八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第百三十四話 件その十二
「そうしています」
「じゃあそちらでも」
「お仕事が出来るというのですね」
「将来は」
「そうですね、ピアノに携わっていきたいです」
早百合さんにしてもというのだ。
「お仕事も」
「それじゃあ」
「調律は中学一年でマスターしました」
「中一で、ですか」
「はい、そうなりました」
「それで今もですか」
「自分でしています」
その調律をというのだ。
「毎日ではないですが」
「する時はですか」
いつもしています」
そうだというのだ。
「部活のピアノも先生と一緒に」
「先生も調律出来るんですか」
「はい」
「それじゃあ先生と一緒にされて」
「全てのピアノをしています、それと」
早百合さんはその真っ黒でそれでいて光沢もある見事なピアノを見つつ僕に話してくれた。何でも戦前からある結構以上の年代ものらしい。
「いつも奇麗にする様にしています」
「ピアノを」
「はい、埃もです」
それもというのだ。
「いつもない様にしています」
「そうですか」
「それも気をつけています」
ピアノの掃除もというのだ。
「ピアノが汚いと」
「駄目ですか」
「命ですから」
ピアノを愛おしいげに見て僕に話した。
「いつも奇麗にしていないと」
「駄目ですか」
「そう考えています」
「ピアノ奏者にとってピアノは全てなので」
裕子さんも言ってきた。
「早百合さんもそうされています」
「そういうことですか」
「はい、私も舞台はです」
歌劇部で使う歌劇場のそこはというのだ。
「そこに向かう廊下も含めて」
「奇麗にされていますか」
「そうしています」
「そうしないとですね」
「とても出来ません」
「上演が」
「稽古もです」
本番どころかというのだ。
「出来ません」
「その時点で、ですか」
「そうです、いつも奇麗にです」
歌劇部もというのだ。
「そうしてこそです」
「そうしないと駄目ですか」
「絶対に」
「本当にいつも奇麗にしないと」
早百合さんがまた言ってきた。
「練習も出来ません」
「そういえばいつもピアノの足まで拭いておられますね」
もうそれこそ隅から隅までだ、早百合さんのピアノ掃除は徹底している。
「何処も」
「黒いので余計に目立つので」
「埃とかが」
「ですから」
「そういえば黒は」
この色だとだ。
「汚れが目立ちますね」
「はい」
「白い埃とかが」
「だからです」
「ピアノの掃除もですか」
「忘れていません、部活の後に毎朝です」
演奏の後はというのだ。
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