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夢幻水滸伝

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第三十二話 九州上陸その八

「しかしでごわす」
「悪質な人はなっていません」
「だからでごわす」
 それでというのだ。
「違うでごわすな」
「はい、何はともあれです」
「気配はしたでごわすな」
「しかし今はしません
 それが消えたというのだ。
「八房を送ってもです」
「いなかったからね」
 その八房も答える。
「これが」
「それでは一体何だったのか」
「気のせい?いやご主人に限ってね」
「ないわ。何処かに行ったのね」
「ご主人が察せられない場所にまで」
「そうね、気になるわね」
「うん、けれど今はね」
「わかっているわ、ここではね」
 美鈴は八房に確かな声で応えた。
「貴方にも頑張ってもらうわ」
「任せてね」
「渡しは接近戦は苦手だけれど」
「小烏は霊力を高める神具だしね」
 この霊刀でも戦えることは戦える、しかしあくまでそのメインは霊力を高める神具であるのだ。
「戦闘だとね」
「貴方に頼みたいわ」
「そういうことでね」
「じゃあ一緒にやろうな」
 雪路は八房に笑って声をかけた。
「ここは」
「うん、仲良く戦おうね」
「そういうことでな、ただあんた元々里見家の犬だよな」 
 雪路は八房のこのことを指摘した。
「そうだよな」
「うん、元々はね」
「けれど九州にいるんだね」
「だってご主人のお祖母さん千葉の人だから」
「ああ、そうだったのか」
「元々里見家にお仕えしていたらしいから」
 八房が関わりのあったこの家にというのだ。
「それでなんだ」
「あんた先輩の神具か」
「そうなんだ」
「それはまた縁だな」
「ちなみに里見家が改易になった後は幕府の旗本だったらしいんだ」 
 八房は雪路に自分の主の祖先のこのことも話した。
「五百石よな」
「五百石といえばかなりたい」
 純奈はその石高を聞いてこう言った。
「旗本の中では」
「そうなんだ」
「台所事情はわからないたいが」
「苦しかったそうよ」
 その子孫の言葉だ。
「結構以上に」
「そうだったたい」
「幕府もお金がなくて」
 その二百六十年以上の歴史のうち百六十年程は財政危機に苦しんでいた、統治シスレムは柔軟にして堅固であったが財政基盤は実に脆弱であった。
「五百石といっても」
「苦しかったばい」
「そうだったそうよ」
「そうだったたいか」
「お祖母さんは東京に出稼ぎに来ていたお祖父さんとお会いして」
「それでたい」
「結婚してお祖父さんが福岡に戻ってだったの」
 そうして九州に入ったというのだ。
「そこでお母さんを生んでお父さんと知り合って」
「それで今も福岡たいか」
「言葉もそうなっているわ」
「博多弁たいな」
「そうよ」
 かく言う美鈴も方言自体は出ていないが言葉のニュアンスは博多のものだ。
「そうなのよ」
「よくわかったたい」
「だから八房もいるの」
 神具として、というのだ。 
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