね・・・」
「わ、私が保健室に連れていくよ!」
「分かったわ、お願いね、山田さん」
かよ子はまる子の体を起こすのを手伝って保健室へと連れて行った。たまえは怒り狂っていた。
「ひろ子ちゃん!わざとまるちゃんの顔狙ったんでしょ!?そんなの卑怯だよ!!」
橿田は何も答えない。
「穂波さん、落ち着いて!!」
「たまちゃん!!」
笹山ととし子がたまえを抑えようとした。
「たまちゃん!」
リリィがたまえを呼んだ。
「何よ!?」
「たまちゃんが代わりに入ったら?みぎわさん、たまちゃんに代わりにお願いしてもいい?」
「え?」
「リリィ・・・。うん、私行くよ!!」
「ええ、分かったわ」
みぎわはリリィの提案に承諾し、審判をやっている3組の担任に交代を呼び掛けた。
4組 交代
まる子→たまえ
たまえがまる子の穴を埋めた。試合が再開した。筒井のサーブで冬田がレシーブ、ボールが後方へ行ってしまったので、それを内田が追い付いて前にボールをレシーブした。たまえが勢いをつけてアタックした。寺東も桃山もブロックが間に合わなかった。ボールはコート上に落ちた。4組が同点となった。
そして、内田がサーブした。橿田がレシーブした。そして寺東がトスを上げる。桃山がスパイクした。しかし、小島にブロックされ、久口が片手でレシーブした。筒井が下がった。右手を上げたと思いきや、左手でスパイクした。野村が対応しきれない。しかし、たまえがレシーブで掬い上げた。小島がアタックした。ボールは落ちた。4組の得点となった。
次はたまえがサーブすることになった。
(まるちゃん、仇を取るからね・・・)
たまえは怒りをこめてサーブした。その球が橿田を襲う。橿田はレシーブしたが、ボールを後ろに逸らしてしまった。寺東も追い付くが、ボールは壁にぶつかってしまった。
(た、たまちゃん・・・やっぱり私の事を嫌ってるのね・・・。あの時のたまちゃんはもういない・・・)
橿田は悔しがった。それは上手くレシーブできなかったからではなく、たまえが自分に怒りしか向けていないことに対してであった。次はヨリのサーブ。ボールはフロントライトにいる桃山に飛んだ。
「れい子ちゃん、あのレシーブして!」
橿田が桃山に叫んだ。桃山が言われたとおりにレシーブすると、ボールは高々と上がった。
「行けえ!東京タワーレシーブ!!」
たまえは桃山の言っている意味が解らなかった。どう見ても高く上げすぎたレシーブである。東京タワーと何の関係があるのか?
(すごい受理・・・。本当に東京タワーのてっぺんまで行きそう・・・)
リリィは高々と上がるボールを眺めて驚いた。ボールが天井に当たり、ようやく落ちてきた。しかし、どちらのコートに落ちるかわからない。筒井と久口がスパイクの準備をした。4組は動けなかった。
「あ、私だわあ!」
ボールは冬田の頭上に落ちて来る。冬田がトスしようとするが、目測を誤り、トスできずに落としてしまった。
(れい子ちゃんはレシーブの時、ボールを高く上げすぎちゃうけど、それを必殺技にしてみると面白いって私が提案したら、本当に役立ったんだからすごいよ・・・。それで東京タワーに届きそうだからって東京タワーレシーブって名付けちゃって・・・)
橿田は桃山の練習を思い出した。次は寺東のサーブがコート外に出て4組に6点目、しかし、次は橿田がスパイクを決めた。たまえはブロックするもかわされてしまった。次は寺東がアタックするかと思いきや、ジャンプでトスした。
(ジャンプでトス!?)
たまえは驚いた。そのトスされたボールを橿田がスパイクする。そのスパイクは強烈だった。野村も冬田も対応できずにボールは落ちた。5組が同点に追いついた。
(凄いわ・・・。5組は色んな技を使っている・・・)
リリィは応援に回って驚愕した。筒井の両手を使ったスパイク、桃山の東京タワーレシーブ、そして寺東のスパイクを強力にするジャンピングトス。5組が攻めにかかる。桃山の2度目の東京タワーレシーブで相手のレシーブミスを誘い、次は橿田のサーブにたまえが何とかレシーブし、野村がトスを上げ、冬田のスパイクでまた同点になるが、次は久口のスパイクが決まり、その次はたまえのスパイクが久口と佐川にブロックされてヨリもレシーブしきれずに9-7と5組のリードとなった。筒井がサーブした。冬田がレシーブした。内田がトスする。そしてたまえがスパイクした。しかし、橿田と寺東にブロックされる。後ろにいた小島が何とかレシーブした。たまえは再びスパイクを試みた。
(次こそ絶対に決める・・・!)
たまえはジャンプした。橿田もブロックのためにジャンプする。
(まるちゃん、恨みを晴らすよ・・・!!)
たまえがスパイクした。ボールは橿田の胸に当たり、ボールは寺東が救い上げようとするもネットの下をくぐってしまい、4組の得点となった。橿田がボールが当たった胸を抑えて言った。
「たまちゃん・・・、やっぱりまるちゃんって子の方がいいんだね・・・。だから私と裏切ったんだね・・・」
「ひろ子ちゃん・・・」
たまえは自分は橿田にとって裏切り者だと思われていると橿田の言葉で分かった。それは当たりでもあるし、外れでもあった。確かにたまえは自分がまる子と友達になり、橿田と疎遠になった事は事実だ。客観的に見て裏切ったとも言える。しかし、たまえは橿田とも友達で続けていたかったのだが、彼女は自分のクラスに友達を作って自分には距離を置かれたような感がした。もうあの時の橿田ひろ子はいない。ただまる子がいいからと言って橿田と絶交したわけではない。
(たまちゃん、ごめんね。貴方が橿田さんって人とどういう関係なのか知っちゃったの・・・。苦しいかもしれないけどこの試合で今までの決着を着けてくれればいいんだけど・・・)
リリィはたまえに事実を知ったことを申し訳なく思いながらも二人の溝をこの試合を通して埋めたいと思っていた。試合は続く。寺東のスパイクが決まって10点目、しかし、4組も筒井の左手のスパイクがボール・アウトになり9点目、そしてたまえのサーブを筒井がレシーブミスをして同点に追いついた。次は佐川のスパイクが勢い余ってコートを超えてしまって4組が11点目と逆転、しかし小島がサーブをネットに当ててしまって11-11の同点、次は橿田のアタックで5組に12点目が入った。しかし、次はたまえが反撃するかの如く勢いのあるスパイクを決めてまた同点とすると、5組にもたつきが出た。桃山の東京タワーレシーブをヨリもたまえも見送った結果ボール・アウトになり、さらに寺東のジャンピングトスが誤って相手に4組のコートに入ってそれを冬田がスパイクして4組が14点目を入れた。橿田がタイムを取り、輪を組んだ。そして、久口のスパイクをヨリがレシーブしきれず5組が1点差に詰め寄った。次は内田のスパイクで4組がマッチポイントとした。そしてたまえと橿田、お互い4度目のフロントセンターでの顔合わせとなった。
後書き
次回:「激闘」
女子バレーボール、4組と5組の激しい戦いが続く。試合に臨んでいる女子達、そして応援する男子達も興奮していく中、試合の行方は・・・。
一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!!
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